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人影花 [読書・ミステリ]

人影花 (中公文庫)

人影花 (中公文庫)

  • 作者: 今邑 彩
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/09/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★

作者は昨年(2013年)、病気でご逝去されてたらしい。
ここ数年、新作が出てないような気がしていたので
スランプなのかなあとか思ってたんだけどね。

享年57歳とのこと。私とほぼ同世代と言っていい。
作家としてはまだまだこれからの年齢。
生きていれば、もっともっと多くの作品を産み出していただろうに、
とても残念です。

今邑彩といえばミステリもホラーも書く人だったんだけど
何といっても最高傑作は「金雀枝荘の殺人」だと思う。
綾辻行人の「館シリーズ」と比べても遜色ない、
堂々たる本格ミステリだった。


さて本書は、雑誌などに発表されたまま
単行本に未収録だった作品の中から9編を収録したものだ。
純然たるホラーもあるし、限りなくホラーっぽいミステリもある。

「私に似た人」「鳥の巣」「返してください」
この3編は、何となく途中でオチの予想がついてしまうのだが、
そこに至るまでの経過が充分読ませるので、これでいいんだろう。
作者もそんなに隠そうとはしてないし。

「疵」の意外性は抜群。このラストは、
この手の話を読み慣れた人でも見破るのは難しいだろう。
「人影花」はさすが表題作と言うべきか。椿の花の使い方が実に上手い。
「いつまで」は、話の着地点が最後まで読めなかった。

「神の目」は、本書の中では比較的(あくまで比較的、だが)
明るめの作風。ストーカー被害に悩むヒロインに依頼された
探偵二人の掛け合いが楽しい。

「ペシミスト」は、箸休め的なショート・ストーリー。
「もういいかい・・・」も短いけどしっかり怖い。


これからも旧作の再刊はあるかも知れないけど、
新作はもう出ないのだね。
そう思ったら、いつもよりもじっくりと読んでしまいました。


面白いミステリを(そしてホラーも)、ありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。


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