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夏への扉 (その1) [映画]

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まさかの実写映画化だ。

私が原作を初読したのは19だったか20歳だったか。
この辺のことは以前の記事にも書いた。

wikiを見ていたら、本作を企画した小川真司氏は
「1979年の初読以来、映画化はずっとずっと個人的な夢」
だったそうだ。

1979年ということは、読んだのはハヤカワ文庫版かな。
私とほぼ同時期に原作に触れた人だったんだね。
もっとも私は大学生だったけど、小川氏はたぶん高校1年生。
その時に抱いた夢を叶えたわけだ。これはこれで素晴らしいことだろう。

 もしタイムマシンがあるのなら、1979年頃の私に会いに行って
 「40年後に、日本で実写映画化されるぞ」って言ってみたいものだ。
 絶対信じなかっただろうけど(笑)。

小説版の方の記事にも書いたが、原作者のハインラインは、
原作となった小説の中で
「そして未来は、いずれにしろ過去にまさる」と書いている。

現実世界を見ていると、なかなかそう思えないけれど
ことサブカルに目を転じると、これは紛れもない事実だと思う。

ここ数年で、ヤマトはリメイクされるし、
ガンダムやゴジラの新作映画はできるし、
ウルトラマンや仮面ライダーのリブートも製作されるし、
昭和生まれのオッサンとしては誠に嬉しい限り。
そしてついには、あの『夏への扉』までが映画になるなんて・・・

いやあ、長生きはするものだ・・・

閑話休題。


原作小説は、日本のSFファン対象のアンケートにおいて
過去50年近くも常に3位以内をキープしているという ”殿堂入り” 作品。

しかし、原作の人気が高いほど不安になるのは映画の出来映えだ。
原作への愛着が大きい人ほど心配だろう。
私自身、末席ながらその一人だと思っているので・・・

さて。

結論から言うと、杞憂だったように思う。
「思っていた以上に、原作に沿っていたな」というのが第一印象。

もちろん、65年も前に発表された作品であるし、
舞台も日本に置き換えられているので、変更点も少なくない。

原作を知ってる人ならば
「あー、あのシーンはないんだぁ」とか
「あの台詞も使わないのかぁ」とか、
どうしても小説と比べなから観てしまうだろう。

でも、ラストシーンまで見終わってみると、
変更点には、それはそれで意味があったと思える。

もちろん、評価は人それぞれ。
厳しい評価をする人もいるかも知れないが、私はこの映画が好きだ。

いや、「好きになれる映画」になっていてよかった、というべきかな。
原作の発表時と21世紀の現在では、科学技術はもちろん
人々の価値観も、男女の有り様も変わった。

作品を取り巻く初期条件が変化しているのだから
「映画化」という ”問題” を解くのは、簡単ではなかっただろう。
でも本作は、(”満点の解答” かどうかはわからないが)
”最適解” の一つになっているのは間違いない、と思う。

さて、以下に映画を観て思ったことをつらつらと
順不同に書いていくけど、けっこう内容に触れている。
致命的なネタバレはしてないつもりだが、
これから映画を観ようという人は
以下の駄文は読まないことを推奨する。

主人公・高倉宗一郎は1968年生まれで、
物語開始時点の1995年では27歳になっている。
映画は、68年からの95年に至るまでのニュース映像から始まる。

ニュースの合間に、宗一郎の半生を綴る写真も織り込まれ、
主人公の背景紹介になっているのだけど、ここで既に
映画としての ”仕込み” は始まっている。

世に有名な「三億円事件」は1968年に起こるのだが、
このニュース映像の中では犯人が逮捕されている。
”我々の世界” では、犯人は捕まらずに逃げおおせているので、
この映画で描かれる世界は、”我々の世界” とは似ているけど
同じではない ”別の世界” であることを示しているわけだ。

 「三億円事件」を知らない若い人は、ググってください(笑)。

そして、映画後半で重要な役どころを務める物理学者・遠井が
”物質移送” 実験に成功したことを伝える映像も流れる。
この時点で彼は空間の壁を突破しているわけだ・・・。

両親が相次いで早世し、孤児となった宗一郎は
飼い猫のピートともに、父の親友だった大学教授・松下に引き取られ、
彼の娘・璃子(りこ)とは兄妹のように暮らしていくことになる。

しかしその松下夫婦も航空機事故で亡くなり、
璃子は叔父の松下和人(かずと)と暮らすことに。

大学を卒業し、ロボット研究者となった宗一郎は
和人とともに会社を設立、順調に開発は進んでいき、
会社の計理士だった白石鈴(りん)とも婚約を交わす。

しかし会社の運営方針を巡って和人と衝突、鈴の裏切りもあって
資産も研究成果もすべて奪われてしまい、
さらには強制的に30年間の冷凍睡眠に放り込まれてしまう。

 この世界の1995年では、冷凍睡眠が実用化されていて
 誰でも利用できるようになっている。

 作中、冷凍睡眠のTVCMが流れるのだけど、
 当たり前だがブラウン管TVである。
 (今となっては「ブラウン管」も死語だなあ・・・)

 流れるCM映像はこれまた昔懐かしい、往年の東宝特撮映画みたいな
 雰囲気で、ちょっと嬉しくなってしまったのはナイショだ(おいおい)。

宗一郎は30年後の2025年の東京で目を覚ます。
彼の前に現れたのは、人間にそっくりな介護ロボット・”ピート”。
ピートとともに街を歩き、30年間の世界の変貌に驚く宗一郎だが、
ある人物から、璃子が謎の死を遂げていたことを知らされる。

ピートの力を借りて30年の間に起こったことを調べた宗一郎は、
再び1995年へと時を超えることを決意する・・・

(「その2」へ続く)


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