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ローズメイカー 奇跡のバラ [映画]

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本作はフランス映画なんだけど、タイトルが英語なのはなぜ?
なんてツッコミはおいといて、内容紹介。

ちなみに「ローズメイカー」とはバラの育種家。
新種のバラをつくり出すことを生業にしている人のことだ。

舞台はフランスの郊外。

主人公のエヴは、あふれる才能と魔法のような指で
過去には新種のバラを多く開発し、数々の賞に輝いてきた。

結婚もせずにバラの育種に勤しんできたが、農園を経営していた
父が15年前に逝き、ここ数年は大手企業のラマルゼル社に
新種のバラのコンクールでも負け続け、顧客も奪われ、
父が遺したバラ農園も倒産寸前の状態にあった。

父の代から農園で働いてくれている助手のヴェラは、
立て直しのために職業訓練所から格安で3人の従業員を雇い入れる。

しかし三者三様に問題を抱えたメンバーたちでもちろん全くの素人。
仕事を任せてみれば、エヴの足を引っ張るばかり。

そんな頃、エヴに起死回生のアイデアが閃く。
画期的な新種のバラをつくりだす交配プランを思いついたのだ。

しかし、必要な2種の希少種バラのうち、1つは手元にあったが
もう1つはラマルゼル社のバラ園に秘蔵され、門外不出の扱い。

雇い入れた新人の1人、フレッドに窃盗の前科があったことから、
エヴは彼の ”特技” を利用してラマルゼル社のバラ園に忍び込み、
交配に必要な希少バラを盗み出そうとするが・・・

キャッチコピーは
「愛すべき〈はみだし者〉たちの逆転サクセス・ストーリー!」
とあるのだけど、映画本編から受けるイメージはかなり異なる。

まず主役のエヴが、”愛すべきおばさん” に見えないんだよなぁ。
バラの育成だけが人生のすべてで、父のバラ園を残すことが至上命題。
そのためなら不法行為に手を染めることも厭わない。
映画の前半では、嫌われる要素は満載だが好かれる要素は少ない。
”貧すれば鈍する” の道を一直線に驀進中だ。

もちろん、物語が進むにつれて彼女の人となりがわかってきて
愛情も思いやりも人並み以上に持ち合わせていることが
分かってくるのだが・・・

さらに、”逆転サクセス・ストーリー!” なんて煽られると
エヴと新人問題児3人が、さぞかし熱く奮闘するんだろう・・・
というイメージを持ったのだけど、これもそれほど描かれない。
農園の経営資金を得るために、3人はバラの売り込みに奔走するが
頑張ってはいるけど ”熱闘” というほどではない。

この映画全体に言えることなのだけど、全体に ”薄味” だ。

ハリウッド映画だったら、問題児3人がバラを売り歩くシーンなど
抱腹絶倒のギャグシーンの連続として描くだろうし、
作中では悪役に相当する大手企業の経営者ラマルゼル氏は
札束にものを言わせて非道なことをゴリ押しをするような、
分かりやすい悪人として描かれるだろう。

しかしこの映画のラマルゼル氏は、バラの育種をきちんと
企業の業務として組織化し、かつ結果を出している有能な経営者だ。
エヴに対して農園の買収を申し出るけど、従業員の雇用も守るし、
エヴ本人に対しても、それなりのポストを用意するという。

 もっとも、台詞のニュアンスが伝わってこないので、そのへんは不明。
 もしかしたら、ものすごく嫌みったらしい口調で
 喋ってるのかも知れないが・・・
 字幕からではそういう雰囲気は感じられないけどね。

そういうふうにラマルゼルを描いているものだから、
終盤になって問題児3人が口々にラマルゼルを批判する台詞を
口にするのには、正直言って違和感の方が大きかった。

最後の〈サクセス〉にしても、奮闘努力の甲斐あって、
というよりは、けっこう偶然に助けられてのもの。

 もっとも、毎日の ”凡事徹底” の姿勢こそが
 成功の秘訣、ということなのかも知れないが。

このあたりの展開も、ハリウッド映画だったら
ド派手に盛り上げるのだろうが・・・

フランス映画というのは、こういう雰囲気のものが多いのでしょうか。
ハリウッドの “高カロリー濃厚とんこつ味” に慣れてしまった身には
この映画の持つ ”ほんのり塩味あっさり風味” には戸惑います。

濃厚味のものばっかり食べていると健康に悪い。
たまにはこういう味のものに出会うことも必要なのかも知れません。


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