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今昔百鬼拾遺 鬼 [読書・ミステリ]


今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

百鬼夜行シリーズの最新作3作を3ヶ月連続刊行、
それもすべて初文庫化という、なんとも景気のいいイベントの第1弾。
しかも出版社が3冊とも異なるという。
出版不況の中、仲がいいんだか
背に腹は代えられない呉越同舟なのか。

今回の3冊で探偵役を務めるのは中禅寺秋彦の妹にして
中堅出版社である奇譚社の記者・敦子。
その相棒は長編「絡新婦の理」の登場人物で
水産会社社長令嬢で千葉県の聖ベルナール女学院の生徒だった
呉美由紀(くれ・みゆき)。


「絡新婦-」事件のあおりで学園が閉鎖になったため
美由紀は都内の女子校に転入して、現在中等部3年生。
そこで彼女は高等部1年の片倉ハル子と親しくなったが
そのハル子が ”辻斬り” に殺されてしまう。

昭和28年9月から始まった ”連続辻斬り事件” は
いずれも駒澤野球場の近くで起こっていて
29年2月下旬に殺されたハル子で7人目になった。

ハル子の事件の直後、犯人として捕まったのは
彼女の交際相手で19歳の旋盤工・宇野憲一。

ハル子は事件前、自らの運命を予見するようなことを語っていた。
「片倉家の女は代々、斬り殺される定めにある」のだという。

美由紀から相談を受けた敦子は
片倉家代々の陰惨な歴史を知ることになるが・・・


ミステリを読み慣れた人なら、犯人を予想することは容易だろう。
でも、本書の読みどころはそこではなく、
敦子と美由紀の、元気な女性二人組の大活躍だろう。
二人の会話も楽しいし、男性に対しても物怖じせずに突撃する。
兄の秋彦とは異なる雰囲気での敦子の謎解きシーンもいい。

そして何より、明治や大正の時代の名残を留める
大戦直後の時代という舞台がまたいい。
そしてそこで語られる、因習と業に満ちた人々の物語。

秋彦の活躍する百鬼夜行シリーズの ”本伝” は
枕に使えそうなほど厚くて、凶器に使えそうなほど重いのだけど
本書は文庫で250ページほどとコンパクト。
早く読み終えられるし、何より手で持ってて疲れないのがいい(笑)。

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