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蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 [読書・ミステリ]


蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公となる薄圭子巡査は、獣医学部を首席で卒業し、
獣医師免許を持ち,動物園での勤務経験もあり、
生物学の知識も豊富。あちこちの大学はもちろん
南極越冬隊にまで勧誘されるという逸材ながら、
なぜか警視庁総務部総務課に新設された動植物管理係で働いている。

相棒の須藤友三警部補は、かつて捜査中に重傷を負い、
長期の入院を余儀なくされた。
退院後、リハビリを兼ねて総務部に籍を置くことになり、
動物がらみの事件では薄とコンビを組んで捜査に当たってきた。
<警視庁いきもの係>シリーズの第2作にして初の長編である。


新興宗教「ぎやまんの鐘」は宗教を隠れ蓑に、詐欺行為を行ってきた。
警視庁は、教団を監視していた鬼頭管理官の指揮の下、
3年前に幹部5人の逮捕に成功して東京本部を壊滅させたが、
教団はいまだ地方で勢力を保っている。

そんなとき、スズメバチが人を襲うという事件が
東京近郊で続けざまに起こる。
田舎の乗り合いバスの中で、ローカル線の電車の中で、
散策している山中で、高速道路を走行中の車内で・・・

捜査一課の石松警部補から持ち込まれた蜂の騒ぎを調べ始めた薄と須藤。
二人によって、一連の騒ぎは蜂を凶器とした
人為的な殺人であることが明らかになってくる。

騒ぎを起こした張本人の "真の目的" は何か。
事件を追う二人だったが、犯人の仕掛けた罠にはまり
絶体絶命の危機に陥る・・・


犯人当てというより、犯人が蜂を使った事件を起こした目的を追う
”ホワイダニット” ものといえる。
最初のうちは単なる愉快犯かとも思わせるが、
実は意外なほど計算された事件だったりする。

例によって、ものの見方と価値観が完璧に食い違っている
薄と須藤のかみ合わない会話が笑える。
スズメバチに恐怖が全編に横溢している作品なんだけど
この二人の醸し出すユーモアが全体を包んでいていい案配である。

「ぎやまんの鐘」なんてネーミングセンスも素晴らしいが、
ネタとして分かるヒトは少ないと思うぞ(笑)。

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