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全員少年探偵団 [読書・ミステリ]


([ふ]7-1)全員少年探偵団 (ポプラ文庫)

([ふ]7-1)全員少年探偵団 (ポプラ文庫)

  • 作者: 藤谷 治
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/02/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★

江戸川乱歩描くところの、名探偵・明智小五郎と小林探偵団が
怪人二十面相と対決していくシリーズ。
これでミステリに目覚めたという人も少なからずいるだろう。
特に、私みたいに昭和30~40年代頃に少年時代を送った人は。

そのシリーズへのオマージュ満開の、新作シリーズが刊行されている。
第1弾の『みんなの少年探偵団』は、現役作家さんによる短編アンソロジーだったが、第2弾となる本書は藤谷治による堂々の長編である。

とは言っても「藤谷治」ってどんな人なのかよくわからなかったんで
wikiで引いてみた。おお、こんな人だったんだ。
でも、「作品」欄にこの本の名前がないのはなぜ?
まだ更新されてないのかな。
ちなみに初刊の単行本はもう4年くらい前に刊行されてるんだけどね。


閑話休題。

小学生の吉田元基(げんき)くんの父親は宝飾デザイナー。
しかし最近、様子がおかしい。他の仕事は断り、
何か一つのことに取り組んでいるらしい。
今もそのためにフランスへ出張中だ。

そんなとき、元基くんとお母さんの元へ一人の男が現れる。
コウモリを思わせる顔つきで灰色のマントに身を包み、
自らをカクイと名乗る。彼は芸能プロダクションを経営していると称し、
元基くん母子をタレント・オーディションの見学に誘う。

そして元基君は、フランスから帰国した父から驚くべきことを聞かされる。父はすばらしいブルー・トパーズを入手したのだが、
実はそれは ”呪いのトパーズ” と呼ばれているらしい。
その日以来、父はそのトパーズを使った首飾り作りに
憑かれたように熱中し始めたのだという。

家庭のことさえ顧みなくなりつつある父を心配した元基くんは
友人の野呂一平(ノロちゃん)に明智小五郎に相談することを進められる。
なんと、ノロちゃんは少年探偵団員だったのだ!
そして、元基くんは両親とともに
カクイが主催するオーディションを見学に行ったのだが・・・


そしてここから、呪いのトパーズを巡ってカクイvs明智小五郎の
丁々発止の頭脳戦が始まっていく。まあだいたい見当がつくと思うが
カクイの正体は、おなじみの ”あの人” です(笑)。

原典は昭和初期~中期くらいにかけて発表されてるけど、
本書の時代設定は21世紀となっている。
何しろ本文中に明言されてるし、ケータイもインターネットも出てくる。
DVDだって、犯人が悪用するツールとなって登場する。

とは言っても、作品の持つ雰囲気はいかにも昭和で雰囲気。
これは原典を彷彿とさせる語り口と、レトロな挿し絵が大きいのだろう。

本書はあくまでオマージュ作品なので、
ミステリ的にどうだとかリアリティがこうだとか言うのは
野暮というものだろう。
往年の雰囲気に浸って懐かしみながら楽しむ。
これが本書の読み方の正解じゃないかな。

ちなみに、タイトルの「全員」っていったい誰のことだよって
思ったのだけど、これは読んでいくと分かります。

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