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放課後の名探偵 [読書・ミステリ]

放課後の名探偵 (創元推理文庫)

放課後の名探偵 (創元推理文庫)

  • 作者: 市川 哲也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

名探偵・蜜柑花子の女子高生時代を描く短篇集、その2冊目。

「ルサンチマンの行方」
目立たない生徒・田川泰平は蜜柑花子に恋していた。
しかし花子は中場悠介と仲が良い。
面白くない泰平は花子の財布を盗み、
悠介が犯人と疑われるように仕向けるのだが・・・
学校を舞台にした作品で「倒叙もの」というのは珍しいかな。
ラストで泰平を追求する花子さんの指摘が、まあ鋭いこと。
ちなみにタイトルの「ルサンチマン」とは、wikiによると
『弱者が強者に対して、「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つこと』
だそうで。

「オレのダイイング・メッセージ」
ミステリ研部長の丸山信吾は
「前々から考えていたダイイング・メッセージのネタがついに完成した」
と宣言、その披露を兼ねて推理ゲームを提案するが、
部員一同から拒否されてしまう。しかしその翌日、
事故で怪我をしたことをきっかけに、勝手に ”死体” を装うことに。
丸山の行動がいささかオマヌケで笑える。

「誰がGを入れたのか」
学園ヒエラルキーのトップに位置する女子4人組、
倉ヶ崎有紀・泉明日香・羽片芽久・大古場瑞名。
リーダー格の有紀はひそかに悠介の ”彼女” の座を狙っていたが
それにはどうにも蜜柑花子が目障りだ。そこで、彼女の机の中に
”Gの死骸” を入れるという嫌がらせすることにした。
しかし、いつの間にか ”Gの死骸” は有紀の机の中に移動していた・・・
古典的ミステリに「見えない人」というネタがあるが、その現代版か。
確かに、ありそうなことではある。
ちなみに ”G” とは、台所によくいる奴ではなくて、
足がいっぱい生えてる方みたいです。

「屋上の奇跡」
花子たちの同級生・和波和(わなみ・なごみ)には自殺願望があった。
学校の屋上から投身自殺することに決めていたが、
なかなかチャンスがつかめずにいた。
しかしある時を境に、花子が執拗につきまとうようになってきた・・・

4編は独立しているけど、緩やかにつながっている。
特に、本書の ”影の主役” とも言える倉ヶ崎有紀さんは
なかなか波乱の展開を迎える。

読んでいると、学生時代だからこその言動なのだろうけど
とにかく ”嫌な女” として描かれている。だから、
「誰がGを-」での結末も因果応報だよ、なぁんて思うが
「屋上の-」では、そんな彼女にも一片の救いを用意している。

作者はどのキャラにも優しいねぇ。
読後感がいいのもそのせいだろう。


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