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UFOはもう来ない [読書・SF]

UFOはもう来ない (PHP文芸文庫)

UFOはもう来ない (PHP文芸文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

地球は監視されていた。
自らを<スターファインダー>と呼ぶ異星生命体によって。
そして今、彼らはある "決断" をしようとしていた。

TVディレクターの大迫、ADの明日辺、源田、
そしてカメラマンの薪家の4人組は
怪しげな番組をでっち上げて日銭を稼いでいる。
彼らは在野のUFO研究家・木縞千里を誘い、
新興宗教団体DSIを取材するために大阪へやってきていた。

そのころ、観察のため地球上空へきていた
<スターファインダー>の一人(一体?)・ペイルブルーの乗った宇宙船が
スペースデブリの直撃によって京都の山中へ不時着してしまう。
彼女(?)はそこに居合わせた小学生3人組、
雄飛(ゆうひ)・英(ひで)・幸太(こうた)に見つかり、保護(?)される。

3人は大迫たちに連絡を入れ、助力を仰ごうとするが
その寸前、異星人の存在を知った
DSIの教祖・龍彫蔵人(りゅうぼり・くらんど)の一味によって
ペイルブルーは拉致されてしまう。

かくして小学生たちと大迫たちは
囚われの異星人を奪還すべく、立ち上がるが・・・

ストーリーはいたってシンプルながら、
本書は文庫で750ページ近い厚さを誇る。
何でそんなに分厚いのかというと、
UFOにまつわる様々なネタに関する蘊蓄がハンパないのである。
もともと「トンデモ似非科学」に造詣の深い作者のこと、
例えばUFO写真の真贋ひとつとっても延々と語ってみせる。
こういう要素は、悪くとれば物語の流れを分断してしまうのだけど
この "脱線" がまためっぽう面白いんだなあ・・・

新興宗教も出てくるが、
人はなぜ、「明らかに胡散臭い」と思われるものでも
信じてしまうのか。
このあたりも作者はいろいろ書いてる。このへんも必読だと思う。

この蘊蓄部分をそっくりなくしてしまえば、
本書はこの半分の厚さに収まると思うんだけど、
それでは本書の魅力は半減してしまうだろう。
「似非科学批判」の入門書としても最適なところも
本書の "売り" だろう。


主役となる異星生命体<スターファインダー>の立ち位置は、
「未発達の文明には不介入、行うのは観察のみ」
恒星間航行を可能にした彼らからすれば、
人類は未開の蛮族であり恐怖の対象ですらあったりする。

物語が進むにつれて、人類の価値観とは相容れない生態、
そして彼らが下そうとしていた "決断" の内容が明らかになるが
それを知った主人公たちの行動もまた読みどころ。
このあたりも「ファースト・コンタクト」ものとして良くできてる。


基本的には「山本弘版ET」なのだけど、ラストの展開に至って、
クラークの「幼年期の終わり」をも彷彿とさせる作品へ変貌する。

UFO or 異星人の存在を信じるか信じないか、
人それぞれだとは思うけど
この世に「UFO」という言葉が存在している以上、
一度は読んでおいて損はない本だと思う。


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