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プリンセス刑事 [読書・ミステリ]


プリンセス刑事 (文春文庫)

プリンセス刑事 (文春文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ちなみにタイトルは「ぷりんせす でか」と読みます(笑)。

舞台はパラレルワールドの日本。

そこは2000年以上もの間、”女王” によって統治されてきた国。
こちら側の世界において、”皇族” というものが
我々の日常から隔絶された人々であるように
”女王国” においても、”王族” とされる人々は
”非日常” の存在だったはず、だったのだが・・・

三鷹市立大学の構内およびその周辺で、
2か月の間に3人が殺されるという無差別連続殺人事件が起こる。
ネット世界では、犯人は「ヴァンパイア」と呼ばれていた。

捜査に進展が見られない中、三鷹署の捜査本部に
人員が1名追加されることになった。
その人こそ、白桜院日奈子(はくおういん・ひなこ)殿下。
現女王の妹宮の娘(つまり姪)にして、王位継承権第5位。
まさにやんごとなきプリンセス。

とは言っても、警察大学校での3か月の研修を終えたばかりで、
身分はあくまで一介の平刑事。

そして彼女と捜査上のパートナーを組むように命じられたのが
本書の主人公、若手刑事の芦原直斗(なおと)。

実は直斗は、ある ”弱点” を抱えていて、そのために
捜査班の中ではいちばん戦力として当てにされていない。
要するに、彼女をなるべく危険な現場から遠ざけ、
捜査に支障を来さないようさせる ”お守り役” を割り振られたのだ。

しかしそれでは殿下の気持ちが収まらない。
純粋に「国民を守りたい」という動機から刑事になった彼女は
意外な行動力を発揮して、直斗を振り回しながら(笑)
「ヴァンパイア」の正体へと迫っていく・・・


一般人代表みたいな直斗と、王族の日奈子との、
価値観の違いがいろんな場面でコミカルに描かれていく。

身分の高いキャラは往々にして我が儘や高飛車に描かれたりするのだが
日奈子殿下にはそんなところは全くない。
上にも書いたが純粋でまっすぐで素直な性格で
そしてその志がまた高貴とくる。まさに敬愛に値するお姫様。

直斗の方も、彼女に対して(畏れ多いことだけど)
憧憬の情を抱くようになるのだが、いかんせん姫のお側には、
シュワちゃん演じるところのターミネーターみたいにガタイのいい、
護衛役・竹野がつきっきりで目を光らせているので
不埒な振る舞いなどもってのほかである(笑)。
この3人組の掛け合いもまた楽しくて、読みどころのひとつでもある。

ミステリ要素は薄いけれども、各キャラの言動と
”姫君と刑事” という特異なシチュエーションを楽しむのが正解だろう。

実は本書の続編は既に刊行されていて、タイトルも
「プリンセス刑事 生前退位と姫の恋」
これも手元にあるので、近々読む予定。

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