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寮の七日間 青春ミステリーアンソロジー [読書・ミステリ]

寮の七日間 (ポプラ文庫ピュアフル)

寮の七日間 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 加藤 実秋
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2012/01/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「舞台は紅桃寮」
「404号室が『開かずの間』」
「事件の発生から解決までが『七日間』」
っていう3つの共通設定の "縛り" の下に、
4人の作家さんが競作した作品集。

 それぞれ文庫で70ページ弱なので、
 たぶん原稿用紙100枚ってことなんだろうね。


「聖母の掌底突き」(谷原秋桜子)
 両親が借金取りに追われて蒸発してしまった主人公の高校生・佑介。
 行き場が無くなった彼は、入学以来ずっと不登校だった高校の
 学生寮に潜り込むことに成功するが、入った405号室の隣は
 かつて人が死んだとの噂があり、「開かずの間」となっていた。
 折しも夏休みで寮生はみな帰省しており、
 只一人残っていた先輩・奥山は、佑介に「開かずの間」の
 "探検" を持ちかけてくるのだが・・・
 ミステリ的には本書中一番の出来かなぁ。
 「開かずの間」に隠されていた "お宝" の正体には
 思わず苦笑してしまいました。
 それをこのタイトルに持っていくセンスもすごいけど
 作者は女性だったことを思い出して、さらに苦笑。

「桃園のいばら姫」(野村美月)
 美少女・ノエルに憧れて転校してきたヒロイン・雨音(あまね)。
 誰もそばに寄せ付けない孤高の "いばら姫" に、
 なんとか近づこうとするのだが・・・
 うーん、こういうのを "百合っぽい" って言うのですかねえ。
 出てくる生徒さんたちの "百合百合" な言動には
 オジサンはついていけません・・・って思ってたら
 ラストで思いっきり投げ飛ばされてしまいました。

「三月の新入生」(緑川聖司)
 春休みの男子寮に、一週間早くやってきた新入生・ハル。
 しかし彼は、1年前に生徒が転落死を遂げて
 「開かずの間」となっている404号室に
 なぜか異様にこだわりを見せるのだった・・・
 ミステリ的には易しめで、犯人の目星も早めについてしまうけど
 物語としてはいちばん好きだなあ。
 ラストシーンの明るさもすごくいい。

「マジカル・ファミリー・ツアー」(加藤実秋)
 他の作品がみんな学生寮だったんだけど、本作は
 「マスコミ健康保険組合の福利厚生施設『紅桃寮』」と
 設定からして変化球だ。場所も観光地の箱根。
 そこへ高校1年の主人公・大樹の一家が家族旅行で宿泊にやってくる。
 旅の途中で父・直樹の同業者である小川の親子と知り合う。
 しかし、小川家一行は怪しげな二人組に追われていて
 何やらわけありの様子で・・・
 ミステリと言うよりはサスペンスタッチのコメディ。
 カメラマニアの父・直樹、格闘技マニアの母・由美子。
 大食らいの弟・颯太とキャラ立ちも十分。
 小川の娘で中学生の美咲は愛想が悪くて、
 最初は大樹と険悪な雰囲気なんだが、それもだんだん
 物語が進むにつれて変わっていくのもお約束。
 「404号室の『開かずの間』」って設定も「え? これでいいの?」
 本書の4人の作家さんでは(たぶん)一番の売れっ子らしく
 堅実かつ手慣れた、自信たっぷりって感じの作りでしたね。