SSブログ

リベルタスの寓話 [読書・ミステリ]

リベルタスの寓話 (講談社文庫)

リベルタスの寓話 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

表題作である「リベルタスの寓話」だけど、
前後編に分割されていて、その間に
中編「クロアチア人の手」が挟まれるという構成。


「リベルタスの寓話・前編」

 2006年、戦乱に揺れるボスニア・ヘルツェゴヴィナ。
 首都サラエボから70キロほど離れた街・モスタルで
 奇怪な殺人事件が発生する。

 切り開かれた胴体は心臓以外のすべての臓器は取り去られて、
 その代わり、手近にあるものを臓器に"見立て"て詰め込まれている。
 肺の代わりに飯盒のふたや虫かごが、
 膵臓の代わりに携帯電話(時代からしてガラケー)が、
 腎臓の代わりにPC用のマウスが2つ、というように。

 やがて、唯一と言っていい容疑者が浮上するが、
 彼には犯人ではない決定的な"証拠"があった・・・


「クロアチア人の手」

 観光のため日本を訪れた2人のクロアチア人。
 しかし泊まった施設で一人が殺され、
 もう一人は交通事故死してしまう。

 殺害現場は厳重な密室状態で、死体は部屋に備え付けの巨大水槽に
 顔をつっこんだ状態で死んでおり、その中にはなぜか
 他の場所の水槽にいたはずのピラニアが・・・

 例によって(笑)、石岡君が北欧にいる御手洗から
 携帯電話で支持を受けながら手がかり集めに右往左往する。
 毎度おなじみの展開なんだが、やっぱり可笑しい。

 犯人は比較的早めにわかるので、密室トリックの解明がメインになる。
 "あの" 島田荘司の作品だから(笑)、多少は荒唐無稽であろうと、
 それを上回る驚き、奇想ぶりが発揮されていれば
 大半のファンは納得するだろう。
 でもこのトリックはどうなんだろう。
 少なくとも私には「いくらなんでもこれはないだろう」でした。


「リベルタスの寓話・後編」

 ボスニア・ヘルツェゴヴィナに駐留するNATO軍から
 協力要請を受けた御手洗は(いつのまにそんなに偉くなってたんだ?)
 多忙を理由に現場へは行かず、ここでも
 現場の係官に電話で指示しながら事件の解決をする。

 容疑者がもつ "決定的な証拠" を構成する "ネタ" は、
 早い時期に見当がついたけど、私が知ってるくらいだから
 たいていの人は分かるんじゃないかなぁ。
 こちらも、「クロアチア人の手」と同様、「who」よりも
 死体にあのような "細工" をした「why」の解明がメインとなる。

 動乱の東欧を舞台に、16世紀の都市国家ドゥブロブニク、
 (タイトルにある「リベルタス」もここで出てくる)
 21世紀のバーチャルリアリティと、いろんな要素を放り込んである。

 すべては冒頭の "死体損壊の謎" を演出するための逆算の結果。
 (そういう意味では、よく考えられた話ではある。)
 けど、読んでると「ごった煮」感のほうが勝る印象なんだなあ・・・
 特にRMT関連のくだりは、よく分からなかった。
 アタマの古いオッサンはついていけない?

なんでわざわざ分割して、間に他の作品を挟むの?
って疑問の答えは、読み終わればわかる。
この2作品はいわば同一の時代、同一の地域を舞台にした
同一テーマの姉妹作なんだね。


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ: