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いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記 [読書・ミステリ]


いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)

いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/08/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・滝本望は中学3年生。両親の仕事の都合で、
神楽坂で祖母の津多代と二人暮らしをしている。
津多代はみんなから "お蔦さん" と呼ばれている。
これは彼女の芸名で、祖父と結婚するまでは
神楽坂で芸者をしていたのだ。
粋で鯔背なお蔦さんだが、ときおり鋭い洞察力を示す。

神楽坂の街で起こる様々な "事件" をお蔦さんが解決していく
<お蔦さんの神楽坂日記>シリーズの第2弾。
日常の謎系の短編集として始まったはずのシリーズなんだが、
2巻目にして長編、かついささか日常とは離れた不穏な事件が勃発する。


その日、料理が得意な望は幼なじみの木下洋平、同級生の森彰彦、
後輩の金森有斗(ゆうと)を招いて夕食を振る舞った。
しかしその夜、有斗を残して彼の家族3人(両親と姉)が失踪する。
しかも家の中には大きな血溜まりまで。

有斗の父は45歳にして住宅会社の取締役についており
年収は1000万を超えているという。
しかし息子の有斗はサッカーのクラブチームにも入れず、
所有していた自家用車も売却するなど
なぜか経済的には困窮していたらしい。さらに親類とも絶縁状態。

やがてDNA鑑定の結果から血痕は有斗一家のものではないことが判明、
失踪事件には家族以外の何者かが関わっていたことに。

一時的に有斗を預かることになったお蔦さんだが、
望と有斗の前にやくざ者のような男たちが現れて・・・


有斗と彼の一家は様々な逆風にさらされる。
叔母夫婦は有斗を預かることを拒否し、
マスコミはスキャンダラスに報道し、
学友たちは心ない噂を口にする。

一方、お蔦さんをはじめとするご近所ご町内の人々は
団結して有斗を守っていく。

一家失踪の謎を追うミステリなのだが、
事件に関わった人々の人間模様もまた大きな要素を占めている。

事件の背後には、有斗の父親の過去が絡んでいて、
終盤で明らかになるそれは周囲、とくに有斗にとっては
大きな衝撃となるのだけど、それでもなお
前向きで生きていこうとする彼の姿に救われる。


全体的に重苦しい雰囲気の展開が続くのだけど、
その中にあって一服の清涼剤とも言えるのが
望のガールフレンド、石井楓ちゃん。
落ち込む有斗を励ますために、望といっしょに
三人デートを企画するなんて、いい娘さんじゃないか。

残念ながら登場シーンが少ないんだが、
中学3年生で高校受験を控えてるのでは致し方ないね。
ちなみに望たちは中高一貫校に通っているので受験がない
(だから事件に関わっていられる)。

望は楓ちゃんにべた惚れで、彼女の方も満更でもなさそうな様子なので、
このカップルの先行きも楽しみだ。

おそらく次巻では二人とも高校生になるので、
揃って活躍するシーンも出てくるのではないかな。

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