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リカーシブル [読書・ミステリ]

リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

父親が会社の金を横領して失踪し、
残された家族は転居を余儀なくされた。

長女・ハルカが小学校を卒業したのを機に
一家は母親の故郷の町へ越してきた。

誰一人知り合いのいない中学校へ入学したハルカだが、
新学期早々にそば屋の娘・リンカと親しくなる。

しかし、小学3年生の弟・サトルが予言めいたことを口走るようになり、
やがてそれをなぞるかのような事件が続発していく。

サトルの予言に不安を覚えたハルカは、
中学校の社会科教師・三浦から
地元に伝わるタマナヒメの伝説を教えられる。
タマナヒメは時代を超えて何度も現れ、未来を見通したという・・・


閉鎖的な地方の町を包む "闇" を描いていて、
ミステリと言うよりはホラーな雰囲気を醸し出しながら
物語は進行していく。
終盤に至るとストーリーは二転三転し、意外な真相が明かされる。

ただ、この結末というか "仕掛け" は賛否が分かれるような気がする。
「今の時代にこれはないよなぁ」という人、
「いや、田舎町なら充分ありそう」って思う人、それぞれだろう。
私はどちらかというと否定的です。
もっと言うと、上に掲げたように私の評価は低め。

それは結末だけが理由ではなくて、
全体的な雰囲気だったり舞台となる町を覆う暗鬱な空気だったり
ヒロインの境遇があまりにも過酷だったり、とか
いろんな要素があってこの評価になってる。

まあ、簡単に言えば
私は暗い話があんまり好きではないのでしょう。

例えば、"ヒロインの境遇" についてちょっと触れておくと
ハルカの父とサトルの母は子連れ同士の再婚なので
ハルカは三人の家族の中で一人だけ血のつながりがない。

かといって母親にいじめられているわけでもなく、
逆に過剰なくらい気を使われている。
でもそれが彼女の安寧を約束することはない。
どうしても薄い壁一枚隔てているみたいなつきあいになってしまう。
家庭は彼女にとって安らぎの場ではないのだ。

学校でもそうだ。
転校と同時に入学したものの、当然知り合いは一人もいない。
自分が "よそもの" であることを自覚するハルカは
いじめの標的にならないために振る舞うことを最優先にする。
唯一といってもいい友人・リンカとのつきあいでも、
彼女に嫌われないことをまず第一に行動していく。

そんなハルカさんの一人称で物語が進むのだから、
明るくなりようがないではないか。
そしてそれは最後まで変わることはない。

聡明な彼女は、ラストで "真実" に到達する。
いままで彼女を取り巻いていた "謎" の数々は解き明かされるのだけど
だからといって彼女の境遇が改善されることもない。

明日からはまた同じような家庭、学校での生活が待っている。
だから、読み終わっても爽快感に乏しい。

もっとも、世界のほうは変わらなくても、
ハルカ自身は事件を通して確実に成長はしている。
サトルとの関係も、「彼女の目に見える世界」も、
これからは変わっていくだろうことは示唆されているけどね。

いつの日か、成長したハルカさんの話が読めるとうれしいな。


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