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屋上の名探偵 [読書・ミステリ]

 

屋上の名探屋上の名探偵 (創元推理文庫)偵 (創元推理文庫)

  • 作者: 市川 哲也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/01/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者は2013年の鮎川哲也賞を『名探偵の証明』で受賞した人。
本書は、受賞作で探偵役を務めた蜜柑(みかん)花子さんの
高校時代のエピソードを収めた短編集。


語り手は澄雲(すみくも)高校2年生の中葉(なかば)悠介。
極度のシスコンで、1歳上の姉・詩織里(しおり)に対して
盲目的な愛を捧げているという設定で
いささか読んでいると引いてしまうところも多々あるのだが・・・

彼の周囲で起こる事件を解決するのが
東京から来た転校生にして、名探偵と呼ばれる蜜柑花子。
昼休みにはいつも屋上で一人弁当を食べている、というのが
表題作の由来だろう。


「水着ロジック」
詩織里のスクール水着が教室から盗まれるという事件が発生する。
水着に対して犯人が、あーんなことやこーんなことを
してるんじゃないかとの妄想に駆られた悠介は
花子の助けを借りて犯人を突き止めようとするが・・・
姉のためとはいえ、情報収集のために
学校中を駆け回る悠介の行動力はたいしたもの。
その結果、容疑者は三人にまで絞られるのだが・・・

「人体バニッシュ」
野球部の顧問教師・五唐(ごとう)は、3年生の室勇希(むろ・ゆうき)が
タバコを吹かしているところを発見する。
逃げる室を追いかけた五唐だったが、
校舎の角を回ったところでその姿を見失ってしまう。
校舎の窓は内側から施錠され、その場にいた数人の男子生徒の中にも
もちろん室はいなかった・・・

「卒業間際のセンチメンタル」
木製フレームに、生徒38人分の写真を収めた
卒業制作を作り始めた詩織里たち3年E組。
しかし、保管していた技術室に何者かが侵入し
作品がズタズタに破壊されてしまう。
本書中、これがいちばん青春ミステリらしいかな。

「ダイイングみたいなメッセージのパズル」
3年生へ進級し、初めての中間試験を終えた悠介。
彼のもとへ卒業して下宿生活に入った詩織里が
3人の友人とともに訪ねてくる。
花子も加えて6人でドライブに出かけた一行は、
途中で小学校に立ち寄る。
友人の一人、山斗(やまと)の妹を迎えに行くためだ。
しかしそこで、詩織里の友人・千賀が
頭部から血を流して倒れているところを発見される。
さらに、彼女は血のついた指で文字を書き残していた・・・


猪突猛進的に走り回る悠介と対照的に
花子は引っ込み思案で、”名探偵” と呼ばれることも嫌がる。
それはどうやら転校前に何らかの理由があるようだが・・・

姉のことしか目に入らない悠介に対し、
色恋ごとには奥手な様子の花子と、こちらも対照的。

というわけで、主役二人のキャラクターも面白いけれど
学校という舞台だからこそ成立するトリックや、
高校生や大学生ならでは動機とか、
”学園ミステリ” という素材をうまく活かしてると思う。

デビュー作である『名探偵の証明』文庫化されていて
手元にあるので、そのうち読む予定。

とは言っても、山ほど積ん読が溜まってるので
いつになるのかわからないんだけど。
今年の目標はすこしでも積ん読を減らすことかなぁ。
(これ、毎年言ってるが、ほとんど減ってない・・・)

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