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鳥居の密室 世界にたったひとりのサンタクロース [読書・ミステリ]

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

時代は1975年。
京都大学を目指す浪人生・サトルは、同じ浪人生仲間の
榊楓(さかき・かえで)の、悲惨で不思議な生いたちを聞く。

東京オリンピックが行われた1964年のクリスマス。
その翌朝、当時8歳だった楓の枕元にプレゼントが置いてあった。

いままで一度も、サンタクロースからの贈り物を
もらったことのない彼女は最高の幸せを味わうが、
同時に最悪の不幸にも見舞われていた。
別室に寝ていた母親が殺されていたのだ。
しかも、すべての扉と窓は内側から施錠された完全な密室状態。

そして事件の起こる前から、彼女の家の周辺では
不思議な現象が起こっていた。
住民たちが頭痛や不眠に悩まされ、中には幻覚を見る者まで。
しかし事件後はぴたりと止んでしまう。

楓の父親が営む鋳物工場の従業員・国丸信二が犯人として逮捕されるが
彼は一切を黙秘し、11年後の今も獄中にあるという。

サトルは、楓を京大の学生である御手洗潔に引きあわせるのだが・・・

本書は、以前に記事に書いたオムニバス短篇集『鍵のかかった部屋』に
収録されていた「世界にただ一人のサンタクロース」を
長編化したもの。元の作品も中編くらいあったけど、
本書はそれをさらに3倍くらいに膨らませてある。

文庫で360ページくらいあるのだけど、
その4割以上、150ページほどを占めるのが
重要登場人物である国丸信二の物語。
けっこう悲惨な生いたち、楓の両親との関わり、
そして幼い楓と過ごした日々の様子が綴られる。
作者が本作を長編化したのも、この部分をもっと
描き込みたかったんだろうなあ、と思える。

とはいっても、短篇版を先に読んでいる人からすれば、
トリックも結末ももうわかっているわけで・・・
読むかどうか、悩ましいところかな。

彼女を引き取った伯母さんがいい人で(伯父はちょっと問題児かな)、
楓ちゃんが、健やかに育っているのが救いだね。
なかなか魅力的なキャラだと思う。

京大生時代の御手洗が出会った事件もいくつか語られてるけど、
これからもこの時代の作品が書かれるのなら、
彼女にはまた登場して欲しいなぁ。無理かなぁ。


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