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罪の声 [映画]

11月中旬に映画館にて鑑賞。
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35年前、食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件があった。
食品への毒物混入に始まり、誘拐や身代金要求へとエスカレート、
警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に
謎の犯人グループは忽然と姿を消し、事件は迷宮入り。
日本の犯罪史上初となる劇場型犯罪は日本中を震撼させ、
後に『ギンガ・萬堂事件』と呼ばれることになった。

そして現代。
京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、
ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。
そこに録音されていたのは、幼い頃の俊也自身の声。
それは、あの未解決の大事件で犯人グループが
身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった。

やがて俊也は、既に時効となっているこの未解決事件を追う
大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)と出会い、彼と共に
事件の真相へ、そして犯人グループの正体へと迫っていく・・・

モデルとなったのは、言わずと知れた『グリコ・森永事件』。
50代以上の人なら、リアルタイムで経験しているだろうし
40代の人でも、おぼろげながらでも記憶があるのではないか。

当時、私は20代後半くらいだったので、もちろん憶えている。
この映画のテーマとなった ”脅迫に使用された子どもの声” も、
TVを通して聞き、その声のあまりの幼さに驚愕した記憶がある。

あの子どもたちも、無事に成長していれば今頃は40代のはず。
そこに着目して物語を創り出した原作者の発想は素晴らしいと思う。

映画の中で描かれる犯人グループの正体は、
もちろん作者による創作なのだが、
なかなか説得力があって絵空事に感じさせない。
実際、こんな連中だったんじゃないか、って思わせる。

 本作で描かれる犯人グループのメンバーは皆、
 いわゆる ”団塊の世代”。
 この犯罪には、そういう時代的背景があったという解釈も
 なかなか意表を突くものだった。

しかしながら、そんな企みに否応なく加担させられた
子どもたちの辿った運命は悲惨だ。

終盤、阿久津は首謀者であった人物と接触することに成功する。
首謀者は、自らが起こした事件の ”社会的意義” を語る。
あれは「犯罪」ではなく、「○○」だったのだと。

しかしそれは、事件によって被害を受けた者からすれば
到底受け入れられるものではないだろう。

理由はどうあれ、彼らの起こした事件によって
運命をねじ曲げられてしまった人々は少なくない。
それはどんな大義名分を掲げていても許されることではない。
目的は手段を正当化しないのだ。

フィクションではあるが、昭和の未解決事件に対して
けっこう納得できる ”真相” を提示してくれた。

星野源も小栗旬も抑えた演技で、派手さは無いけれど
最後まで興味を持って見終えることができた。


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