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真珠塔・獣人魔島 [読書・ミステリ]


真珠塔・獣人魔島 (角川文庫)

真珠塔・獣人魔島 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/11/22
  • メディア: Kindle版



評価:★★☆


横溝正史・復刊シリーズ、ジュブナイルものの中編をタイトル通り2作収録。


「真珠塔」

 鬼火のような光を放つコウモリとともに現れる怪人・"金コウモリ" の噂が広まっていた。ドクロの仮面をつけ、全身を黒装束で包み、胸にはコウモリの印が縫い付けられているという。ちにみに文庫表紙のイラストがそれ。「黄金バット」ではないので、念のタメ(笑)。

 主人公・御子柴進(みこしば・すすむ)は、この春に中学校を卒業し、大手新聞である新日報社で給仕(下働き/雑用係)として働き始めた。

 仕事からの帰り、神宮外苑あたりを歩いていた進の傍らを、2台の自動車が猛スピードで走り去り、その直後に銃声が。駆けつけた進が見つけたのは、側溝にタイヤをとられて止まった車。そしてその中には、人気ミュージカル俳優・丹羽百合子(にわ・ゆりこ)の射殺死体があった。さらに、紙製の人形が十数体。

 人形自体が暗号になっている、まさに「踊る人形」なのだが、これ自体はあっさりと解ける。人形が両手に旗を持ってることから、手旗信号だと分かってしまうのだ。

 暗号に導かれて、進と新日報社の記者・三津木俊助は、真珠王・柚木(ゆのき)の主催する夜会へと向かう。柚木はそこで "真珠塔" を披露することになっていた。無数の真珠をちりばめた、高さ1mにもなるその塔は、時価にして数十億円の価値があるという。

 舞台は柚木家へ移り、当主の柚木老人、その娘で15歳の弥生、柚木が帰依するキリスト教会の神父ニコラなどメインキャラクターが登場して物語が動き始める。

 複数の怪人・金コウモリが登場したり(しかも仲間ではないらしい)、また別の暗号が登場したりと賑やかに進行する。本物の真珠塔の隠し場所を巡って、進・俊助・弥生たちの波瀾万丈の物語が綴られていく。


「獣人魔島」

 死刑囚・梶原一彦(かじわら・かずひこ)が脱走した。彼は自分に死刑判決を下した三芳隆吉(みよし・りゅうきち)判事を逆恨みし、復讐を企んでいるらしい。

 三芳判事の家には警官の護衛がつき、新日報社の給仕・御子柴進が泊まり込んでいた。13歳になる娘・由紀子と進が幼馴染みであったためである。

 地下道伝いに三芳家への侵入を果たした梶原だったが、進の機転によって撃退されてしまう。三芳判事の近所には、世界的な医学博士・鬼頭の家があった。梶原はそこに逃げ込むが、警察はそれ以後の足取りを見失ってしまう。

 その数日後、鬼頭と助手の里見が大きなトランクを抱えて出かける。鬼頭の屋敷を見張っていた進はそのまま2人を尾行し、瀬戸内海にある骸骨島という小島に辿り着く。

 そこは、かつて周辺の島々の墓場になっていたらしく、夥しい白骨が埋まっているという。さらに進は、島の絶壁の上に立つ、ゴリラのような謎の怪物を目撃する。
 島に上陸した進は、そこが悪人たちの巣窟となっていることを知る。彼らの話では、近いうちに新たなボスがやってくるらしい。それは、ゴリラの身体に梶原一彦の脳を移植した "怪物" なのだと・・・

 おいおい、まんま『怪獣男爵』じゃないか、ついに横溝正史もネタが尽きたのか・・・って思って読んでいたら、ラストでは意外な展開が。
 ネタかぶりなのを承知で、というか読者が『怪獣-』を読んでいる(であろう)ことを前提にして書かれたものだろう。さすがは巨匠。


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