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十三回忌 [読書・ミステリ]


十三回忌 (双葉文庫)

十三回忌 (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/07/11
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

静岡の資産家・宇津城家。
大井川上流の山奥に広大な敷地を持ち、
そこに何棟もの屋敷を構えている。

13年前、その当主・恒蔵の妻・律子が不審な死を遂げる。
事故死として処理されたものの、律子の年忌法要のたびに
宇津城家の敷地内で少女が殺されていく。

一周忌では、ハシゴも脚立もない場所で、
4メートルもの高さの樹木のてっぺんに、胴体を串刺しにされて。

三回忌では、被害者は森の木に縛り付けられ、
切断された首がいずこかへ持ち去られて。

七回忌では、唇を切り取られた死体が滝に沈められて。

そして迎えた十三回忌。被害者は侵入不可能な密室の中で、
背中からナイフで刺し貫かれて・・・。


探偵役は、親の遺産で悠々自適の生活を送る青年・海老原浩一。
友人である静岡県警の刑事・笠木と共に、連続殺人事件へ介入していく。


島田荘司氏の後押しでデビューした新人作家さんのようだが、
師匠を彷彿とさせるような大がかりなトリックが
いくつも投入されている。

三回忌の首切断のシーンも、ありきたりかと思いきや
ラストの解明を読むと「え・・・」って絶句してしまうし。

殺人以外にも、
真夏の7月に線路に積もった雪(!)のせいで列車が転覆したり
壁から死者の声が聞こえてきたり。
もちろんラストではきっちり解明されるけど、
サービス精神は非常に旺盛。

ただまあ、一周忌の「死体を樹に刺す」トリックは
さすがにちょいと無理がありそうかなあ・・・
書かれているとおりなら確かに可能そうだが
現場を調べても何があったか分からないほど
日本の警察は無能じゃないだろう・・・とは思う。

でも、そんなことはほとんど気にならないくらいの
力が入った作品なのは間違いない。

細かい欠点を探すより、のびのびと(笑)描かれたトリック群を
素直に楽しむのがこの手のミステリを読むときのお約束だろう。


島田荘司氏は、今まで多くの新人作家を発掘し、送り出してきた。
本書の著者・小島正樹もそういう中の一人とのことだ。
デビューまでの経緯を、巻末エッセーの中で島田氏自らが述べている。

それによると、全くの無名の新人が本を出すことが如何に大変なことか、
島田荘司という "ビッグネーム" の推薦があっても、
いや、推薦があるがゆえに余計な風当たりや軋轢が生じることなどが
こまごまと書いてあって、やっぱり作家デビューするには
何でもいいから "新人賞" と名のつくものを獲るのが
いちばん手っ取り早く、かつ "無難" なのだなあ・・・
なんてことを思った。


新人作家の処女作なんだけど、私はとても楽しんで読ませて頂いた。
特にラストでの○○○には「やられた~!」って思ったし。

いやあ次回作が楽しみですねぇ、っていうか
実はもう文庫化2冊目の「扼殺のロンド」を読み始めてたりする(笑)。


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