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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第四章」感想・・・のようなもの その6 [アニメーション]


※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。

▼第13話「テレザート上陸作戦・敵ミサイル艦隊を叩け!」(後編)

■激闘、テレザート攻防戦(承前)

破滅ミサイルによって岩盤の中央に大穴が。
"重力波の乱れ" によって、嵐のように翻弄されながらも
必死に体勢を立て直そうとするヤマト。

「テレザート周辺の重力場と干渉し合って乱気流のような状態に」

このあたりの重力はかなり特殊な状況にあるらしい。
まあ、あんな岩盤が取り巻いてりゃ、そりゃ変わるだろう。

「さすがテレザートより吸い上げし力を充填したミサイル。
 面白い働きをする」
「ヤマト発見!」
「狩りの仕上げにかかれ!」

テレザートの持つ力とは何なのか。反物質?
巨大ミサイルが一斉に発射される。それに応戦するヤマト。
なかなかミサイルが当たらないなあと思ってたが、
たぶんこの乱気流の影響だね。このあと土方が言うように、
乱流の中にいた方がかえって安全という状態。
狙いが定まらないという意味では双方とも条件は同じ。

「艦隊をもっと広く展開させるべきでは?
 こうも密集していてはヤマトの大砲に撃たれたとき・・・」
「この乱流の中、狙いは定まらぬ。だがそれ以前に奴は撃たん」
「え?」
「撃てんのだ」

ノルは冷静に布陣を考えてるが、ゴーランドはもう勝った気でいる。

反撃を試みようとするヤマト。
「ここから出る  機関長!」「波動エンジン最大出力」
「待て! 今この乱流から飛び出せば敵に狙い撃ちにされる。
 作戦はまだ生きている」

古代の前にはすでにターゲットスコープがオープンされていて、
照準には敵艦隊が映っている。それを見つめる古代。

「波動砲、発射準備!」それを横目で見る島。
「この流れを利用して敵艦隊を観測、
 最善の射点を確保し、波動砲を敵艦隊に直撃させる!」

雨あられと降り注ぐミサイル。

「見ろ、愛という不合理な感情に支配されて
 奴は我々を撃つことができんのだ」

「艦長代理、一撃で敵艦隊を仕留めるのなら今が最上の射点です」

南部の声が響くが、ためらいを見せる古代。そこへ割って入る声が。

「こちら斉藤。聞こえるか。
 おやじ、艦橋にいるんならあんたが波動砲を撃ってくれ。
 ばかげたことさ。でもしょうがねえ。理屈じゃねえんだ。
 あいつは約束してるんだよ、大事な人との約束・・・
 だから、代わりに」

古代の苦衷を察した斉藤の台詞が熱い。しかしそれを遮る声が。

「ダメだ」

新BGMにのってキーマンの台詞が始まる。第四章最大のヤマ場だ。

「これはイスカンダルに旅した者が等しく背負う十字架だ」

第一艦橋のメンバー、一人一人がアップになる。

「自ら呪縛を絶たない限り、ヤマトに未来はない」

斉藤とキーマンの台詞では、まさに福井節が炸裂してる。
そしてそして、この素晴らしいBGM。
何という題名なのだろう。「決意」? 「覚悟」? 「十字架」?
この曲が聴けただけでも「2202」を観てきた甲斐がある(おいおい)。

トリガーを握る古代に沖田が語りかける。

「古代、覚悟を示せ。指揮官としての覚悟を!」

必死の思いで目を見開く。すると

島が「波動砲への回路、開け」
南部が「波動砲への回路、開きます」
徳川が「非常弁全閉鎖、強制注入器作動」
真田が「最終セーフティ、解除」

「お前一人の引き金じゃない」
「島・・・」
「俺も撃つ!」
真田「私もだ」
太田、南部、相原も頷く。彼らの言葉に意を決する古代。

「総員、対ショック、対閃光防御。
 斉藤、聞こえるか。重力乱流のせいでフネの姿勢が安定しない。
 頼まれてくれ」
「よしきた! いくぜ野郎ども!」
「いったいどうするんですか隊長」
「決まってんじゃんか、手で押すんだよ」

ヤマトの艦体に向かって飛ぶ甲冑群。

「古代、艦長拝命、承った」

次々に艦体に取り憑く機動甲冑。

「逃げ場のない、解決しようのないことなら背負っていくしかない。
 俺も、お前も」

この台詞、聞く人の年齢によってかなり受け止め方が異なるのでは。
旧作当時、かつての10代だった少年少女たちは
21世紀の現在、50代の熟年世代に突入しているだろう。
誰しも、今までの人生で「背負ってきたもの」はあったはず。
いや、いまこの瞬間だって「背負い続けている人」もいるだろう。

 かつて職場の先輩に言われた言葉がある。
 「嫌なこと、辛いことほど、向き合わなければいけない。
  逃げ廻るより、向き合った方が楽になる」
 なかなかその通りには実行できないが、今でも思い出す言葉だ。

そんなオジサンの感傷を吹き飛ばすように(笑)、
機動甲冑群が一斉にフルブースト。

「全員で撃つ! 全員で、背負う」

波動砲を使うことが罪ならば、
それはヤマトのクルー全員が背負うべきもの。
土方もまた、その「全員」の中のひとり。もう部外者ではいられない。
だから覚悟を決めた。だから艦長を引き受けた。

■戦の果て

「不合理な感情。人であるが故に。ゴーランド、私は・・・」
「ヤマトの足は完全に止まった。ノル、よく見ておけ。
 これが戦の果てだ。始末しろ!」

個々でノルの言う「私は」のあとにはどんな言葉が続いたのか。
それを知ることは永遠にできなくなった。

ミサイル艦隊は残弾すべて発射か。雨あられと降り注いでいく。

雪「ミサイル多数、接近!」  土方「構うな!」 古代「照準固定!」 
そして南部がカウントダウン。「発射5秒前、4、3、2、1」
「発射あ!」

波動砲の光芒に呑まれていくゴーランド艦隊
閃光を見たゴーランドはとっさに振り返り、ノルを抱きしめる。

「すまぬ、ノル」
「いいのです・・・ いいのです」

最初の抱擁が最後になってしまったか・・・
2199でのシュルツにも泣かされたが、
まさかゴーランドにも泣かされるとは。
トシをとると、こういうシチュエーションにてきめんに弱くなる。

そしてBGM「碧水晶」がいい仕事をする。

古代の心に響くのは

「約束してください。私たちのような愚行を繰り返さないと」
「お約束します」

古代の頬を涙が伝う。この涙が意味するものは何か。
約束を守れなかったことへの罪悪感か。
戦場とはいえ、自らの手で命を奪った相手への贖罪か。
自分を支えてくれた仲間への感謝もあっただろうが・・・

■古代、戦術長へ復帰

「土方艦長、戦術長より意見具申。
 岩盤にはまだガトランティスの拠点が存在するはずです。
 作戦を続行すべきと考えます」
「いいだろう。空間騎兵と協力し、波動掘削弾の
 新たな輸送計計画を立案せよ」

古代が見上げた先にある沖田のレリーフは何を語るのか。

■沖田の声

波動砲のトリガーを握る古代に聞こえた沖田の声。
「指揮官としての覚悟を!」
これは7話で古代が叫んだ台詞
「覚悟って何なんですか!」に対する答えだろう。

そしてこれは沖田が語りかけてきたのではなく、
古代の心から出てきたのだと思う。

7話の時点で、おそらく古代には分かっていた。
「覚悟」の意味するものを。
沖田に代わってヤマトの指揮を執るのならば、
当然背負わなければならないものだから。

分かっていても、あえて目を背けていたのだろう。
そしてこの13話で、キーマンに、そしてクルーたちに支えられながら
逃げずに直視することを決めたのだろう。

12話で、ガトランティスの実態を知ったことも大きかったかも知れない。
彼らの擁する途轍もない武力、そして本拠地である彗星のコアの規模。
こんな途方もない連中を相手にしなければならないのか、と。

■波動砲問題

「2199」からの置き土産としての波動砲問題もこれで一段落だろう。
物語の折り返し点である13話まで引っ張るとは意外ではあったけど、
それだけじっくりと描いてきたことになる。

うじうじしてないでさっさと撃てよ、って意見の人もいるだろうが
節操なくバカスカ撃ちまくって「すかっと爽快」なんて展開になるのも
違うだろうと思う。
(そういうヤマトが観たい、って人も一定数いるのだろうが)

そもそも大量破壊兵器であり、その気になれば
一挙に多数の命を奪うことができる兵器なのだから。

波動砲については、これ以降も安易に使うことなく、
慎重に扱っていって欲しいと願ってる。

それに、波動砲を多用すれば、そのありがたみというか
"決定力" 感が薄れ、あっという間に破壊力のインフレを
引き起こしてしまうだろうから、作劇上もマイナスだろう。

 「復活編」の6連発(!)できる "トランジッション波動砲" なんて
 その最たるものだった。

■沖田と土方

過去の記事で書いたことだが、
「2199」での古代は主役ではなかった。
主役はあくまで沖田であり、古代は脇役筆頭。
そのせいか「2199」本編での古代の扱いは
お世辞にも良いとは言えなかった。
しかしそれは裏を返せば古代というキャラクターには
まだまだ "伸びしろ" があるということ。

だから「星巡る方舟」で実質的な主役を務めた彼を見て、
これで「2199」は真に完結したなあって思ったものだ。
1年間の航海を通じて沖田は古代を "育てて" きたわけだ。

しかし沖田が死亡したことにより、
古代の成長もそこでストップしてしまっていたのかも知れない。
スターシャと沖田の交わした約束による縛りもあっただろう。

「2202」での土方は、沖田から古代の教育を引き継いでるようだ。
直接間接に関わらず、古代の成長を促し続けてきた。

今回、土方はヤマトの艦長を引き受けたが、
最後までヤマトに留まるかどうかはまだ分からない。
古代の成長によりヤマトの指揮を任せるに足ると判断したなら、
ヤマトを下りて他のフネ(たぶんアンドロメダ級)の艦長に
なってしまうかも知れない。あるいは艦隊指揮官に。
そうなると一気に死亡フラグが立ってしまうなあ・・・

■手で押すんだよ

機動甲冑がヤマトの船体を押すシーン。
某機動戦士映画のシーンを思い浮かべた人もいるだろう。
でも、絵面が似ているだけで状況も目的も違うからね。
それに、宇宙にあるものを "手で押す" のなら、
ヤマト第1作のデスラー機雷が元祖だぜ。

11話でのデスラーの「眼で探すのだよ」と並んで
旧作オマージュの台詞か。
こういうアナクロなところがまたいいんだなあ。

■ガトランティスの戦い方

第四章まで観てきて思うのだが、ガトランティスには基本的に
「戦略」とか「作戦」という概念がないのではないか。
なぜなら必要ないから。圧倒的な物量を誇るが故に。

戦略とか作戦というものは、彼我戦力がほぼ互角だったり、
寡兵を持って大軍に当たる場合には必須となるものだろう。

あの大戦艦の数から見るに、ガトランティスは
無限に近い生産能力を持っていそうだ。
戦争において必勝の策とは、究極的には敵より多くの戦力を用意する、
これに尽きるだろう。
どんなに優秀で精強な敵であっても、その数倍の戦力をぶち当てていけば
いつかは必ず負ける。永遠に勝ち続けることなどできないのだから。

被害は大きいかも知れないが、いつか必ず相手を滅ぼす、
そういう意味では100%の成功率を誇るシステムだ。
まさに古代アケーリアス人が残した "安全装置" にふさわしい。

それに加えて、諜報兵の存在がある。
滅ぼす対象のヒューマノイドの間に予め諜報兵を送り込んでおいて
情報収集も怠りない。ヤマトのように敵の中枢部に送り込めれば
敵の作戦まで分かってしまうんだから。
そんな相手を倒すのは赤子の手をひねるより簡単だろう。

そんな戦いを続けていれば、
戦略や作戦を研究する必要なんて全くないだろう。

そして、優れた敵がいたならば奴隷にして、その科学力を利用して
より強い武器を手にすることもできる。完璧だ。

そう考えると、ひたすら物量で磨り潰すというのは
「2202」におけるガトランティスの出自と、
彼らが持つ生産力を勘案すればもっともな戦い方だとも思う。

ただ、それが絵的に面白いかどうかはまた別なのだよなあ。
そのへんの見せ方は工夫がいりそうだが。

■旧作でのガトランティス

ここまで書いてきてふと思い出したのだけど、
この「2202」ガトランティスの戦い方は程度の差はあれ、
40年前の「さらば」を踏襲してるように思う。

前衛艦隊 → 彗星ガス体 → 都市帝国 → 超巨大戦艦

旧ガトランティスにも作戦なんてものはない。
倒しても倒してもきりがなく、
物量に頼って相手の疲弊を待つという点では、やってることは同じ。
「2202」ではそれをスケールアップしているわけだ。

■優先順位?

ヤマト宇宙では、多数の地球人型ヒューマノイドが文明を築いていそうだ。
ガトランティスはそれらすべてを刈り取ろうとしているわけだが、
行き当たりばったりに滅ぼすのではなく、
そこには「優先順位」がありそうに思う。

ネットで散見される
「イスカンダルが波動砲を以て覇権国家になった」のが、
ガトランティスによって滅ぼされた原因になったという説。

イスカンダルの波動砲がガトランティスに目をつけられる理由になった、
というものだが、これには一理ありそうに思う。

波動砲搭載艦が1隻あれば、
その数千から数万倍もの敵を一挙に葬ることができるわけで、
ガトランティスの「数の論理」に対抗できるわけだから。

圧倒的戦力比をひっくり返す可能性を持つ波動砲。
それらを所有するヒューマノイドに対して、
刈り取る優先順位が繰り上がったとも考えられる。

ならば、地球がガトランティスにとって
"辺境の弱小国家" から "優先的に殲滅すべき敵" へと "昇格" したのは
まさに「2202」第1話で拡散波動砲を使用した時だったかも知れない。
芹沢の命令は、地球へのガトランティス侵攻を
決定づけたのかも知れないのだ。

後半のどこかの章で「波動砲を持ったが故にガトランティスが襲来した」
なんてことになったら、芹沢はじめ波動砲艦隊構想を推進した人たちは
どんな顔をするのだろう。

■最後にちょっとしたいちゃもんを

ヤマトが波動砲発射態勢に移行したあと、
ヤマトの全景を後方から捉えたシーンがあるんだが
メインエンジンがしっかり噴射してるんだよねえ。

波動砲発射時って、波動エンジンのエネルギーは
すべて波動砲に回ってしまうから噴射してるのはおかしいはず。

単なる作画ミスなのか、それとも分かってやってるのか。
まあ、噴射してる方が絵面が良さそうだから(笑)後者なのかも。


(つづく)

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