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ドミノ in 上海 [読書・その他]


ドミノin上海 (角川文庫)

ドミノin上海 (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/02/24

評価:★★★☆


 高価な "お宝" が上海へと密輸されたが、ある手違いから "お宝" は別の場所に届いてしまい、地下組織の一味は必死にその行方を追う。
 それに東京から来たOL、寿司デリバリーを営む日本人夫婦、映画撮影にアメリカからから訪れた制作陣一行、上海警察署長たちが巻き込まれ、さらには動物園を脱走したパンダまでが "参戦" して、"お宝" をめぐる大騒動が上海の夜を駆け巡る・・・


 『蝙蝠』(こうもり)というコードネームで呼ばれる "お宝" が、闇ルートを通じて上海に持ち込まれた。輸入される動物の胃の中に隠すといういつもの方法だったが、今回は輸送中に予想外の "手入れ" が入り、とっさに近くの檻の中にいたイグアナに飲ませてしまった。

 そのイグアナは、アメリカ人映画監督のペットで、上海での映画撮影に同行させようとしていたもの。彼の宿泊していたホテル・青龍飯店に届けられたが、檻から逃げ出して厨房に入り込み、それを新たな食材(笑)と勘違いしたコックによって "調理" されてしまったのだった(おいおい)・・・
 中国の人は、足が四つあればテーブル以外は何でも食べるっていう話を聞くけど、ホントのところはどうなんだろう。

 地下組織は『蝙蝠』の行方を血眼になって探し始めるが、その動向を香港警察の潜入捜査官たちも追っていた。

 そして "お宝" のことなど全く知らない一般人たちも、その騒ぎに巻き込まれていく。

 東京からやってきたOL二人組が訪ねたのは、上海で寿司デリバリーを営む日本人夫婦。二人の店は迅速な配達がウリで、スピード制限など無視してオートバイでかっとぶ。それを目の敵にするのが、マスコミ受けを気にする上海警察の新署長だ。

 最愛のペットを喪い、意気消沈した監督にやきもきする助監督、プロデューサー、配給会社の日本人スタッフたち。
 そこに現れた風水師は、なんとダリオの霊が "見える" ようだ。と思ったら、日本人スタッフの女性は神社の宮司の娘で、こちらも "見える" みたいだ(なんと!)。

 青龍飯店の最上階ギャラリーでは美術品の展覧会が催され、そこでは商談も交わされる。今回の目玉作品を出品する現代美術家は、実は借金で首が回らない。彼はこの展覧会に於いて、ある "企み" を実行しようとしていた。

 そして人間以外も "参戦" する。上海動物公園のジャイアントパンダ・厳厳(グヮングヮン)。過去にも逃げ出したことがあり、飼育員から目をつけられているが、本人(?)は再びの脱走を狙って虎視眈々と機会をうかがっており、ついに決行の時を迎える。
 厳厳のパートは本人(?)のモノローグの形で綴られる。このパンダは実に明晰な頭脳を持っており、自分の置かれた状況の把握も完璧で、そこから綿密な脱走計画を組み立てていく。
 このあたり、パンダを人間に置き換えれば、そのまんま囚人が脱獄を狙う話に読み替えられるのが笑える。


 とまあいろいろなキャラを紹介してきたが、ひとたび本を開くと、彼ら彼女らのストーリーが同時進行的に、あるときは単独で、あるときは他のストーリーラインに絡みあい、ドタバタ騒ぎが始まっていく。それはどんどんスケールアップしていき、事態は混迷の度を深めていく・・・


 本書の冒頭には「登場人物よりひと言」という、各キャラの紹介ページがあるのだが、そこに挙がっているだけで25人+3匹(笑)もいる。
 あまりに多すぎて覚えきれない人は、この紹介ページは重宝するだろう(私がそうでした)。


 2001年刊行の『ドミノ』の、いわば続編なのだけど、ストーリーは本書のみで独立している。前作と共通する登場人物もいるけど、前作を知らなければ困ることは何もない。
 何より、前作を読んでいたけど、内容をさっぱり忘れていた私でも充分楽しめたのだから、間違いない(おいおい)。



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