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いつかの人質 [読書・ミステリ]

いつかの人質 (角川文庫)

いつかの人質 (角川文庫)

  • 作者: 芦沢 央
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・宮下愛子は12年前、3歳の時に
母親とショッピングセンターに行った際に行方不明となってしまう。
これは半ば偶発的な事故のようなもので、
愛子を連れ去った人物に誘拐の意図は無かったのだが・・・

結果的に愛子は戻ってきたものの、失踪中に頭部を強打し、
その後遺症で両目の視力を失ってしまっていた。

そして12年。中学3年生となった愛子は、
友人たちとともにアイドルグループのコンサートに行くことになった。
それは、母親の付き添い/介助なしでの初の外出でもあった。

しかしコンサート会場で、友人たちとはぐれて一人になった愛子は
何者かによって、そこから連れ出されてしまう。

一方、人気漫画家・江間礼遠(えま・れおん)の妻・優奈が失踪する。
礼遠の元に離婚届と500万円の借用書を残し、姿を消したのだ。

借金はホスト通いのためと判明するが、
妻の性格や普段の言動から考えると違和感しかない礼遠。
失踪には何らかの事情があるのではないか・・・

そして優奈は、12年前の宮下愛子 ”誘拐” 事件の
”犯人” の娘でもあった。

物語は、拉致された愛子のパート、
優奈の行方を捜し続ける礼遠のパート、
そして誘拐犯からの指示に振り回される警察と愛子の両親のパートと
3つのラインが同時並行していく。

なんと言っても、二度も誘拐事件の被害者となってしまうという
愛子さんの境遇が痛ましい。
視力を失い、日常生活でも介助が欠かせず、親の庇護がなければ
生きていけないようなひ弱な存在として登場してくるが、
彼女自身はそんな状態からの脱却を願っている。

今回、再び拉致され、犯人によって監禁までされてしまうが
ただ泣いて助けを待つだけではなく、自ら外部への連絡を試みたり
積極的に脱出の術を探るような逞しさも見せるようになっていく。
物語の中で示される愛子さんの成長が、物語の救いにもなっている。

結末でのサプライズに定評がある作家さんだが、
本作でも驚きの結末を見せてくれる。

ただまあ、真犯人の動機がちょっと納得しがたいんだけど・・・。
もうこれは「この人はこういう人なんだ」と思うしかないんだろうなぁ。

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