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ソロモンの偽証 第2部 決意 [読書・ミステリ]

ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫




ソロモンの偽証: 第II部 決意 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫



柏木卓也の転落死により、城東第三中学校は激震に見舞われた。

同級生による "殺人" を証言する "告発状"。
マスコミによる偏向した報道番組の放映。

卓也の死は自殺なのか他殺なのか?
不良3人組のリーダー、大出俊次は殺人者なのか?

真実の追究はおろか、事態の収束のみを目指して動く教師たち。
そして、生徒たちに向けられる好奇の目、誹謗、中傷。


主人公・藤野涼子は決意する。
このまま、何もわからないままでいることには耐えられない。
自分たちの手で卓也の死の真実をつかむのだ。

そのために彼女が選んだ方法は、
"告発状" で名指しされた "犯人"・大出俊次を "被告人" として、
「学校内裁判」を開くこと。
目的は、裁判を通じて卓也の死の真相に迫ること。

夏休みを控えたクラス集会の日。
涼子は自分の決意を級友たちに語りだす・・・


事態の進展についていけずに右往左往するばかりの大人たち。
事件を自分のために利用しようとする大人たち。
そんな大人たちが大手を振っていた第1部からは打って変わって、
第2部では生徒たちが舞台の中央に躍り出る。

涼子の熱意に導かれるように、
一人、また一人と仲間に加わっていくクラスメートたち。


涼子さんが並外れて聡明な少女なのは、
第1部を読んでればもう十分すぎるほどわかってるんだけど、
第2部の開巻早々、読者はさらにびっくりさせられる。
彼女はまさに、"超中学生級" のスーパーガールだ。

裁判の開廷には学校側の了解が必要だが、
事態の沈静化を狙う教職員たちが、すんなりOKを出すはずもない。
この最初の難関を、涼子はどう突破したか。

彼女は、ただ成績がいいだけの優等生ではない。
策も弄するし駆け引きもするし、ある意味腹黒。
涼子は、学校側の "ある失策" を逆手にとって、
(深読みすれば、その失策だって
 彼女の側から仕掛けたようにも思えるが)
見事、学校側に裁判の開催を認めさせてしまう。

開廷期間は8月15日から19日までの5日間、そして判決が20日。

いやはやたいしたものである。
彼女を敵に回して勝てる気がしない。
この学校内での最強キャラであることを存分に証明してみせる。
同時に、読者は確信するだろう。
「彼女なら、できる!」と。


しかし、他のメンバーもどっこい負けてない。
ふたを開けてみると、この城東第三中学は逸材ぞろいだ。

学年トップの成績で、涼子とともにクラス委員を務める井上康夫。
道理が合わないことには、教師相手であっても
とことん理詰めで論破してしまう一徹さを持ち、
自他共に認めるままに "判事" の座に納まる。

 この文章を書いている今、第3部の冒頭部分を読んでいるんだが
 実に堂々とした "裁判官" ぶりで、彼もまた "超中学生級" だ。

"検事" を務めることになった涼子を助ける "検察事務官" 二人組。
佐々木吾郎は気配りとフォローの達人で、
重苦しい雰囲気を吹き飛ばす見事なコメディリリーフぶり。
もう一人の萩尾一美は、ミーハーだが事務処理能力は抜群。

バスケット部主将・竹田和利と将棋部主将・小山田修の
絶妙に息が合った凸凹コンビが総勢9名の陪審員団を率い、
"空手家" の山崎晋吾が "廷吏" を務める。

最後まで決まらなかった "弁護人" も、
いつのまにかクラス集会に紛れ込んでいた他校生が名乗りを挙げる。

大学の付属中に通う、神原和彦というその生徒は、
柏木卓也と小学校時代の友人だったという。

 卓也の死について何らかの事情を
 知っていそうな素振りもあるのだが・・・
 彼の抱えている "秘密" も、
 第3部の大きなキーポイントになるのだろう。

物語が進むにつれ、和彦もまた
涼子に匹敵する知力と胆力の持ち主であることがわかってくる。
ここにも "超中学生級" が一人。

 第3部では、"検事" 役の涼子の前に立ちはだかる
 "最強の弁護人" となるのだろう。

卓也の死体の第一発見者であり、第1部での過酷な状況から
涼子たちに救い出された野田健一もまた、
和彦の助手として裁判に加わることになる。


第2部もまた上下巻で1000ページを超す大ボリューム。
しかし、これが少しも長いと感じられない。
どんなエピソードも、この長大な物語に必要な要素だと思える。
それくらい、徹底して書き込まれていている。


生徒たちを応援しようとする大人も現れる。

事件の責任をとって辞職した津崎前校長は
"告発状" がマスコミに流れた経緯を解明するため、
旧担任の森内と共に探偵事務所長の河野に調査を依頼する。
教職員の中でただ一人、涼子たちの行動を支持する北尾教諭は、
裁判の "顧問" 役を買って出る。
(裁判はあくまで、生徒有志による "課外活動" という名目なのだ。)

大出家の顧問弁護士・風見や
涼子の父である捜査一課の刑事・藤野剛なども
表立って協力はしない(できない)けれども
要所要所で生徒たちの支えとなってくれる。


"被告人"・俊次との間に徐々に信頼関係を構築していく和彦たち。
一方、"告発状" の差出人が、涼子へ接触を図ってくる。

物語は、検事側の涼子たちと弁護人側の和彦たちが
それぞれ関係者を訪ねて証言を集め、裁判の準備を重ねていく様子が
交互に描かれていく。

実は涼子にとって、裁判の勝ち負けは問題ではない。
(それは、この法廷に関わるすべての生徒の共通認識なのだが)
目的はただ一つ、級友だった少年の死の真実。
それを突き止めるための法廷が、まもなく幕を開ける。

開廷に向けての盛り上がりも最高潮。
いよいよ第3部へ突入である。


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