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鍵のかかった部屋 [読書・ミステリ]


鍵のかかった部屋 (角川文庫)

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/04/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

防犯コンサルタント・榎本径(けい)と
弁護士の青砥(あおと)純子のコンビが密室事件に挑むシリーズ。
本書は短編4作を収録している。

「佇む男」
葬儀会社の社長・大石が奥多摩の山荘で死んでいるのが発見される。
死体のあった部屋も、玄関も勝手口も窓もすべて施錠された密室状態。
しかも死体は部屋のドアの前に座るような体勢で位置していて、
ドアからの出入りは不可能。さらに死体の背後には白い幕が張られ、
テーブルには自筆の遺書が置かれていた。
しかし自殺とは思えない司法書士の日下部は、
青砥と榎本に調査を依頼するが・・・
本作の中ではいちばん実現できそうなトリックかな。
オーソドックスと言ってはヘンだが、本作ではいちばん
密室トリックと犯人指摘のロジックがうまくつながった作品かと思う

「鍵のかかった部屋」
窃盗で服役していた会田は、5年ぶりに
姉の再婚相手・高澤と姉の遺児である大樹と美樹のもとを訪れる。
しかしその日、引きこもり状態だった大樹が自室で死亡する。
部屋は内側から目張りされ、中で練炭が炊かれていた・・・
すごく理詰めで構成された密室トリックなんだけど
普通の家ではムリっぽい気がするんだよなあ。
それよりは、自らも更生しようとあがきながらも、
甥姪のことを気遣う会田くんがいい人過ぎて泣ける。

「歪んだ箱」
高校教師・杉崎は結婚を控えており、マイホームを建てた。
しかし頼んだ工務店の社長・竹本は悪徳業者だった。
手抜き工事の結果、床は傾き天井からは雨漏り、ドアは閉まらない。
無料での補修を断り、逆に脅迫してくる竹本を杉崎は殺してしまう。
そしてその死体は、杉崎の新築の家のリビングで発見されるが
そこは建物の歪みのために出入り不可能な部屋になっていた。
いやあこのトリックは面白すぎる。
実際の犯行の様子を想像してみると立派なバカミスなんだが
そういうネタでも堂々と書き切ってしまうところがスゴいんだろうな。

「密室劇場」
アンソロジーで既読。
劇団『土性骨』の上演中、舞台横の楽屋で殺人事件が起こる。
現場の出入り口はロビーの売店側と舞台側の2カ所のみ。
売店側の出口は衆人環視の中にあり、出入りした者は皆無。
もう片方の舞台では劇が上演中だった・・・
この短編だけ作者が違うんじゃないかってくらい雰囲気が違う。
ふざけた芸名ばかりのアングラ劇団を舞台にした
ドタバタユーモアミステリになってる。
そして、このトリックは盲点だなあ。
でも、案外成功してしまうんじゃないかって思わせる。
そういう風に書けるところがうまいんだろうな。


弁護士って賢い人のはずなんだが、本書で登場する青砥純子さんは
密室についてのトンチンカンな謎解きを披露する "ボケ" 担当。
榎本がそこに冷静なツッコミを入れるというのがお約束の展開。

本シリーズは大野智&戸田恵梨香でドラマ化されたみたいだね。
戸田恵梨香の青砥純子は私のイメージに近いけど
クールな榎本役に大野君はちょっと合わないかなあ・・・

榎本は本職は泥棒じゃないかって疑いまである曲者キャラだからねえ。
大野君ご本人には恨みはないんだが(タレントとしては好きなんだよ)。
ああ、「密室劇場」に登場する榎本だけは、大野君でもOKだと思う。

wikiによるとドラマ自体はけっこう評判が良かったみたい。
原作が溜まれば、またドラマ化されるのかな?

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