SSブログ

顔のない肖像画 [読書・ミステリ]


顔のない肖像画 (実業之日本社文庫)

顔のない肖像画 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 連城三紀彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/08/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

作者は2013年に逝去されたが、最近になって再刊が相次いでいる。
本書もその一つ。初刊は1993年である。


「瀆(けが)された目」
入院中の築田静子は、病室で医師・村木にレイプされたと訴え出た。
村木は冤罪を主張するが、静子の妹・雪子は姉を信じて動き出す。
関係者の証言を連ねるかたちで進んでいき、
ラストでは意外な陰謀が明らかに。

「美しい針」
カウンセラーの "私" は、36歳の女性患者から、
彼女が12歳の時に受けた性的体験を聞き出すが・・・
いささかエロチックな展開で、いったいどうなるんだろうと思ったが
ラストでは思いっきり背負い投げを食らう(笑)

「路上の闇」
深夜、広告会社で部長職にある山岸は帰宅のためにタクシーを拾う。
そこでカーラジオから流れてきたのは
複数のタクシーを襲った連続強盗犯が逃走中、というニュース。
折しも山岸は愛人と別れ話の修羅場を終えたばかり。
手首に怪我をしてコートの下は血だらけだった。
そしてどうやらタクシーの運転手は、
山岸のことを強盗と勘違いしているらしい・・・
ブラックなコメディの雰囲気で、最後のオチまでコントみたいだ。

「ぼくを見つけて」
その日警視庁にかかってきた電話は、
小学生くらいの男の子の声で「イシグロケンイチ」と名乗る。
そして「ボクはユーカイされている」と続けるのだった。
男の子が告げた電話番号は、医師・石黒修平の自宅のもの。
彼の一人息子・健一は9年前に誘拐され、死体で発見されていた・・・
うーん、確かにこれも誘拐には違いない。

「夜のもうひとつの顔」
平田雪絵が経営する画廊で働く葉子は、
雪絵の夫・紳作と不倫関係にある。
雪絵が伊豆に出かけた夜、紳作から呼び出された葉子は
突然別れ話を切り出され、思わず彼を殺してしまう。
自宅へ帰り着いた葉子のもとへ、帰宅した雪絵から
「家に夫の死体がある」との連絡が入り、
葉子は再び現場へ戻ることになるが・・・
死体を前にして、自分から容疑をそらすために
なんとか雪絵を誘導しようとする葉子。
この二人の女の対決が本編の読みどころなんだが・・・女って恐い(笑)。
しかしストーリーは二転三転、ラストはウルトラCみたいな離れ業。

「孤独な関係」
アラサーOLの野木冴子は、ある日遊園地で
上司の白井部長の一家と出会う。
そこで懇意となった白井の妻から、冴子はある頼み事をされる。
夫の浮気相手が、冴子の職場にいるらしい。
冴子以外の6人の女性職員の中から
浮気相手を見つけてほしいのだという・・・
ラストで明らかになる "愛人" の正体は・・・気持ちは分かるなあ。
ちょっとした度胸と金があれば・・・って私も思わなくもない(笑)。
ちなみに冴子自身が愛人だった、ってオチではないので年のタメ。

「顔のない肖像画」
美大生・旗野康彦は画家・荻生仙太郎の未亡人からある依頼をされる。
近々、荻生の絵のコレクター・弥沢俊輔が、
所蔵するコレクション32点を一斉に競売にかける。
康彦にそのオークションに参加し、
ある作品を競り落として欲しいというのだ。
弥沢は萩生の前妻の父親で、ある理由から萩生を憎んでおり、
萩生の遺族は競売に参加させないのだという。
依頼を受けてオークションに望んだ康彦だが、
次々に競り落とされる様子を見ているうちにある疑問を抱き始める・・・
終盤で物語がひっくり返る構成は見事だと思うけど
そこで明らかになる萩生の "絶筆" となった作品は・・・
ちょいと捻りすぎな感がするなあ。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ: