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杏奈は春待岬に [読書・SF]


杏奈は春待岬に (新潮文庫)

杏奈は春待岬に (新潮文庫)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

祖父の住む街で、春休みを過ごしていた10歳の少年・白瀬健志。

ある日、彼は一人の美しい少女と出会った。
彼女の名は杏奈。健志よりも数歳年上か。
場所は ”春待岬” の突端にある屋敷で。

たちまち杏奈に心を奪われてしまう健志。
それはまさに ”運命の人” との出会い。

それから毎年、健志は春休みに祖父の家に来ると
必ず春待岬の屋敷に杏奈を訪ねるようになった。

しかし、杏奈にはいくつもの謎があった。

なぜ、彼女が屋敷に現れるのは春先の数日間のみなのか。
なぜ、一緒に暮らしている老人・秋彦のことを「兄さん」と呼ぶのか。

そして、年を追って小学生から中学生へと成長していく健志に対し
なぜ、彼女はいつまでも10代の姿のままなのか・・・

やがて15歳を迎えた健志に、
秋彦は、杏奈に負わされた哀しい運命を告げる。

そして健志は、自分の手で杏奈を救い出すことを決意するのだが・・・


この手の時間SFを読み慣れてる人なら
秋彦と杏奈が置かれた状況はだいた見当がついてしまうだろう。

この後、健志くんの奮闘が始まるのだが、ことは簡単ではない。
彼女を救うためには何が必要なのかは書かないけれど、
簡単に言えば、一介の少年の手には余るのである。

この後の彼の人生は、まさに ”杏奈のために” 展開する。
しかし人生のすべてを賭けても杏奈を解放する糸口は見つからない。

しかし時は非情に流れ続けていく。

やがて秋彦は亡くなり、健志もまた年を重ねる。
一向に解決策を見いだせないままに、健志の年齢は
杏奈のそれをとうに追い越し、そしてその差はどんどん開いていく。

このへんから、読むのがだんだん辛くなってくる。
最終的に杏奈の救出に成功はするのだろうとは思っても
そのとき、健志との年齢差はもう・・・って考えるとねぇ。


文庫の裏表紙の惹句には
「究極の純愛」とか「切なすぎるタイムトラベルロマンス」とか
書いてあって、たしかに看板に偽りはないのだが
読んで感動するかどうかは人それぞれだと思う。

本書を読んで感涙にむせぶ人もいるかも知れないが、
私が感じたのは、ただただ「残念」の一言。
健志があまりにも報われなさ過ぎるんじゃなかろうか。


こういう物語なので、さほど登場人物は多くない。
そして、杏奈以外の唯一と言っていい女性キャラ・青井梓の扱いも不満。
祖父の住む街で健志が知り合った同い年の少女で
杏奈と異なり、彼とは ”同じ時間” を過ごしていくことになる。

彼女の存在が、後半のストーリーに大きな関わりを持ってくるのだが
言い換えればそれだけのために登場したキャラとも言える。

このあたり、詳しく書くとネタバレになるので歯がゆいのだが
あまりにも ”作者にとって都合の良すぎるキャラ” なのがねえ。

何で文句書いてるのかというと、私が梓ちゃんのファンだからだ(笑)。
だっていい子なんだもん。健気で一途で。
彼女の良さに気づかない健志は大馬鹿野郎である。
目の前に正座させて1時間くらいこんこんと説教してやりたい(爆)。

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