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七人の鬼ごっこ [読書・ミステリ]

七人の鬼ごっこ (光文社文庫)

七人の鬼ごっこ (光文社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/09/10
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

自殺予防の電話相談、いわゆる「いのちの電話」で
相談ボランティアを務めている沼田八重。
土曜の深夜にかかってきた電話を受けた彼女に、
電話の向こうの男は告げる。
「月曜から毎日、昔の友人に電話をかけている。
 一日でも相手が出ないときがあったら、自殺するつもりだった」と。

月曜から金曜まで5人に電話をかけてきたが、幸い5人とも相手が出た。
しかしその時点で、皮肉にも自分には
友人と呼べる相手は5人しかいなかったことに気づき、
困った男は「いのちの電話」にかけてきたのだ。

これから神社の境内での自殺の決行を仄めかす相手に対し、
なんとか電話を引き延ばしてその場所を特定しようとする八重。

彼女は、男から引き出した情報から推測できる場所を
周囲のスタッフに伝え、明けて日曜の早朝、
連絡を受けた福祉センターの職員はその神社にたどり着く。
境内に男の姿はなかったが、近くの崖下には真新しい血痕が・・・
現場に残っていた遺留物から、男の名は多門英介と判明する。

とにかくこの導入部が見事。一気に物語に引き込まれる。

数日後、ホラーミステリ作家の速水晃一のもとを刑事が訪れる。
速水の小学校時代の友人・多門英介の身に何かが起こったという。
彼は先週、速水のところへ突然電話をかけてきていた。

単なる失踪なのか、自殺なのか、あるいは殺人なのか。
その鍵は、彼が電話をかけた友人たちの中にあるかも知れない。
速水は故郷へ戻って独自に調査を開始する。
しかし、一方で、多門が電話をかけた旧友たちが
次々に不審な死を遂げ始める・・・

調査を進めるうちに、速水の脳裏に31年前のある記憶が甦ってくる。
英介を含めて6人の仲間で鬼ごっこをしていたはずなのに、
なぜかそこには ”幻の7人目” がいたという・・・


この作者には、ミステリが主でホラーが従の作品と、
その逆のパターンの作品がある。
前者の代表的なものが刀城言耶シリーズだろう。
そして本書も同じテイストを持った作品になっている。

怪奇で不可思議な謎にも、最終的には合理的な解釈が成立することも、
終盤近くで二転三転する多重解決が繰り出されるところも同じだ。
次から次へと犯人候補が挙げられ、否定されていく。
そして最後の最後に指摘される、実に意外な真犯人。
これは正直、驚かされた。思わずページをめくり返して
該当部分を再読してしまう人も少なくないのではないか。

そして、すべての物語が終結した後に至っても、
怪奇な部分がちょっぴり残るところもまた踏襲している。


最後にどうでもいいことを。

作中の描写が正しければ、「いのちの電話」で
相談ボランティアになるのは至難の業なのだねえ。

書類選考、種々のテスト、面接。
そして合格しても今度は講義、研修、体験学習、実習etc・・・
相談員となっても、様々な研修は続く。
とにかく意欲と根気と情熱がなければできないことだ。
なんと言っても人の命を預かるのだからね。

なんとなく「年齢を重ねて人生経験を積んでいればできるんじゃないか」
なぁんて思ってしまいがちだが、そんな考えでは全く通用しないらしい。

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