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アルパカ探偵、街をゆく [読書・ミステリ]


アルパカ探偵、街を行く (幻冬舎文庫)

アルパカ探偵、街を行く (幻冬舎文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

タイトルを観てまず思ったのは、「なぜアルパカ?」

古今東西、いろんな探偵役がいるけれど
まあ、たいていは人間だ。
青年から壮年くらいの男性が主流かと思うが女性だって少なくない。
年齢もミス・マープルみたいなご高齢から
二階堂黎人氏の「僕ちゃん探偵シリーズ」みたいな幼稚園児までいる。

動物だと赤川次郎の「三毛猫ホームズ」が有名だが、残念ながら未読。
松尾由美の「ニャン氏の事件簿」も猫の探偵だったけど
猫の言葉を人間語に ”翻訳” して語ってくれるのは
”彼” の秘書(人間)だったなあ。
宮部みゆきの「パーフェクト・ブルー」は
元警察犬マサの一人称形式だったけど、はてマサは探偵役だったかな?

閑話休題。


本書では、人語を話すアルパカが登場する。
その横には全身黒ずくめでフードを被った従者(人間)がいるのだけど、
その人が腹話術とかを使ってるのではなさそうで
ホントにアルパカ(ちなみに自分のことを「ランスロット」と名乗る)
が喋っているみたいである。


「第一話 アルパカ探偵、聖夜の幽霊を弔う」
プロ野球選手・貞光健也の娘・葵は3歳の時に母を亡くしていた。
7歳になった年のクリスマス、深夜に帰宅した父から
プレゼントのテディベアを受け取るが、
実はその4時間前、健也は交通事故で落命していた。
伯母夫婦の養女となり、高校1年生へと成長した葵は
9年前の謎の解明のために父の関係者を訪ねていくが・・・

「第二話 アルパカ探偵、奇蹟の猫を愛でる」
高校生・山瀬圭吾の飼い猫・コユキが逃げ出して行方不明に。
友人を通じてSNSで目撃情報を募ったところ、
近隣にある大病院の近くによく似た猫がいたという。
探しに行った圭吾は、首尾良くコユキを発見するが
そこに現れた少女・香西莉乃が「それは私の猫」と主張する。
どうやら、そっくりな猫が2匹いるらしい・・・

「第三話 アルパカ探偵、少年たちの絆を守る」
小学5年生・速斗(はやと)の父は5年前に事故死していた。
乗っていた釣り船が海上保安庁の巡視船と衝突したのだ。
速斗の住む街では、車のナンバープレートへの落書きが頻発していた。
夏休みが始まり、所属している「探偵クラブ」の活動として
落書き事件のことを調べ始めた速斗たちだったが
そのさなか、仲間の1人である駿(しゅん)の様子がおかしくなる・・・

「第四話 アルパカ探偵、夫婦の絆を照らし出す」
池谷静子は21歳の時、夫・昭一と結婚。
以来数十年、平穏な生活を送ってきたが昭一は2年前に他界した。
暮れの大掃除の時、孫の亜里沙がタンスの引き出しの奥底から
見つけた一枚の写真に静子は衝撃を受ける。
そこには結婚前の夫が、若く美しい女性と一緒に写っていたのだ。
これは、昭一が思いを寄せていた女性ではないのか・・・?
落ち込んだ祖母を見かねた亜里沙は、
写真の女性を突き止めようと調査を始めるが・・・
いやあ、トシをとったせいかこの話は沁みる。
最後のページで涙腺が崩壊してしまった。

「第五話 アルパカ探偵、少女の想いを読み解く」
父と妻をガンで失い、3ヶ月前には
高校生の一人娘・春香をも脳腫瘍で亡くした須崎佑志。
ある日彼は、春香が残した日記を発見する。
そこに書かれていたのは、彼氏との恋の日々。
4月20日に告白されたことから始まり、
8月31日の水族館デートまでが綴られていた。
しかし春香は相手の男性の名をすべて ”X” と記し、
本名は書かれていない。
”X” の正体を知りたい佑志は、春香の想いを辿って
日記に書かれた場所を巡り始めるが・・・
いやあこれも切ないなあ。
娘がいる人は目から汗が出るだろう。


アルパカ探偵ランスロット氏は、各短編の終盤or中盤に登場し、
真相を告げたり、真相へ至るヒントを与えたりする。
上に書いた紹介文で分かると思うが、
彼が関わる事件には共通点があって
愛していた者を喪い、悲しみに暮れる人のもとへ現れるのだ。
(第二話もラストに至って、やはり喪失感に苛まれる人が登場する)

何でそういう人の存在が分かるのかというと、
彼は「かぐわしい謎の香り」に惹かれて現れるらしい。
自分を貴族と言ってるだけあって、人間界の上流階級にも
けっこう影響力がありそうな描写も。
ランスロット氏に関する部分だけはファンタジーだね。

しかし、読み終わってもやっぱり思う。
「なぜにアルパカ?」

まあ、ウシやラクダやカバやゾウが出てきても対応に困るが(笑)。

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