キャットフード [読書・ミステリ]
評価:★★☆
ミステリとしてはかなりの変化球だ。
あらゆるものに化けられる化け猫・プルート。
彼女(?)は4匹の仲間の化け猫たちと共に、
人間を解体してキャットフードの缶詰にしてしまう工場を
孤島に完成し、手始めに4人の高校生をおびき寄せることに成功する。
一方、高校生たちの一人、狼森(おいのもり)ユキに世話になっている
化け猫・ウィリーは、なんとかユキを助けようと、人間に化けて
4人の中に混じって工場に潜入する。
4人の中に化け猫が混じっていることに気がついたプルートたちは
彼らに手が出せなくなってしまう。
なぜなら、化け猫同士の殺生は禁じられているためだ。
設定はファンタジーのようなメルヘンのような世界だが
展開されるストーリーは殺すか殺されるかというかなり物騒なものだ。
探偵も登場する。
三途川理(さんずのかわ・ことわり)という高校生の探偵が
中盤から登場するのだが、こいつは人間のくせに化け猫に味方し
(なにせプルートの飼い主なのだから・・・)
ウィリーをあぶり出すための策をプルートたちに授けるという
悪役側のボスといってもいいような外道ぶり。
ウィリーはユキたち人間に正体を知られないように、
5匹の化け猫+悪徳探偵を相手に戦わなければならない。
まさに孤立無援、孤軍奮闘を強いられるのだが・・・
本書の読みどころは、
ウィリーvsプルートたちの繰り広げる頭脳戦だろう。
誰がウィリーなのかを探るために罠を仕掛けるプルートたち、
それを見破って正体がばれるのを未然に防ごうとするウィリー。
中盤までは互角にすすむ勝負が、
三途川の参戦によってウィリーは劣勢に陥り、
ラスト近くでは絶体絶命の危機に追い込まれる・・・
"化け猫" とか "人肉工場" とか、かなり意表を突いた設定や舞台装置。
文体や雰囲気もかなり個性的なので、好き嫌いはあるだろう。
実際、私も最初の50ページくらいまでは
読み続けようか止めてしまおうか迷ったし。
化け猫たちの頭脳戦における論理展開はたしかに良くできてるし、
ラストのオチも鮮やかに決まっていると思う。
ただ、「物語を読んでいる」というよりは、
「推理パズルを読んでる」に近い感じではある。
そのへんも好き嫌いが分かれそうだ。
ミステリとしては星3つ、小説としては星2つ。
合わせて均して星2つ半。