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サスツルギの亡霊 [読書・ミステリ]


サスツルギの亡霊 (講談社文庫)

サスツルギの亡霊 (講談社文庫)

  • 作者: 神山 裕右
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/09/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

タイトルの「サスツルギ」って聞き慣れない言葉なんだけど、
環境省のHPによると、
「雪の表面が、風で削られてできた模様です。
 風の吹いてくる方が鋭くとがり、風の向きにそって、
 なだらかに伸びているので、その形から風の向きがわかります。
 大きなサスツルギは高さ2メートルにもなります」
とある。ちなみにロシア語から由来する言葉らしい。

↓同じく、環境省HPにあった写真も引用しておきます。

sasutsurugi.jpg

作者は2004年に『カタコンベ』で乱歩賞を受賞して
本作が2作目となる。

タイトルからも分かると思うけど、物語は極寒の世界・南極が舞台。


親同士の再婚によって、篠田英治と矢島拓海(たくみ)は兄弟となった。
お決まりの兄弟間の葛藤を抱えながらも二人は成長し、
兄の英治は研究者となり、弟の拓海はカメラマンとなった。

国立極地研究所に勤務していた英治は、南極越冬隊に参加するが
隕石の調査中にブリザードに遭遇、行方不明となってしまう。

 ちなみに、越冬隊参加者の選考って結構厳しいみたいなんだけど、
 そのあたりも描かれている。

英治の ”死” から2年後、拓海の元へ1枚の絵はがきが届く。
差出人の住所は南極・昭和基地内郵便局、しかし消印はなし。
さらに、謎の電話もかかってくる。
「兄の死の真相を知りたければ、彼が命を落とした地に行け」と。

時を同じくして、拓海の元に南極越冬隊への密着取材の仕事が舞い込む。
これは偶然なのか、それとも何者かが後ろで糸を引いているのか・・・

拓海が参加した越冬隊には、2年前の越冬に参加したメンバーもいた。
そして、南極に到着して活動を開始すると様々なトラブルが発生する。
負傷者も出る中、殺人事件までも起こってしまい、
その容疑は、拓海にかけられてしまう・・・


南極という、究極のクローズトサークルなんだけど
隊員数が多いので、あまり閉塞感はない。

殺人事件の犯人についても、状況証拠を積み重ねて
絞っていく展開なので、”犯人当て” っぽさは乏しい。

ミステリと言うよりはサスペンスだな・・・って思って
読んでたんだけど、「エピローグ」で示される真相はかなり意外。
なるほど、そういう絡繰りだったのか・・・


余計なことなんだけど、登場人物が多くて、
しかもみんな狭い基地内にいて、ほぼみんな研究者や技術者。
キャラのかき分けが弱いのか、読んでる私のアタマが弱いのか、
たぶん後者だと思うのだけど(笑)、読んでて
「こいつ、何してる奴だったっけ」って迷うことが多かった。

最初のうちは前の方を読み直して確認してたんだけど、
途中から面倒くさくなって止めてしまった。
まあ、作品を楽しむにはあまり支障はないのだけど(おいおい)
できれば「登場人物一覧表」をつけてほしかったなあ・・・

その代わり、昭和基地や南極の地図はしっかり載ってるんだが
これがまた、文庫判のせいか文字が小さくて、
老眼の私には読めないんだよね・・・

超高齢化社会に突入してるんだから、こういうところに配慮しないと
ますます活字離れが進んでしまいますよ、講談社さん・・・
と思ったのだけど、電子書籍なら話は変わるのかな。

キャラで分からないところがあったら、
名前で前の方のページを検索すればいいし、
地図が見にくかったら拡大すればいいんだろうな・・・

でも私みたいに、いまだに紙に拘る人も少なくないと思うので
そのへんの配慮はしてほしいなあ・・・と思った今日この頃でした(笑)。

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