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シャーロック・ホームズの不均衡 [読書・ミステリ]

シャーロック・ホームズの不均衡 (講談社タイガ)

シャーロック・ホームズの不均衡 (講談社タイガ)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 文庫



評価:★★★

両親を殺人事件の被害者として喪った天野直人。
直人以外の人間に対して心を閉ざす妹・七海。
しかし彼女が、驚異的な推理能力を備えていたことから、
二人は "世界" から追われることになる。
そんな兄妹が出会う4つの事件を描く。

「第1話 雪の日は日常にさよなら」
 18歳になった直人は、高校卒業と同時に、
 小学3年生の七海と一緒に暮らしている児童養護施設を出て、
 経済的に自立しなければならない。
 そんな折り、「二人を養子として迎えたい」との申し出があった。
 二人は養父となる人物に会うため、
 長野の山中にあるペンションに向かうが、
 そこで起こった殺人事件に否応なく巻き込まれてしまう。

「第2話 シャーロック・ホームズの産卵」
 巨大財閥・御子柴グループの御曹司、辰巳に保護された二人だが、
 その屋敷内で石膏像が何者かに破壊される。しかも現場は密室状態。
 その謎を解き明かした二人に対して、辰巳は驚愕の事実を語り出す。

「第3話 世界は名探偵でできている」
 辰巳の庇護の元、不可能犯罪の解決に取り組むことになった二人。
 最初の事件は古民家で発見された死体。
 しかも前日の雨により家の周辺は泥濘状態という
 "足跡のない殺人事件" だった

「第4話 尊きものは頭部を狙う」
 今度の現場はガラス張りの密室、
 無人だった部屋に忽然と出現した死体、
 そして、一カ所だけあったガラスの破損箇所は、
 なぜか "内側から" 破られていた・・・


名探偵の推理力が "資源" として評価され、
世界中で "争奪戦" が展開されているという
とんでもない設定の元、展開されるミステリ。

"名探偵の素質" のある者を見つけだすために、
わざわざ不可能犯罪を引き起こす "組織" まで出てくるんだから
念が入ってる。

事件を解決した者を "名探偵" 候補として拉致し、
自分たちの利益のために使おうという、なんとも乱暴な話。

巨大財閥・御子柴グループは、"組織" の思惑を打ち砕くため、
"名探偵の素質を持つ誰か" が事件に関わってくる前に
直人・七海の兄弟を使って解決してしまおうとする。

二人は、御子柴グループの庇護を受ける代わりに、
グループのために働くことを選択する・・・

もちろん "組織" も黙っているわけではなく、
当然ながら二人をターゲットにした "刺客" も送り込んでくる・・・


石持浅海あたりが書きそうな "特殊状況下ミステリ" だけど
主人公やサブキャラの造形をみると、紛れもなく似鳥鶏。

9歳の少女が探偵役だったり、
直人のお世話役に美人なお姉さんが出来てきたりと
ライトノベル的雰囲気もあるけど、
ダークな面ももちろん描かれる。

なんとなくだけど、続巻が出そうな雰囲気もある。
もしこれもシリーズになったら、いくつめになるんだろう。
いやあこの人もずいぶん売れっ子になったねえ。


本書の冒頭に3つの「問題」があるのだけど、
実はこれも本書のテーマに深く関わっている。

ちなみにこの3問、元ネタは「頭の体操」(多湖輝)だよねぇ。
少なくともこの中の2問は、見覚えがあるもん。


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