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みんなの少年探偵団 [読書・ミステリ]


([ん]1-10)みんなの少年探偵団 (ポプラ文庫)

([ん]1-10)みんなの少年探偵団 (ポプラ文庫)

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2016/12/02
  • メディア: 文庫
評価:★★★

表紙を見れば一目瞭然、往年の「少年探偵団」シリーズの
当時の雰囲気そのままの装丁で
明智小五郎と怪人二十面相が帰ってきた。

このシリーズでミステリに目覚めた人も少なくないだろう。
このブログのあちこちで書いてるが、私もその一人。
小学校4年の頃だったか。父が買ってきてくれた『怪人二十面相』が
私の読書人生の始まりであり、もちろん、初のミステリ体験だった。

それから半世紀もの時が流れ・・・ああ、何もかも皆懐かしい(笑)。

そんな人に対して、こんな本を見せられたら
思わず買ってしまうよねえ・・・


中身は現代で活躍する作家さんの書き下ろし短編アンソロジー。
もちろん小林少年や文代夫人が登場する作品もある。


「永遠」万城目学(1976)
両親を失った双子の男の子は、伯父によって
遠くの街に住む謎の老人に預けられる。
ある時、デパートからクレオパトラ像が盗まれる。
犯人は捕まったが、高価な宝石のはめ込まれた台座が見つからない。
双子は老人が盗難事件に関わりがあると思い、台座を探し始める・・・
どこまでいったら ”少年探偵団” になるのだろうって思ってたが
最後はかなり予想外の展開。でもちゃんと ”少年探偵団” になった。
こういうアプローチも面白い。

「少女探偵団」湊かなえ(1973)
体操の全国大会へ進めなかった小学6年生・カスミ。
彼女は海辺の祖父母の家を訪ねるが、
沈むカスミをみた祖母・香代は、
自分が小学6年生の時に経験した冒険譚を語り始める。
香代は小林少年とともに怪人二十面相と対決したのだ・・・

「東京の探偵たち」小路幸也(1961)
1974年。母親が<吸血鬼>に襲われ、その中学生の娘が失踪した。
母子の隣室に棲むオサムは、「明智探偵事務所」へ向かうが
明智は既に引退し、探偵業は小林少年(成年だが)が引き継いでいた。
主役のはずのオサムくんは終始、事件の蚊帳の外で、
すべてが解決してから真相を教えてもらう役回り。

「指数犬」向井湘吾(1989)
井上くんと野呂ちゃん、小学6年生の二人組は
謎の老人から「魔法の犬はいらんかね」と声をかけられる。
連れて帰ったその犬は、なんと翌朝になると2匹に、
その翌日には4匹、さらに次の日には8匹と増えていった・・・
この発想は面白い。低学年の読者なら大喜びしそうな展開。
終盤では、小林少年が大活躍して二十面相の鼻を明かしてみせる。

「解散二十面相」藤谷治(1963)
明智小五郎と少年探偵団に見事に捕縛されてしまった二十面相。
しかし護送中に脱走して隠れ家に舞い戻る。
その内部の様子など、二十面相の意外な生活が描かれるのが面白い。
さらに「もう二十面相をやめる」宣言まで飛び出してくるのだが
彼にそれを決意させた理由が、またいかにも彼らしいのがねぇ・・・
このあたり、ちょっとメタフィクションな展開になってる。
もちろん、本当に ”引退” してしまうわけもなく
現役続行となるのだが、そのきっかけもまたメタフィクション的。
なかなかの意欲作ではある。


ちなみに、作者名の後の数字は、作者の生年。
案外若い作家さんが多い。
私と同年代と言えるのは小路氏と藤谷氏くらいで
万城目氏と湊氏は20歳近く年下。
向井氏に至っては私の息子といってもいい年代だ。
原典が、それだけ幅広い年代に読まれているということか。

読む前は、原典に忠実なパスティーシュのアンソロジーだとばかり
思ってたんだが、蓋を開けたら
意外にもかなりの変化球も混じっている。

まあ、21世紀の現代に ”怪人二十面相” を復活させるのならば、
それなりに趣向を凝らす必要があるよねえ。

このシリーズ、まだ何巻か続くらしいのでしばらく追いかけてみる。

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