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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」情報解禁 その2 [アニメーション]

まず、一昨日の記事で載せ忘れたものがあったので追記しておきます。
入場者に配布された特典ですね。映画本編の ”生コマ”。
「2202」でのヤマト発進シーンですね。
y-namakoma.jpg
「フィルム」なんて、デジタルの時代には
そもそも存在しないものなんだけど、わざわざ作るんですね。
普通に撮っても何が映ってるのかわからないので蛍光灯越しに。
これ、けっこう大変(笑)。

それでは、「ヤマト2205」関連情報について、前回の続き。

次は公式サイトの「STORY」を見てみた。
こちらもいろいろ ”不穏な単語”(笑) が並んでる。

■「銀河で勃発した領土紛争」

「ガミラス人の移住先を捜していたデスラーが、天の川銀河の中に
 適した惑星を発見したけど、そこは強大な星間国家の領土内だった」

この星間国家が「ボラー連邦」なのかな。
デスラーが平和裡な交渉をするとも思えないので(おいおい)、
実力行使をしちゃうんでしょうかね。

■地球も参戦?

「銀河で勃発した領土紛争は、ガミラスと安全保障条約を結ぶ地球を
 否応なく巻き込んでゆく。」

ガミラスが戦争を始めれば、地球も味方して参戦しなければならない、
という条文なんでしょうかね。

ガトランティス戦役で援軍を送ってくれたのだから、
地球としても知らぬ顔はできないよね。
とはいっても、戦役で多数の兵士を失っているわけだから
そう簡単に援軍は出せないわなぁ。

ということで、小規模の艦隊くらい派遣するのかな。
まさかヤマト単艦というわけにもいかないだろうし、
公式サイトには「補給母艦」とか「戦闘空母」なんかも載ってるから
このあたりがヤマトに随行するのかな。

■古代と雪

国民投票によって、時間断層と引き換えに生還した古代と雪は
地球で一番有名なカップルになってしまっただろう(笑)。
それこそ一挙手一投足をパパラッチが狙う、みたいな(そりゃ大変)。

それは冗談としても、2人からしたらプレッシャーだよねぇ。
もう彼らには、地球を守るために戦い続ける人生しか
残ってないんじゃなかろうか。

 『銀河の荒鷲シーフォート』というアメリカの小説では、
 主人公が敵性宇宙生命体から太陽系防衛に成功するが
 そのために彼は多くの若者を死地へ送り込む。
 最終的に主人公は良心の呵責に耐えかねて修道院に入ってしまう、
 って展開があった。

 古代も雪も、仏門にでも入って戦死者の慰霊に
 余生を捧げでもしないかぎり、この運命からは逃れられないかも(笑)。

■「ヤマト新艦長の任についた古代進」

予告編でも、艦長服を着た古代が映ってたからね。
公式サイトのほうでは、雪も真田も艦長服っぽいのを着ているので、
ひょっとするとヤマトの随行艦隊で艦長を務めるのかも。

 そうなると島や南部なんかの処遇も気になるよねぇ。

あと、前から思っていてこのブログでも何回か書いたのだけど
ヤマトクルーたちの階級ってどうなってるのだろう。

「2199」と「2202」で特に昇進してないみたいだし。
普通に考えたら二階級特進くらいあってもいいんじゃないかと思うが。

 「2199」開始時の階級が戦時特進したもので、
 地球に帰還後に制式任官された、って説もあるみたいだけどね。

ガトランティス戦役を終えたら、今度こそ昇進してもいいんじゃないか。

ところで、『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』に真田が登場するのだけど
字幕で出た肩書きに「二等宙佐」とあった気が。
(一瞬だったので見間違いかも知れないけど)
真田は「三佐」だったはず。

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』は2205年くらいにつくられた
ドキュメンタリー、って設定らしいから、その頃には昇進してるのか。

さらに、「2205」の「CHARACTERS」に載ってる
雪の肩についてる階級章も「二佐」だよねぇ(たぶん)。

ガトランティス戦役終了時に戦死認定されて二階級特進したのが
そのまま追認されたのか、それとも改めて正式に昇進したのか。
もし雪が「二佐」なら、古代も当然「二佐」か、それ以上だよねえ。

 まあ、ガトランティス戦役で軍人の皆さんがごっそり戦死されたので、
 生き残った士官をどんどん昇進させて
 指揮官へ登用する、って方針なののかも知れない

古代がヤマト艦長になるのは当然の流れかも知れないが。

 考えてみたら、二度まで地球の危機を救った「栄光ある戦艦」の
 艦長になるのは、かなりのプレッシャーだよねぇ。
 案外「なり手がいなかった」というのが理由かも(おいおい)。

二佐になったのも、戦艦の艦長が「尉官」というわけにもいかない、
ってことかも知れないし。
ならば、やっぱり雪さんも艦長ですかね(おおっ)。

ちなみに、姓が「森」のままなのも気になる。
旧姓使用なのか事実婚なのか。まさか何もないわけではあるまい(笑)。
ヤマト世界に於ける23世紀では、選択的夫婦別姓が当たり前なのか。

■古代をつけ狙う何者か

ヤマトは来るべき有事に備えて新クルーらと共に訓練航海に旅立つのだが、
その中に、古代をつけ狙う何者かが紛れ込んでいるらしい。
普通に考えれば新クルーの中の誰かだろうし、それが誰かも
けっこう情報が流れていて、公式も隠す気もないのだろう。

古代自身も、「2199」でヤマトに乗り込むときには
沖田艦長に対して兄・守のことで葛藤を抱えていたし。
時を超えて、それが今度は自分の身に返ってきたということか・・・

■最後に

毎度のことだけど、こんなに長くとは思わなかった。
(いい加減、学習しなければね)
でもね、「ヤマトの続編」に対して、妄想を巡らせることができるなんて
いい時代になったものだ・・・って、これも前にも書いたなぁ。

『-という時代』のパンフレットを見たら、
「2205」は本来6/11が公開日だったみたい。
コロナが発生しなかった時間線だったら、今頃「2205」について
ああだこうだと言っていたのでしょうねぇ。
まあ、楽しみが先に伸びたと思えばね。
コロナ禍でずれ込んで10/8になってしまったけど
ウイルスに負けずにそれまで元気でいたいものです。

最初のヤマトとの出会いから、なんと47年という年月が。
それを考えれば、4か月なんてあっという間。
心配なのは私の寿命だけ(おいおい)。

 ちなみにワクチンはまだ回ってきません。
 私の暮らす自治体では気配すらありません(笑)。

みなさんもご自愛ください。


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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」情報解禁 その1 [アニメーション]

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』の公開に合わせて、
「2205」の情報も解禁された。
yamato2205.png
一番最初に知ったのは、映画館でのチラシだった。
書いてある文章を読んで「ふむふむ」と思いながら
その後『-時代』を鑑賞したら、本編終了後に「2205」の予告編が。

時間は30秒くらいかなと思ってたんだが
YouTubeで観た「宣伝会議」の中では、1分あったと言ってた。
それくらい情報が密であっという間に感じられたのだろう。

 ちなみにこの予告編、ネットでは公開されてない。
 たぶん上映中は上げないんだろうなぁ。
 映画を観に来た人だけが見られるということだ。

私が「宇宙戦艦ヤマト」(1974年)、及び
「さらば宇宙戦艦ヤマト」(1978年)以後の続編群に対する思いは
このブログでさんざん書いてきたのでくり返さないけど、
私にとって ”鬼門” の「さらば」のリメイクである「ヤマト2202」が
2019年に終了し、私にとっての「ヤマト」に一区切りがついた。

「新たなる旅立ち」(1979年)以後のリメイクについては、
「作ってくれるなら観にいこうかな」くらいの、
醒めた、といっては言い過ぎか。やや引いた気分もあったのだけど、
いざ具体的に情報が明かされると、やっぱり気になるみたいだね。

実際、いざ公開となれば、けっこう喜んで
観にいってしまう自分が想像できる(笑)。

■「INTRODUCTION」

チラシに書いてある文章は、そっくり公式サイトの
「INTRODUCTION」に掲載されている。

全文を引用するのは流石にマズいだろうから、
気になった部分を抜き出してみる。
ついでに、感じたことを思いつくまま書き出してみよう。

■「TVスペシャル「新たなる旅立ち」(1979年放映)以後の要素を結集」

過去に、このブログのどこかで
「(もし続けるのなら)今後のリメイクシリーズは、
 旧作のメカやキャラの設定は流用しつつ、ストーリーはオリジナルで」
って書いた記憶がある。
そうしたら、「INTRODUCTION」中に上記の文章が。

これ以後のリメイクヤマトの物語は、
旧作の続編の順番に進めていくのではない、ということだね。

確かに「暗黒星団帝国編」は後付け設定とご都合主義のオンパレードで
”ツッコミどころ満載” どころか ”ツッコミどころしかない”。
製作スタッフのほうも「暗黒星団帝国編」の
リメイクは容易じゃないって思ったんだろう(笑)。

■「ヤマトの新世代クルー」

公式サイトの「CHARACTERS」には、「土門竜介」「京塚みや子」
「坂本成」「板東平次」「徳川太助」の名が。

「坂本成」「徳川太助」は「新たなる旅立ち」から、
「土門竜介」「京塚みや子」「板東平次」は「ヤマトIII」から。

出てくるのはいいのだが、旧作シリーズは
新クルーの扱いがぞんざいだったからねぇ。
太助だけは「復活編」まで生き残ってヤマトの機関長にまで出世するが
その他のメンバーは、戦死したり途中退場したりして。
新作ではそんなことはないだろうけど、
その場限りで使い潰されることなく、
ちゃんと活躍して見せ場をつくってくれるといいが。

■「意外な旧クルーの乗船」

これについては「-という時代」の本編後に上映される
「2205」の予告編でわかる・・・と思う。
たぶん ”あの人” だよねぇ。
だとしたら、どういう経緯で乗るんだろう・・・

■「銀河レベルでの星間戦争」

「ボラー連邦」「謎の黒色艦隊」って単語もある。
それにガミラスも絡んで、天の川銀河を舞台にした
「三国志」みたいになるのかな。

「完結編」のディンギル帝国も出てくるのだろうか。
案外、「謎の黒色艦隊」ってのがそうだったりして。
もっとも、予告編で流れたBGMは「自動惑星ゴルバ」だったし
ヤマトコンサートでちらっと見せてくれた敵メカはプレアデスだったし
「暗黒星団帝国」で間違いないんだろうが。

■「ガミラス・イスカンダルの二連星を見舞う悲劇」

サレザー恒星系に ”謎の敵” がやってくるのでしょうねぇ。
旧作と違ってガミラスには人々がたくさん住んでますからね。
彼らの運命やいかに。

ガミラスも描かれるので、「2199」でのキャラも出てくるみたい。
予告編にもちらっと映っていたし。

さて、問題はイスカンダルですね。
スターシャとユリーシャはどうなってしまうのでしょう
まあ、”悲劇” とあるから期待してはいけないのでしょうな。

旧作では、スターシャと古代守の間には子供が生まれていましたが
「2199」でもそれを匂わすような描写もあった。
当然、その子も出てくるよねぇ・・・出さない理由がない(笑)。

うーん、さらっと短く書くつもりが、
いざ初めてみると長くなってしまった。
すみませんねぇ、「年寄りは話が長い」もんで。

一旦ここで切って、続きは後日に。


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「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択 [アニメーション]

当初は1月15日公開のはずだったんだけど、
コロナ禍のせいで5か月もずれ込んでしまった。


たまたまなのだろうけど、「閃光のハサウェイ」と同日公開に。
いっそのこと、2本まとめて観ようかなとも思ったのだけど
1日で「ヤマト」と「ガンダム」を梯子するのは
流石にヘビィかなぁと思って見送ることに。


 20代の頃は、朝昼晩と三食とも焼き肉を食っても
 平気な胃袋だったのだんだけどねぇ・・・

 まあ、セミリタイアしているおかげでヒマな時間だけは多い。
 「ハサウェイ」のほうは来週観にいく予定。
yamatojidai.jpg
さて、本編だけど、基本的には総集編。

 1977年の映画第1作は、イスカンダル編の総集編だった。
 (厳密に言うとラストが異なってたけどね)
 まだレンタルビデオすら存在しておらず、
 本編を見るにはTVでの再放送を待つしかない時代だった。
 だから、映像に餓えたファンたちは映画館に群がった。
 私もその一人だった。

 上映時間は本編の約1/5しかなかったわけで、
 内容はまさにダイジェスト版だったけど、
 それでもファンは喜んだものだ。

さて今回の映画は、ざっくりいうと
最初の30分くらいが「2199」(イスカンダル篇)、
残りの90分が「2202」(ガトランティス篇)だ。
ただでさえ時間に厳しい中、「2199」に時間を割いたのはなぜか。

パンフレットには「歴史ドキュメンタリーとしての云々」と
理由が書いてあるのだけど、
私にはそれ以上の意味合いがあったように思う。それは、
「2202における古代進」のバックボーンとしての「2199」だ。

2012年頃のこのブログにも書いたことだが、
「2199」は ”群像劇” であることが強調され、
本来主人公であったはずの古代は、”脇役筆頭” くらいの位置に
止まっていた。そのことを「2199」に対する不満として挙げる人も
少なくなかっただろう。
最も主役らしく描かれたのは、沖田艦長だった。

しかし「2202」では、その沖田はもういない。
古代は否が応でも主役とならざるを得ない。
ヤマトというフネの指揮を執らなければならない。
しかし彼には、「2199」で描かれた ”イスカンダルとの約束” という
重い ”枷” が課せられている。

「2202」の前半では、それに葛藤する古代が執拗に描かれた。
しかしながら、”悩める古代” を「2202」に対する不満として
挙げる人も少なくなかっただろう。

 もっとも、「2202」に於ける ”悩める古代” というものが
 私は嫌いではないんだ。
 「2199」での展開をしっかり受け継いだが故の行動なのだから。
 むしろ、スターシャのことなどすっぱり忘れ、
 冒頭から波動砲をバカスカ撃ち始めるようだったら、
 私は早々に「2202」から ”下船” していただろう。

 いやはや「ヤマト」という作品は、
 何をどう作っても非難されるという ”しんどい作品” だね。
 前作の設定を引き継いでも文句を言われて、
 前作の設定を無視しても文句を言われて。

 作品として世に送り出した以上、批判もまた受け止める覚悟を
 持たなければならないのはクリエイターの宿命とはいえ・・・

さて、内容についてだけど、真田の ”語り” で進行していく。
シーンについては、大胆にぶった切った部分と、
ある程度尺を使ってじっくり見せる部分の割り切りは上手いと思う。
ファンが「あそこはカットしないで見せて欲しいなあ」
と思うであろうところは、けっこうしっかり残してあるんじゃないかな。

もちろん最終話の真田の演説もしっかり聴かせてくれる。

さらに、映画の結末でも、また新たな真田の ”語り” が挿入されている。
大塚芳忠さんの熱のこもった(こもりすぎ?な)声のおかげで
私は画面へ集中ができなかった(笑)。
もっとも、画像自体は既視のものだからよかったんだね。
画像まで新規作画だったら困るところだったよ。

さて、最後に余計なことを2つ。

その1

会場のロビーには、新作映画のチラシが置いてあるのだが
その中に「2205」のものがあったのを発見。さっそくゲットしてきた。
2205a.jpg
2205b.jpg
とはいっても、載っている情報は
すでに公式サイトで公開されたものばかりで、
いささかありがたみに欠けるかな。

その2

私が映画館に入った時、会場の売店の前にはたまたま客がいなかったので
さっそく「ヤマトのパンフレット下さい」って言ってみた。
20代前半とおぼしき店員さん(女性)が
「こちらでよろしいですか?」といって持ち出してきたのは
『閃光のハサウェイ』のパンフレットだった(おいおい)。
「いえ、ヤマトです」「あっ、失礼しました・・・」
yamatoage.jpg

一瞬、私が言い間違えたのかと思ったけど、
そんなはずはないよね・・・ないと思いたい・・・
(どうも最近、自分で自分が信じられなくなることがあるもんで)

「2205」の情報もだいぶ明らかになってきて、
いろいろ思うところもあるのだけど
そのへんはまた別記事にしてupしようかと思う。


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ファンム・アレース [読書・ファンタジー]

ファンム・アレース 1 (講談社文庫)

ファンム・アレース 1 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース 2 (講談社文庫)

ファンム・アレース 2 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース3 (講談社文庫)

ファンム・アレース3 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(4) (講談社文庫)

ファンム・アレース(4) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(5)(上) (講談社文庫)

ファンム・アレース(5)(上) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(5)(下) (講談社文庫)

ファンム・アレース(5)(下) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

全5巻(第5部は上下巻なので文庫としては全6巻)の異世界ファンタジー。
とはいっても、長い巻でも270ページくらい、
第5部の上下巻はそれぞれ200ページに満たないので
巻数のわりにはサクッと読める分量ではある。

主人公・バビロンは剣豪として知られる流れ者。
150歳になるが、”人外” の血を引いているため外見は若者だ。

彼はある夜、謎の美女にたぶらかされて
”主従の契約” を結ばされてしまう。そして3日後、
彼の前に ”主” として現れたのは青い瞳の少女・ララだった。

南の小国・グランディエ王国は圧政に苦しむ民衆の反乱によって滅亡、
ララはその王族最後の生き残りだった。
王都を脱出し、たった一人で旅を続けてきたが、
バビロンは契約に従い、彼女の旅の護衛を務めることになる。

2人は旅の途中で様々な冒険を繰り広げていくうちに、
数百年前から仕組まれていたというララの出生の秘密が明かされ、
そして執拗に彼女を狙う魔女・アイガイアの存在を知る・・・

この2人が主役、そして年齢差140歳という歳の差カップル(!)になる。
とはいっても、読んでいてあまり差を感じない。

バビロンの精神年齢は20歳そこそこではないかと思う。
150年生きてきて、これでいいのかと疑問もなくはないのだが。

 とはいっても、振り返ってみると私も60年生きてきたが
 年齢相応に悟りを開いたかと言えば、全くそんなことはないので
 まあこれはこれでいいのだろう(私が未熟なだけなのかも知れんが)

ララは、育ての親が老魔女だったせいか、言動がいやに老成していて
同年齢の子供なら絶対こんなことは言わないであろうという台詞が多々。
こちらは精神年齢的には熟女で、それに加えて
師匠譲りの黒魔術まで使いこなして、戦闘力もなかなか。

もちろんそんなララでも、年齢相応に振る舞うとき「も」ある。

 まあ、どちらも年齢相応に描いてしまったら
 バビロンが幼児愛好者になってしまうので、
 それはそれで明らかにマズいよねぇ・・・(笑)

「亡国の姫君と、彼女を守る剣士」というのは
ファンタジーの定番だし、登場するキャラクターやアイテムも
充分にファンタジーらしいんだけど、
読んでいると、全体的にあまりそういう雰囲気は感じない。

まあ、ヒロインたるララに「故国の再建」なんて野心が
これっぽっちもないのがまず異色なんだけども、
それだけが理由ではない。

例えば序盤では、怪物によって苦しむ村人たちに出会い、
その退治に乗り出していく、というエピソードがある。
もちろん退治は成功し、村には平和が訪れ、合わせて
将来的には豊かな生活が訪れるであろうことも示唆される。

まあ、これもファンタジーでは定番の話なのかも知れないが、
読んでいて、西洋風ファンタジーというよりは和風な雰囲気、
例えば「日本昔ばなし」のような話に感じられる。

その大きな理由は、キャラクターたちの言葉遣いにあるように思う。
作中に登場する人物の大半が、時代劇のような台詞回し。
バビロンのような流れ者の口ぶりは、さながら渡世人である。
つまり、時代劇の登場人物が異世界の衣装を着て演じてるみたいなのだ。

 いや、別に貶してるわけではありません。
 作者は十分承知の上でこれをやってるんでしょうから。
 これはこれで面白いと思います。
 ただまあ、私の好みとはかなりズレてるのは否めませんけど・・・

 そうすると、ララとバビロンの旅は、市井で苦しむ人々を救っていく
 ”世直し” みたいで、さながら水戸黄門である(おいおい)。

旅を続けるララとバビロンには、次第に仲間が増えていく。
魔道士の弟子なのに科学技術の研究に熱中している
三枚目キャラ・ナージス。武術の達人にして女剣士のアティカ。
序盤では敵として登場するが、後半では仲間となるサーブルとグール。

 いやあもう、ホントにここまできたら ”黄門様御一行”。
 「誰がどのキャラに相当するか」って当てはめながら読むのも一興か。

そして終盤まで来ると、一行の人数は8人に。

 「日本昔ばなし」から始まって「水戸黄門」になったと思ったら
 いつのまにか「八犬伝」になっていました。ラスボスも女性だし。

 いや、茶化してるわけではなくて、「物語の王道展開」を
 積極的に取り入れて構成していると思えば、
 ここまで徹底しているのはむしろ天晴れと言えるかも知れない。
 とにかく物語がわかりやすいし、感情移入もしやすいし。

世界に破滅をもたらす魔神ウェンディゴ、
最終巻は、その魔神を召喚せんとする魔女アイガイアの居城での戦いだ。

ファンタジーらしくない雰囲気で引っ張ってきたけれど、
最終決戦では8人みんなが力を合わせ、感動のエンディングとなる。
このあたりの展開もまた王道。

ちなみにタイトルの「ファンム・アレース」というのは、
物語の時間軸で250年前に存在したという伝説の少女剣士イヴに
与えられた称号「聖少女将軍(ファンム・アレース)」のことだ。

作者は香月日輪(こうづき・ひのわ)という人。
もともと児童文学からデビューした人で、そちらの著作も多いみたい。
本作は特に児童向けとは銘打っていないみたいだけど
想定している主な読者は中高生くらいかなあと思う。
もちろんファンタジー好きな人なら、年齢に関係なく楽しめると思う。

残念なことに2014年にお亡くなりになっている。
wikiによると享年51。早すぎるよねぇ・・・。


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首無館の殺人 [読書・ミステリ]

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

  • 作者: 月原渉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

かつて貿易商として栄えた宇江神(うえがみ)家。
しかし明治の世に入り、宇江神和意(かずい)の代になって衰えた。

和意は商才に乏しく、彼の妻・華(はな)は
一人娘・華煉(かれん)を残して早世し、跡継ぎとなる男子もない。

見かねた前当主・和一郎(かずいちろう)は、自ら跡継ぎを得ようと
若い妻・玲ヰ華(れいか)を娶るが、直後に病没してしまう。
玲ヰ華はそのまま宇江神家に残り、
周囲からは ”主家(しゅけ)夫人” と呼ばれるようになった。

物語は、令嬢・華煉が昏睡から覚醒する場面から始まる。
長い高熱状態が続いたためか、彼女は記憶を失っていた。

新しく雇われた使用人・栗花落静(つゆり・しずか)とともに
華煉は ”首無館” と名づけられた宇江神家の屋敷を案内される。

一癖も二癖もありそうな家族たち、いかにも裏のありそうな使用人たち。
胡散臭さ全開の人間たちの中で、記憶をなくした華煉の生活が始まる。

ある夜、華煉は父・和意と主家夫人が密会しているところを目撃するが、
その翌朝、主家夫人が自室で殺害された状態で発見される。
しかも、首が切断され、持ち去られていたのだ。

そしてそこから、続けざまに首無し殺人が発生していく・・・

とにかく、首の扱いがスゴい。
犯人に持ち去られたと思ったら、他の現場に出現したり
さらには空中を ”飛ぶ姿” が目撃されたり。
ここまで首を ”動かした” 作品も珍しいのではないかな。

舞台となる ”首無館” も、いかにも伝奇的なつくり。
建物がロの字形に並び、その中に庭がある。
しかし、1カ所しかない中庭への出入り口は常に施錠された状態。
しかもその中央には謎の ”塔” があり、そこには
何者かが閉じ込められているらしい。
いやぁもう、こういう雰囲気は大好きだ。

しかも文庫で260ページほどと、高密度でコンパクト。

本書は『使用人探偵シズカ ー横浜異人館殺人事件ー』
に続く、シリーズ2作目。
ロシアの血が入ったクールビューティ・シズカさんの活躍が描かれる。

最後に明かされる真相は、かなり大がかりなもので
実現可能性とか必然性とかリアリティとか考えると首を傾げてしまうが、
「本格ミステリ」を求める人なら、そのへんは気にしないのではないか。

「首無館」というエキセントリックな舞台と、
そこに集う、いかにも怪しげな登場人物たちを許容できるなら、
楽しい読書の時間が過ごせると思う。


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鳥居の密室 世界にたったひとりのサンタクロース [読書・ミステリ]

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

時代は1975年。
京都大学を目指す浪人生・サトルは、同じ浪人生仲間の
榊楓(さかき・かえで)の、悲惨で不思議な生いたちを聞く。

東京オリンピックが行われた1964年のクリスマス。
その翌朝、当時8歳だった楓の枕元にプレゼントが置いてあった。

いままで一度も、サンタクロースからの贈り物を
もらったことのない彼女は最高の幸せを味わうが、
同時に最悪の不幸にも見舞われていた。
別室に寝ていた母親が殺されていたのだ。
しかも、すべての扉と窓は内側から施錠された完全な密室状態。

そして事件の起こる前から、彼女の家の周辺では
不思議な現象が起こっていた。
住民たちが頭痛や不眠に悩まされ、中には幻覚を見る者まで。
しかし事件後はぴたりと止んでしまう。

楓の父親が営む鋳物工場の従業員・国丸信二が犯人として逮捕されるが
彼は一切を黙秘し、11年後の今も獄中にあるという。

サトルは、楓を京大の学生である御手洗潔に引きあわせるのだが・・・

本書は、以前に記事に書いたオムニバス短篇集『鍵のかかった部屋』に
収録されていた「世界にただ一人のサンタクロース」を
長編化したもの。元の作品も中編くらいあったけど、
本書はそれをさらに3倍くらいに膨らませてある。

文庫で360ページくらいあるのだけど、
その4割以上、150ページほどを占めるのが
重要登場人物である国丸信二の物語。
けっこう悲惨な生いたち、楓の両親との関わり、
そして幼い楓と過ごした日々の様子が綴られる。
作者が本作を長編化したのも、この部分をもっと
描き込みたかったんだろうなあ、と思える。

とはいっても、短篇版を先に読んでいる人からすれば、
トリックも結末ももうわかっているわけで・・・
読むかどうか、悩ましいところかな。

彼女を引き取った伯母さんがいい人で(伯父はちょっと問題児かな)、
楓ちゃんが、健やかに育っているのが救いだね。
なかなか魅力的なキャラだと思う。

京大生時代の御手洗が出会った事件もいくつか語られてるけど、
これからもこの時代の作品が書かれるのなら、
彼女にはまた登場して欲しいなぁ。無理かなぁ。


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シドニアの騎士 あいつむぐほし [アニメーション]

t_vs.jpg
未知の生命体・ガウナに地球を破壊され、かろうじて生き残った人類は
巨大な播種宇宙船「シドニア」を建造して太陽系を脱出、
内部で世代交代を重ねながら1000年あまりの旅を続けていた。

主人公・谷風長道(たにかぜ・ながて)は、シドニアをガウナから守る
人型機動兵器〈衛人〉(もりと)のエースパイロット。

「シドニア」はガウナの襲来を撃退しつつ、レム恒星系に到達し
そこに人類が居住可能な惑星「セブン」を発見するが、
星系内にはガウナの巨大母船〈大シュガフ船〉が居座っていた。

谷風たち〈衛人〉隊、そして人間とガウナから産まれた
融合個体・白羽衣(しらうい)つむぎの活躍で、
星系最外縁の惑星「ナイン」に巣くうガウナを一掃、
橋頭堡を築いたところまでが2014年と2015年にTVアニメ化され、
2期(12話×2)かけて描かれたが、ここまでが原作のおよそ2/3で
〈大シュガフ船〉との最終決戦が描かれずに終わっていた。

その後、全くといって音沙汰がなかったので、もうこれで
アニメ化は打ち切りなのかなあと思っていたら、
なんと映画で完結編とあいなった。

 企画自体は2017年から動いてたみたいなので、
 TVシリーズからあまり間を開けずに作業は始まっていたんだね。

TVシリーズ2期のラストから(作中時間で)10年、
惑星「セブン」へ入植し、人類を存続させることこそ
シドニアの使命と考える小林艦長が
ついに〈大シュガフ船〉との決戦を開始するところから映画は始まる。

原作の残りは、そのまま映像化したら4時間くらいに
なりそうな分量があるのだが、うまく整理されていて
2時間弱の上映時間だけどダイジェスト感はほとんどない。
これは原作者・弐瓶勉氏が自ら構成に加わっているおかげだろう。

基本的には、巨大ロボットもので、外宇宙の敵性生命体と戦う
スペースオペラなのだけど、それ以外にも様々な要素が描かれる。

ガウナとの決着もそうだけど、
シドニアを滅ぼそうとする天才科学者・落合の画策とか
その落合に精神を乗っ取られた元パイロット・岐神(くなと)とか
小林艦長に代表される、数百年にわたって
シドニアを指導してきた者たちの思いとか
そして今回の映画のメインテーマともなる、
長道とつむぎの ”身長差15mの恋” の行方が描かれる。

この映画が「シドニア」初見という人は、まずつむぎの外見に驚くだろう。
巨大かつグロテスクな見た目だが、少女のような純真な心を持つ、
目も眉もないので表情が全く表に出ないのだけど、
喜怒哀楽がはっきりわかるのはCVの州崎綾さんの熱演のおかげだろう。

人間と融合個体との ”種” を超えた愛、それは果たして成就するのか。

原作を読んだときも、クライマックスシーンでは
目がうるうるしてしまったのだが、それを映画館の大画面で、
素晴らしい音響で見せられたら・・・もう号泣しかない。

伏線をきれいに回収し、驚きと同時に納得の、素晴らしい結末。
映画のパンフレットには原作者のインタビューが載っているのだけど
「結末を決めてから描き始めた」とあった。
まさに、このラストシーンに向けて、すべての物語はあったのだろう。

 ちょっと余計なことを書くと、
 この映画が「シドニア」初見の人は、
 映画のラストシーンがよく理解できないかも知れない。
 そういう人はぜひ原作かTVシリーズにあたってほしい。
 そうして、いまいちど映画を観てもらうと、
 さらなる感動が味わえると思う。

とまあ、ここまで手放しで褒めてきた作品なのだけど
たった一つ文句を言うとしたら、主題歌の問題だ。

映画版を担当したCAPSULEというアーティストに
恨みがあるわけではないのだけど、TVシリーズから見ている者には
どうしてもangelaの歌の方が馴染みがあるんだよなぁ・・・
まあ、いろいろ ”大人の事情” があるんだろうなぁ・・・

なぁんて思っていたら、TV1期の主題歌「シドニア」が流れましたよ!
それも、「ここぞ」というタイミングで。
いやぁ、スタッフはわかってる。


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放課後の名探偵 [読書・ミステリ]

放課後の名探偵 (創元推理文庫)

放課後の名探偵 (創元推理文庫)

  • 作者: 市川 哲也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

名探偵・蜜柑花子の女子高生時代を描く短篇集、その2冊目。

「ルサンチマンの行方」
目立たない生徒・田川泰平は蜜柑花子に恋していた。
しかし花子は中場悠介と仲が良い。
面白くない泰平は花子の財布を盗み、
悠介が犯人と疑われるように仕向けるのだが・・・
学校を舞台にした作品で「倒叙もの」というのは珍しいかな。
ラストで泰平を追求する花子さんの指摘が、まあ鋭いこと。
ちなみにタイトルの「ルサンチマン」とは、wikiによると
『弱者が強者に対して、「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つこと』
だそうで。

「オレのダイイング・メッセージ」
ミステリ研部長の丸山信吾は
「前々から考えていたダイイング・メッセージのネタがついに完成した」
と宣言、その披露を兼ねて推理ゲームを提案するが、
部員一同から拒否されてしまう。しかしその翌日、
事故で怪我をしたことをきっかけに、勝手に ”死体” を装うことに。
丸山の行動がいささかオマヌケで笑える。

「誰がGを入れたのか」
学園ヒエラルキーのトップに位置する女子4人組、
倉ヶ崎有紀・泉明日香・羽片芽久・大古場瑞名。
リーダー格の有紀はひそかに悠介の ”彼女” の座を狙っていたが
それにはどうにも蜜柑花子が目障りだ。そこで、彼女の机の中に
”Gの死骸” を入れるという嫌がらせすることにした。
しかし、いつの間にか ”Gの死骸” は有紀の机の中に移動していた・・・
古典的ミステリに「見えない人」というネタがあるが、その現代版か。
確かに、ありそうなことではある。
ちなみに ”G” とは、台所によくいる奴ではなくて、
足がいっぱい生えてる方みたいです。

「屋上の奇跡」
花子たちの同級生・和波和(わなみ・なごみ)には自殺願望があった。
学校の屋上から投身自殺することに決めていたが、
なかなかチャンスがつかめずにいた。
しかしある時を境に、花子が執拗につきまとうようになってきた・・・

4編は独立しているけど、緩やかにつながっている。
特に、本書の ”影の主役” とも言える倉ヶ崎有紀さんは
なかなか波乱の展開を迎える。

読んでいると、学生時代だからこその言動なのだろうけど
とにかく ”嫌な女” として描かれている。だから、
「誰がGを-」での結末も因果応報だよ、なぁんて思うが
「屋上の-」では、そんな彼女にも一片の救いを用意している。

作者はどのキャラにも優しいねぇ。
読後感がいいのもそのせいだろう。


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死神さん [読書・ミステリ]

死神さん (幻冬舎文庫)

死神さん (幻冬舎文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

日本で逮捕・起訴されると、有罪判決が出る率は約99.9%。
無罪判決が出るのはわずか0.14%なのだという。

主人公・儀藤堅忍(ぎどう・けんにん)警部補は、
その希な無罪判決が出た事件を再捜査するという、
一風変わった、しかも特殊な任務を負って行動している。

無罪なのに有罪となってしまった「冤罪事件」をひっくり返す、
という作品は数多いが、本作はその真逆をいく。

彼の決め台詞は「逃げ得は許さない」。
罪を負うことなく逃げおおせようとする真犯人を
追い詰めていくのが儀藤警部補の仕事だ。

しかしそれは、警察当局から見れば「真犯人を見つけられなかった」、
あるいは「有罪に持ち込めるだけの証拠を挙げられなかった」わけで
いわば ”捜査における失態” をほじくり返されることでもある。
だから儀藤はどこに行っても邪魔者扱い、冷遇されることになる。

彼は再捜査に当たって、事件の初動捜査にあたった警官から一人、
”助手” として指名してバディを組む。
しかし指名された方からは大迷惑だ。仲間の失敗を暴くことになるわけで
同僚からは怨まれるし、上司からは睨まれる。
結果として警官人生における出世は望めなくなってしまう。
だから儀藤は警官仲間からこう呼ばれる。「死神」と。

本書は、その儀藤警部補が再捜査することになった
4つの事件を収めた、連作ミステリ短篇集になっている。

「死神の目」
資産家・星乃洋太郎が殺された。犯人として逮捕されたのは
被害者の甥・星乃礼人(あやひと)。賭事好きで多額の借金を抱えていた。
当初は犯行を自供していたが後にそれを翻し、
加えてアリバイが証明されたことによって無罪となった。
儀藤は大塚東署の刑事・大邊(おおべ)を指名、
事件の関係者を訪ね始めるが・・・。

「死神の手」
ギャンブルで借金を抱え、加えて勤務先が倒産して無職となった
波多野一(はじめ)が轢き逃げにあって死亡する。
犯人として逮捕されたのは妻の百合恵だったが無罪となる。
儀藤は交通課の田岡美鈴巡査を指名し、
百合恵の担当弁護士・三宅慶太に会いに行くが・・・

「死神の顔」
朝の通勤電車内で女子高生に痴漢を働いた容疑で
逮捕された正岡柳次郎には、かつて暴力事件を起こした前科があった。
しかし彼に下ったのは無罪判決。
女子高生が虚偽の証言をしたのか、それとも他に真犯人がいるのか。
逮捕に立ち会った榎田巡査を指名した儀藤は
正岡の弁護士・東晃(あずま・あきら)から
事件発生時の状況を詳しく聞き出すのだが・・・

「死神の背中」
25年前、児童誘拐事件の犯人として逮捕されたのは
46歳・無職の小木曽光三だった。
公判では無罪を主張するも無期懲役の判決を受けるが
再審請求によって71歳にして無罪を勝ち取る。
当時、捜査に当たっていた米村は既に退職していたが
儀藤の指名によって特別捜査官として臨時採用となり、
25年前の事件に再び向き合うことになるが・・・

どれもミステリとしてよくできているのはもちろんだが、面白いのは
どの作品も、儀藤から指名された ”助手” の視点から語られていること。

初めは儀藤のことを文字通り ”疫病神” のように忌み嫌うのだが
ともに捜査を進めていくうちに、彼の不思議な魅力に感化されていく。

そして、事件が解決した後には、”助手” たちはみな笑顔になっている。
抱えていた悩みが解決したり、元気が出てきたり。
原因は様々だがそこには儀藤の存在がある。
読後感が良いのもそれが理由だろう。

同じ作者の「福家警部補シリーズ」で、福家が出会う事件関係者たちが
みな笑顔を取り戻していくのが印象的なのだけど
それと似た構造で、このあたりもこの作者が人気な理由だろう。

巻末の解説によると、本シリーズは Hulu でドラマ化予定とのこと。
監督は堤幸彦。「トリック」シリーズの人だね。
主演は田中圭。うーん、原作とはイメージが違うかなぁ。
もっと ”もっさり” した感じなんだけど、
それじゃ観てもらえないんだろうなぁ・・・


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いつかの人質 [読書・ミステリ]

いつかの人質 (角川文庫)

いつかの人質 (角川文庫)

  • 作者: 芦沢 央
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・宮下愛子は12年前、3歳の時に
母親とショッピングセンターに行った際に行方不明となってしまう。
これは半ば偶発的な事故のようなもので、
愛子を連れ去った人物に誘拐の意図は無かったのだが・・・

結果的に愛子は戻ってきたものの、失踪中に頭部を強打し、
その後遺症で両目の視力を失ってしまっていた。

そして12年。中学3年生となった愛子は、
友人たちとともにアイドルグループのコンサートに行くことになった。
それは、母親の付き添い/介助なしでの初の外出でもあった。

しかしコンサート会場で、友人たちとはぐれて一人になった愛子は
何者かによって、そこから連れ出されてしまう。

一方、人気漫画家・江間礼遠(えま・れおん)の妻・優奈が失踪する。
礼遠の元に離婚届と500万円の借用書を残し、姿を消したのだ。

借金はホスト通いのためと判明するが、
妻の性格や普段の言動から考えると違和感しかない礼遠。
失踪には何らかの事情があるのではないか・・・

そして優奈は、12年前の宮下愛子 ”誘拐” 事件の
”犯人” の娘でもあった。

物語は、拉致された愛子のパート、
優奈の行方を捜し続ける礼遠のパート、
そして誘拐犯からの指示に振り回される警察と愛子の両親のパートと
3つのラインが同時並行していく。

なんと言っても、二度も誘拐事件の被害者となってしまうという
愛子さんの境遇が痛ましい。
視力を失い、日常生活でも介助が欠かせず、親の庇護がなければ
生きていけないようなひ弱な存在として登場してくるが、
彼女自身はそんな状態からの脱却を願っている。

今回、再び拉致され、犯人によって監禁までされてしまうが
ただ泣いて助けを待つだけではなく、自ら外部への連絡を試みたり
積極的に脱出の術を探るような逞しさも見せるようになっていく。
物語の中で示される愛子さんの成長が、物語の救いにもなっている。

結末でのサプライズに定評がある作家さんだが、
本作でも驚きの結末を見せてくれる。

ただまあ、真犯人の動機がちょっと納得しがたいんだけど・・・。
もうこれは「この人はこういう人なんだ」と思うしかないんだろうなぁ。

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