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樹上のゆりかご [読書・青春小説]

樹上のゆりかご (角川文庫)

樹上のゆりかご (角川文庫)

  • 作者: 荻原 規子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/04/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「これは王国のかぎ」のヒロイン・上田ひろみ嬢、再びの登場。

異世界での大冒険から2年。
ひろみは旧制中学の伝統が色濃く残る
名門進学校・辰川高校の2年生になっていた。

5月、親友の中村夢乃に誘われて
合唱祭実行委員の手伝いをすることになったひろみ。
とは言っても、その実体は当日のパン販売の売り子だったが。

しかし当日販売されたパンの中に
カッターナイフの刃が仕込まれていたことが判明する。
学校に対して悪意を持つ者が存在するのか・・・

やがて生徒会の選挙が行われ新執行部が発足するが
ひろみも誘われて役員の一人となる。

そんな中、ひろみは
合唱祭で指揮者を務めた美少女・近衛有理と知り合い、
急速に彼女に惹かれていく。

学校は秋に行われる学校祭の準備一色に染まっていくが
生徒会執行部に脅迫状が届いたり放火騒ぎが起こったりと
何者かの悪意は確実に広がっていく・・・


一大ファンタジーだった前作とは打って変わって
今回はややサスペンス要素はあるもののほぼ日常系。

ひろみさんも、きゃあきゃあ言ってた前作からぐっと成長して
なかなかに落ち着いた17歳となっている。

とは言ってもそこはやっぱり女子高生。
学園生活を謳歌しながらも受験は常に頭の片隅にあって
彼女を含めていくつかの恋愛模様も展開するという、
いわゆる悩み多き年頃。
そんな生徒たちが集まって過ごす、
ひと夏の「学校生活」を描いた青春小説である。


舞台となる辰川高校(たぶんモデルは作者の母校の東京都立立川高校)は
かつては男子校だったこともあり、その当時の風習も残っていて、
それもまた女子生徒にはいまひとつなじめないところなのかも知れない。

 私も男子校出身なので、読んでいて共感できるというか
 一種の懐かしさを感じる部分もある。

さらに、教員をはじめとする学校の方針というか雰囲気もまた
"古き良き時代の進学校" を思わせる。

 少子化が進んだ現在は、在学中に生徒をどれだけ鍛えて、
 大学合格者数をどれだけ出すかで
 学校の評価が決まるようになってしまったから、
 辰川高校のような "放任主義" な学校は
 もう生き残れなくなってるだろうなあ・・・


今までのところ、上田ひろみを主役にした作品はこの2作のみ。

巻末に収められた、書き下ろしのおまけ短編では、
3年生になったひろみさんの受験生生活、
そして、高校で出会った先生に文才を認められ、
文学の道を志すところまでが描かれる。
このへんも、"古き良き時代の進学校" だねえ・・・


ここまで書かれたら、
大学生になったひろみさんの話を読んでみたくなるよねぇ。


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