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福家警部補の報告 [読書・ミステリ]


福家警部補の報告 (創元推理文庫)

福家警部補の報告 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/12/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

地味なスーツにぱっつん前髪。小柄で童顔、メガネっ娘。
就活中の女子大生とも見まごう姿ながら、実は警視庁の凄腕刑事。
それが本書の主人公、福家(ふくいえ)警部補。

犯人の残した些細な手がかり、わずかなミスを見逃さず
それを積み重ねて着実に真相に迫っていく。
まさに「和製コロンボ」ともいうべきシリーズの3巻目。


「禁断の筋書(プロット)」
学生時代からともにプロ漫画家を目指した三浦真理子と河出みどり。
しかし夢を叶えたのはみどりだけだった。
新人賞で最優秀賞を受賞したことを皮切りに
月刊誌に連載を持ち、単行本も10巻を数えるようになった。
一方、夢破れた真理子は編集者の道に入ったが
天賦の才があったのか、その分野でめきめきと頭角を現していった。
そして、真理子がみどりの担当編集者になってから、
順調だったみどりの仕事に影が差し始める。
連載終了後の仕事がなかなか決まらないのだ。
裏で真理子が画策しているとの噂を聞いたみどりは、
巨匠・細川理恵子の漫画家生活三十周年記念パーティを終えた夜、
真理子のマンションを訪ねて彼女の真意をただそうとするが・・・
文庫で約120ページの中編。

「少女の沈黙」
組長の死を契機に解散した暴力団・栗山組。
幹部だった菅原は、ヤクザ家業から足を洗おうとする者たちの
再就職のために東奔西走する毎日。
そんな中、組長の長男・邦孝の娘・比奈が誘拐される。
犯人は邦孝の弟で組員だった次郎。彼は邦孝を脅迫して旧組員を集め、
仇敵だった飯森組を襲わせようとしていた。
堅気の仕事に就いている邦孝とその娘を救うため、
菅原は次郎が比奈とともに身を潜めているアジトへ向かうが・・・
文庫で約200ページと堂々の読みごたえ。

「女神の微笑(ほほえみ)」
都心のオフィス街に停車していたワンボックスカーが爆発、
乗っていた3人の男は即死する。
福家も加わった捜査の結果、浮上したのは後藤秀治&喜子の熟年夫婦。
そして死んだ3人組は、現場近くの銀行へ
強盗に入ろうとしていたらしいことが判明する。
さらに、過去にも同じような事件が複数起こっていたことも・・・
文庫で約100ページと本書中では最短だが
後藤夫婦との ”勝負” は今回では決着がつかず、
この2人はどこかでまた再登場しそうな気配。
ひょっとすると、”ホームズ” に対するところの
”モリアーティ教授” みたいな存在になるのかも知れない。


冒頭に書いた福家警部補のプロフィールに加えて
”サブカルおたく” という面も忘れてはいけない。
マンガ・アニメ・特撮・映画、さらに2次元/3次元を問わないので
模型やフィギュアも守備範囲という。
そのへんの蘊蓄もまた本書「禁断-」で発揮されてる。

また、メガトンコミックフェスタ(コミケがモデルと思われる)にも
出没してるらしいことが福家自身の台詞にある。
このイベントは同じ作者の『白戸修シリーズ』の中で行われているので
福家警部補のシリーズは白戸修くんの世界とも地続きらしい。

さらに、本書にはやはり同じ作者の『警視庁いきもの係シリーズ』の
レギュラーメンバー、須藤・石松の両刑事もゲスト出演しているし、
主役の薄(うすき)巡査への言及もある。

さらにさらに、現在私はその『いきもの係シリーズ』の一冊である
『ペンギンを愛した容疑者』を読んでるんだが、
その中には『問題物件シリーズ』のヒロイン・若宮恵美子も
ちょい役で出てきてるので、ひょっとするとこの作者の現代ものは
みんな同一世界の物語なのかも知れない。

ならば、いつの日か大倉作品の主役級キャラ総出演の
オールスター戦みたいな作品が読めるかも知れないね。
ちょっと期待してしまう。

書く方はたいへんだろうけど(笑)。

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