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ファンム・アレース [読書・ファンタジー]

ファンム・アレース 1 (講談社文庫)

ファンム・アレース 1 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース 2 (講談社文庫)

ファンム・アレース 2 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース3 (講談社文庫)

ファンム・アレース3 (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(4) (講談社文庫)

ファンム・アレース(4) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(5)(上) (講談社文庫)

ファンム・アレース(5)(上) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
ファンム・アレース(5)(下) (講談社文庫)

ファンム・アレース(5)(下) (講談社文庫)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

全5巻(第5部は上下巻なので文庫としては全6巻)の異世界ファンタジー。
とはいっても、長い巻でも270ページくらい、
第5部の上下巻はそれぞれ200ページに満たないので
巻数のわりにはサクッと読める分量ではある。

主人公・バビロンは剣豪として知られる流れ者。
150歳になるが、”人外” の血を引いているため外見は若者だ。

彼はある夜、謎の美女にたぶらかされて
”主従の契約” を結ばされてしまう。そして3日後、
彼の前に ”主” として現れたのは青い瞳の少女・ララだった。

南の小国・グランディエ王国は圧政に苦しむ民衆の反乱によって滅亡、
ララはその王族最後の生き残りだった。
王都を脱出し、たった一人で旅を続けてきたが、
バビロンは契約に従い、彼女の旅の護衛を務めることになる。

2人は旅の途中で様々な冒険を繰り広げていくうちに、
数百年前から仕組まれていたというララの出生の秘密が明かされ、
そして執拗に彼女を狙う魔女・アイガイアの存在を知る・・・

この2人が主役、そして年齢差140歳という歳の差カップル(!)になる。
とはいっても、読んでいてあまり差を感じない。

バビロンの精神年齢は20歳そこそこではないかと思う。
150年生きてきて、これでいいのかと疑問もなくはないのだが。

 とはいっても、振り返ってみると私も60年生きてきたが
 年齢相応に悟りを開いたかと言えば、全くそんなことはないので
 まあこれはこれでいいのだろう(私が未熟なだけなのかも知れんが)

ララは、育ての親が老魔女だったせいか、言動がいやに老成していて
同年齢の子供なら絶対こんなことは言わないであろうという台詞が多々。
こちらは精神年齢的には熟女で、それに加えて
師匠譲りの黒魔術まで使いこなして、戦闘力もなかなか。

もちろんそんなララでも、年齢相応に振る舞うとき「も」ある。

 まあ、どちらも年齢相応に描いてしまったら
 バビロンが幼児愛好者になってしまうので、
 それはそれで明らかにマズいよねぇ・・・(笑)

「亡国の姫君と、彼女を守る剣士」というのは
ファンタジーの定番だし、登場するキャラクターやアイテムも
充分にファンタジーらしいんだけど、
読んでいると、全体的にあまりそういう雰囲気は感じない。

まあ、ヒロインたるララに「故国の再建」なんて野心が
これっぽっちもないのがまず異色なんだけども、
それだけが理由ではない。

例えば序盤では、怪物によって苦しむ村人たちに出会い、
その退治に乗り出していく、というエピソードがある。
もちろん退治は成功し、村には平和が訪れ、合わせて
将来的には豊かな生活が訪れるであろうことも示唆される。

まあ、これもファンタジーでは定番の話なのかも知れないが、
読んでいて、西洋風ファンタジーというよりは和風な雰囲気、
例えば「日本昔ばなし」のような話に感じられる。

その大きな理由は、キャラクターたちの言葉遣いにあるように思う。
作中に登場する人物の大半が、時代劇のような台詞回し。
バビロンのような流れ者の口ぶりは、さながら渡世人である。
つまり、時代劇の登場人物が異世界の衣装を着て演じてるみたいなのだ。

 いや、別に貶してるわけではありません。
 作者は十分承知の上でこれをやってるんでしょうから。
 これはこれで面白いと思います。
 ただまあ、私の好みとはかなりズレてるのは否めませんけど・・・

 そうすると、ララとバビロンの旅は、市井で苦しむ人々を救っていく
 ”世直し” みたいで、さながら水戸黄門である(おいおい)。

旅を続けるララとバビロンには、次第に仲間が増えていく。
魔道士の弟子なのに科学技術の研究に熱中している
三枚目キャラ・ナージス。武術の達人にして女剣士のアティカ。
序盤では敵として登場するが、後半では仲間となるサーブルとグール。

 いやあもう、ホントにここまできたら ”黄門様御一行”。
 「誰がどのキャラに相当するか」って当てはめながら読むのも一興か。

そして終盤まで来ると、一行の人数は8人に。

 「日本昔ばなし」から始まって「水戸黄門」になったと思ったら
 いつのまにか「八犬伝」になっていました。ラスボスも女性だし。

 いや、茶化してるわけではなくて、「物語の王道展開」を
 積極的に取り入れて構成していると思えば、
 ここまで徹底しているのはむしろ天晴れと言えるかも知れない。
 とにかく物語がわかりやすいし、感情移入もしやすいし。

世界に破滅をもたらす魔神ウェンディゴ、
最終巻は、その魔神を召喚せんとする魔女アイガイアの居城での戦いだ。

ファンタジーらしくない雰囲気で引っ張ってきたけれど、
最終決戦では8人みんなが力を合わせ、感動のエンディングとなる。
このあたりの展開もまた王道。

ちなみにタイトルの「ファンム・アレース」というのは、
物語の時間軸で250年前に存在したという伝説の少女剣士イヴに
与えられた称号「聖少女将軍(ファンム・アレース)」のことだ。

作者は香月日輪(こうづき・ひのわ)という人。
もともと児童文学からデビューした人で、そちらの著作も多いみたい。
本作は特に児童向けとは銘打っていないみたいだけど
想定している主な読者は中高生くらいかなあと思う。
もちろんファンタジー好きな人なら、年齢に関係なく楽しめると思う。

残念なことに2014年にお亡くなりになっている。
wikiによると享年51。早すぎるよねぇ・・・。


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