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小鳥を愛した容疑者 [読書・ミステリ]


小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/11/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

須藤友三(ともぞう)は警視庁捜査一課所属の警部補だったが
殺人事件の捜査中、銃撃を受け頭部を負傷してしまう。
一命は取りとめたものの医師から現場復帰を止められる。

その須藤に与えられたポストは総務部総務課動植物管理係。
飼い主(容疑者)が逮捕されたり逃走したりして、
とり残されてしまったペットを保護する仕事である。
相棒となったのは新米巡査で動物オタクの薄圭子(うすき・けいこ)。

このコンビが、現場に残されたペットから
意外な真実を引き出して事件を解決していく、
ドラマ化もされた<警視庁いきもの係>シリーズの第1巻。


「小鳥を愛した容疑者」
隅田川で見つかった絞殺死体。
操作線上に浮かんだのはウェブデザイナーの八木。
しかし八木はスピード違反で白バイに追われて事故を起こし、
意識不明の重体となっていた。
八木が住むマンションに向かった須藤と薄が見たのは、
100羽にもおよぶジュウシマツだった。
鳥たちの世話をしていた薄は、須藤に
「八木は犯人です」と告げるのだった・・・

「ヘビを愛した容疑者」
千葉の海岸で死体で見つかった男・山脇。
死因は付近の崖からの転落と思われた。
しかし、死亡推定日の2日後に、彼のマンションへ
山脇本人が入っていったとの目撃情報があった。
山脇のマンションへ向かった須藤と薄が出会ったのは2匹のヘビ。
残された遺品から、山脇には趣味(ヘビの飼育)を同じくする
"ヘビ友" (笑)がいたはずだと薄は言い出すが・・・
どうもヘビのイメージが強烈すぎて忘れてしまいそうになるが
ラスト近くの台詞一つで、これが本格ミステリだと言うことを
思い出させてくれる。ちなみに、
作中でヘビに与える飼育用のエサのことが出てくるんだが・・・
いやあ、私は "この手" の人とは永遠にわかりあえないと思う(笑)。

「カメを愛した容疑者」
弁護士・杉浦次郎が失踪する。
しかし次郎の兄・一男は真剣に取り合おうとしない。
一男の態度から誘拐を疑った関係者が警察へ相談してきた。
須藤と薄は、次郎の残したカメの世話をするという名目で
次郎邸を訪れる。邸内で発見したのは、
生きている巨大なケヅメリクガメ1匹と、
壁に掛かったケヅメリクガメの甲羅。
どうやら杉浦家では30年ほど前に、もう1匹カメを飼っていたらしい。
残されたカメの写真を見ているうちに、
薄は次郎失踪の謎が解けたと言い出す・・・
カメ愛に溺れて馬脚を現す犯人とか、どんだけペット好きなんだか。

「フクロウを愛した容疑者」
会計士・藤田の隣家の住人・渋谷が自宅書斎で撲殺される。
容疑者筆頭となった藤田は、
飼っているフクロウのことで渋谷と諍いがあった。
しかし犯行現場で見つかった鳥の羽の写真を見て
薄はそれが藤田の飼っているモリフクロウのものではなく、
ワシミミズクのものだと気づく・・・


薄のもつ知識はまさに底なしで、生物学的なものはもちろん、
ペットショップや動物病院の所在まで把握していて
それを糸口に事件解明に向けて突っ走っていく。
手綱を握る役の須藤は大変だ。
しかしその彼女の奮闘が事件に隠された意外な真相を突き止める。

とにかく動物を目の前にするとギアが切り替わってしまって
素っ頓狂な振る舞いをおっぱじめる面白いお嬢さんに
常識人のオジサン警部補が振り回されていく、
という楽しいユーモアミステリ。映像化したくなるのも分かるかな。

残念ながらドラマは未見なのだが、wikiによると
薄圭子は "奇跡の一枚" の橋本環奈さんが演じていたそうな。
当時環奈さんは18歳だったんだが、薄圭子は
実年齢(原作では26歳、ドラマ版では22歳)よりも
若く見えるという設定なので、まあいいかな。
制服姿の彼女が街を歩くとみんな「コスプレ?」って聞いてくるのが
お約束の展開なので、ある意味ピッタリ(笑)。
もっとも、実際のドラマの視聴率は今ひとつだったみたいだけど(笑)。

このシリーズはいまのところ第4巻まで刊行されている。
文庫されている分は手元にあるので近々読む予定。 

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