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Propose 告白は突然に ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]


Propose 告白は突然に ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Propose 告白は突然に ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/05/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

日本推理作家協会が選定した2015年のベストミステリーを収めた
『推理小説年鑑 2015年度版』を
二分冊として文庫化したもののうちの一冊。


「許されようとは思いません」芦沢央
諒一と水絵は交際4年を超え、そろそろ結婚を考え始めていた。
しかし諒一はなかなかプロポーズできないでいた。
なぜなら、彼の祖母は殺人者だったから。
18年前の1979年、東北の寒村で祖母は
同居中の義父(諒一から見れば曾祖父)を刺殺していたのだ。
獄中で病死した祖母の遺骨を寺に納めるために諒一と水絵は村に向かう。
道中、諒一から祖母の話を聞いていた水絵は、
祖母の "真の動機" を推察する。
現代では、結婚は当事者同士だけのものという意識が
ごく普通かも知れないが、地方ではまだまだ古い考え方が
残っているのかも知れない。ましてや昭和の中頃ではねぇ・・・

「散る花、咲く花」歌野晶午
美由紀は夫・治と共に、糖尿病で入院中の義父・辰雄のもとへ通っている。
毎回、途中で購入した花を持参していくのだが、
病院内でその花が何者かに持ち去られていることが判明する。
誰が、何のために?
花の謎の解明後に、もう一つ別の真実が明かされる。これは驚き。

「ドールズ密室ハウス」堀燐太郎
フリーの雑貨スタイリスト・物集(もずめ)修は、
CM撮影のためにドールズハウスを探すことを依頼される。
ドールズハウスとは1/12の縮尺で作られた模型の家のこと。
条件に合ったハウスがあるということで、
物集は東京都の吉祥寺にある長医(ながい)家を訪れる。
陶子(とうこ)と庸子(ようこ)の姉妹が住むその家には、
八畳間をまるまる使った精巧なドールズハウスがあった。
しかしその部屋で陶子が刺殺死体で発見される。
しかも内部から施錠された状態で。
この密室トリックはかなり無理があるんじゃないのかなぁ。

「十年目のバレンタインデー」東野圭吾
売れっ子作家の峰岸は、かつて恋人だった津田知里子(ちりこ)から
10年振りに連絡をもらい、バレンタインデーでの夕食を共にする。
その席で、知里子はなぜ峰岸と別れたのかを話し出す。
10年前に知里子の親友だった藤村絵美の自殺した。
その裏には峰岸の存在があったのではないか、と・・・
30ページちょっとの短編ながら密度が濃く、ラストのキレもいい。

「雨上がりに傘を差すように」瀬那和章
進学のために田舎から横浜へ出てきた女子大生・果歩(かほ)。
しかし都会の華やかさに圧倒されて
孤独感とコンプレックスに苛まれる日々を送っている。
学校帰りに「港の見える丘公園」にやってきた果歩は
にわか雨に遭ってしまい、展望台で雨宿りをするが、そこで
雨の中をびしょ濡れで歩いてきた老人・源治郎と出会う。
それをきっかけに、展望台で彼と会話を交わすようになる果歩。
源治郎と話しているうちに、少しずつ自分の生き方を見つけ出していく。
ある日、源治郎は果歩とともに公園近くの近代文学館へ行くが
その中で突然、源治郎は錯乱状態に陥ってしまう。
ラストで明かされる源治郎の事情が切ないが、感動も同時にやってくる。
そして果歩の精神的な成長も素晴らしい。

「自作自演のミルフィーユ」白川三兎
私立大学の生協職員の ”俺” は、看護師の妻と結婚して7年。
ある日、夫婦で外食へ出かけたレストランで、突然妻が切り出す。
「あなた今、恋をしてるでしょう?」
”俺” は狼狽える。なぜなら、女子学生・千晶と浮気していたからだ。
結婚生活の現状に疑問を感じていた ”俺” は、この際正直に話をして
妻との関係を白紙に戻そうとするが・・・
このあと当然ながら修羅場に突入するのだが
それが意外な方向へ収束していく。
夫婦が長く暮らしていてもお互いに理解するのは難しい。
かといって、理解する努力を怠ってはいけないという教訓か(笑)。

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