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わたしのノーマジーン [読書・ファンタジー]

([は]7-1)わたしのノーマジーン (ポプラ文庫 日本文学)

([は]7-1)わたしのノーマジーン (ポプラ文庫 日本文学)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2013/06/05
  • メディア: 文庫



評価:★★

異常気象、政情不安、経済の混乱・・・
1999年のノストラダムス、2012年のマヤ暦に続く
第三の "終末論" が囁かれ、怪しげな宗教団体がはびこる。
ゆるやかな滅亡へ向かいつつある荒廃した近未来の世界。

車椅子の女性・シズカは、街外れの荒れた一軒家に一人住み、
名職人・桐原の残した革製品の修復で生計を立てていた。

彼女のもとに介護ロボットが届くはずの日に、
現れたのはロボットならぬ赤毛の猿だった。

5~6歳児ほどの知能を持ち、人間の言葉を話し、
自らを「ノーマジーン」と名乗る不思議な猿とシズカとの
奇妙な共同生活が綴られていく。

孤独の中で、外の世界に対して心を閉ざしていたシズカだったが、
ノーマジーンと暮らしているうちに少しずつ変化が生じていく。

やがてお互いをかけがえのないものと感じ始めていた矢先、
一人の侵入者が現れ、ノーマジーンに隠されていた秘密を告げる・・・


ノーマジーンの正体を含め、舞台設定や登場する道具は
SF仕立てなんだが、漂う雰囲気はファンタジーに近い。
それも、かな~りダークな。

滅亡へのカウントダウンを迎えた世界で、
孤独な人間と孤独な猿が、互いの心を寄せ合って生きていく。

これ自体はとても "いいお話" なんだと思うんだが、
どうにも "救い" のない物語のように感じられて、
私はこの手の話は苦手だ。

この二人、というか一人と一匹が暮らしている世界では、
明日の朝を無事に迎えられるかどうかすら定かではない。
この先、世界が良い方向へ向かいそうな兆候も一切無い。

まあ、こういう過酷な状況であるからこそ、
ささやかな "安らぎ" を見いだすことに意味がある、
って事なのかも知れないが・・・

こういう話が好きな人もいる、というのは理解できるけどねぇ。


「機動戦士ガンダム」の監督の富野由悠季氏は、
作品の雰囲気によって、 "白富野" と、 "黒富野" って
言われているらしいが、
初野晴にも "白初野" と "黒初野" がありそうだ。
さしずめ「ハルチカ」が前者で、
「水の時計」とか本書が後者だね。


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