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わたしたちが少女と呼ばれていた頃 [読書・ミステリ]

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/03/11
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

文庫の表紙に描かれているのは8人の女子高生。
中央最前列に座り、真っ正面を向いている清楚な美少女。
それが本書の主人公、碓氷優佳(うすい・ゆか)。

すでに石持作品では、『扉は閉ざされたまま』、
『君の望む死に方』、そして『彼女が追ってくる』と
3本の長編に登場する。

火山学を専攻する、25歳の大学院生として。
そして、ただひとり真相を見抜く "探偵役" として。


時間軸を巻き戻し、本書で描かれる高校時代の碓氷優佳は、
受験勉強の傍ら、友人たちと恋バナに盛り上がる普通の女子高生だ。
ただひとつ異なるのは、類い希な頭脳の持ち主であること。


中高一貫の名門、私立碩徳横浜女子高校に入学してきた優佳。
彼女は、その明晰な頭脳をもって
クラスメートたちのちょっとした行動から "謎" を見つけ出し、
それを鮮やかに解き明かしてゆく。
いわゆる "日常の謎" 系連作ミステリである。

語り手は、優佳の同級生で親友でもある上杉小春。

 ちなみに小春さんは、表紙では優佳の左にいて
 彼女のほうに顔を向けている。
 他の生徒たちもみな本書の登場人物。
 本編を読み進めるとどれが誰だかわかるようになる。
 これから読む人は、そのあたりを考えながら読むのも一興か。


「赤信号」
 高校1年の春。
 中等部から高等部へ進学した小春は、
 外部受験で入学してきた優佳と出会い、友人となる。
 碩徳女子高には、
 「受験間近な生徒が学校近くで赤信号に引っかかると不合格になる」
 という言い伝えがあった。
 優佳はそこから意外な "真実" を引き出してみせる。

「夏休み」
 同級生の東海林奈美絵は、予備校の夏期講習で
 他校の男子と仲良く勉強をしたらしい。
 実際、2学期の中間試験の成績はぐんとアップした。
 しかし、優佳は奈美恵の恋の "危険性" を予言してみせる。

「彼女の朝」
 成績トップの学級委員長・岬ひなのは大酒のみ。
 しかし飲酒は停学、下手をすれば退学になってしまう。
 それでもひなのは、今日も目の下にくまをつくり、
 二日酔いの状態で登校してくる。
 優佳は、そんな彼女の "深酒" に秘められた事情を見抜いていた。

「握られた手」
 同級生の平塚真菜と堀口久美は、
 いつもいっしょに、手をつないで歩く。
 "百合" だと騒ぐ同級生たちをよそに、
 優佳は二人の間の秘密に気づく。

「夢に向かって」
 柿本千早はマンガ家志望。その腕前はプロ並み。
 しかし開業医をしている両親は医学部以外の受験を認めない。
 そんな千早に、優佳が与えたアドバイスとは・・・
 この短編の冒頭で、模試の結果に落ち込む優佳が描かれる。
 しかし、東工大理学部がA判定じゃなくてB判定だったことに
 ガッカリするなんて。どんだけ頭いいんですかアナタは。

「災い転じて」
 受験の年を迎えた優佳たちは、初詣に向かう。
 しかしその中の一人、佐々温子は神社の石段を踏み外して転倒、
 利き腕である右手を骨折してしまう。
 センター試験が迫る中、なぜか意気軒昂な温子。
 そんな彼女に、ひなのは疑問の目を向けるが・・・

「優佳と、わたしの未来」
 卒業式を終えた優佳たちはささやかなパーティーを開く。
 そこで話題に上がったのは優佳の "彼氏"。
 優佳の姉が所属する大学サークルのメンバーに、
 彼女が想いを寄せる男性がいるらしい。
 候補に挙がった4人の男性を対象に、
 同級生たちは優佳の "想い人" が誰なのか、推理を巡らせるが・・・
 連作短編らしく、最終話には
 ちょっとショッキングなサプライズが仕込まれている。


最終話に登場する4人の男性は、
そのまま第1作「扉は閉ざされたまま」にも登場している。
本書で初めて碓氷優佳に接した人は、
ここからシリーズを読み進めるもの楽しいだろう。

本書のラストで、優佳は見事に東京工業大学理学部へ合格し、
火山学者への第一歩を踏み出す。

こうなれば、ぜひとも大学生時代の彼女の話が読みたいところ。
石持浅海さん、お願いしますよ。


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