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首無館の殺人 [読書・ミステリ]

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

  • 作者: 月原渉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

かつて貿易商として栄えた宇江神(うえがみ)家。
しかし明治の世に入り、宇江神和意(かずい)の代になって衰えた。

和意は商才に乏しく、彼の妻・華(はな)は
一人娘・華煉(かれん)を残して早世し、跡継ぎとなる男子もない。

見かねた前当主・和一郎(かずいちろう)は、自ら跡継ぎを得ようと
若い妻・玲ヰ華(れいか)を娶るが、直後に病没してしまう。
玲ヰ華はそのまま宇江神家に残り、
周囲からは ”主家(しゅけ)夫人” と呼ばれるようになった。

物語は、令嬢・華煉が昏睡から覚醒する場面から始まる。
長い高熱状態が続いたためか、彼女は記憶を失っていた。

新しく雇われた使用人・栗花落静(つゆり・しずか)とともに
華煉は ”首無館” と名づけられた宇江神家の屋敷を案内される。

一癖も二癖もありそうな家族たち、いかにも裏のありそうな使用人たち。
胡散臭さ全開の人間たちの中で、記憶をなくした華煉の生活が始まる。

ある夜、華煉は父・和意と主家夫人が密会しているところを目撃するが、
その翌朝、主家夫人が自室で殺害された状態で発見される。
しかも、首が切断され、持ち去られていたのだ。

そしてそこから、続けざまに首無し殺人が発生していく・・・

とにかく、首の扱いがスゴい。
犯人に持ち去られたと思ったら、他の現場に出現したり
さらには空中を ”飛ぶ姿” が目撃されたり。
ここまで首を ”動かした” 作品も珍しいのではないかな。

舞台となる ”首無館” も、いかにも伝奇的なつくり。
建物がロの字形に並び、その中に庭がある。
しかし、1カ所しかない中庭への出入り口は常に施錠された状態。
しかもその中央には謎の ”塔” があり、そこには
何者かが閉じ込められているらしい。
いやぁもう、こういう雰囲気は大好きだ。

しかも文庫で260ページほどと、高密度でコンパクト。

本書は『使用人探偵シズカ ー横浜異人館殺人事件ー』
に続く、シリーズ2作目。
ロシアの血が入ったクールビューティ・シズカさんの活躍が描かれる。

最後に明かされる真相は、かなり大がかりなもので
実現可能性とか必然性とかリアリティとか考えると首を傾げてしまうが、
「本格ミステリ」を求める人なら、そのへんは気にしないのではないか。

「首無館」というエキセントリックな舞台と、
そこに集う、いかにも怪しげな登場人物たちを許容できるなら、
楽しい読書の時間が過ごせると思う。


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