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ボディ・メッセージ [読書・ミステリ]

ボディ・メッセージ 被砥功児の事件簿 第20回鮎川哲也賞受賞作

ボディ・メッセージ 被砥功児の事件簿 第20回鮎川哲也賞受賞作

  • 作者: 安萬 純一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

第20回鮎川哲也賞受賞作。

アメリカ・メイン州にあるディー・デクスター探偵社に依頼が入る。
探偵2名を指定した家に派遣し、そこで一晩過ごすという内容。

社長のディーは社員のスタンリーとケンウッドを現地へ向かわせる。
そこは二階建ての一軒家で、カッシャパグリアという姓の老婦人が
使用人と思われる女性二人と住んでいた。

スタンリーは、使用人の一人が同業の女探偵フランだと気づくが
彼らに対して依頼内容についての詳しい説明は一切ない。
仕方なく2人は酒を飲んで寝てしまうが、
明け方の大きな物音で目を覚ます。

彼らが見たものは、4人の女性の死体。
しかも、みな頭部と片腕を切断されていた。

2人は事件の発生をディーに知らせ、警察とともに現場へ引き返すが
4つの死体は消え、現場の血痕もきれいに拭き取られていた。

警察とは別に捜査を続けるスタンリーとケンウッドは、
カッシャパグリアが何者かに脅迫されていた事実をつかむ。

脅迫状が発送された町に向かった2人は、そこで
カッシャパグリア家とそっくりの間取りの家を発見する。
その家にはケイランという兄弟が住んでいたが、今は行方不明だという。
家の中に潜入した2人は、そこに銃撃の痕跡を発見する・・・

アメリカが舞台なのだけど、探偵役は中盤から登場する日本人。
被砥功児(ピート・コージ)という、どうみても本名じゃないだろ、
って名前なんだけど、探偵としての腕は確か。

とにかく、何が起こっているのか、犯人の目的が何なのかが不明なまま
2人は捜査を続けていくが、終盤で功児によって
”ある事実” が明らかになると、一気に解明されていく。

新人らしい、”大胆な大ネタ” が使われているのだが
裏を返せば ”一発ネタ” でもある。

過去にも○○○○○○が登場したミステリはあるけれど
(私のアヤシい記憶でも2作くらいは思い出せるかな)
それらよりも ”ミステリのネタ” としては上手く使ってると思う。

伏線もちゃんと張ってあって、わかってみれば
「ああ、なるほど」となるのだけど
それを読者に気取らせないようにストーリーをつないでいくのは
さすがに上手いと思う。

ミステリとしてはよくできているのだけど、
何しろメインのトリックにインパクトがありすぎ(笑)で
肝心の犯人の正体が印象に残らなかったよ。
こっちの伏線もちゃんと張ってあったんだけどね。

すでに「ポケットに地球儀」という
ユーモア・ミステリ短篇集を読ませてもらった。
ひょっとするとそっちの路線で行くのかもしれないけど、
長編でのガチな本格ものも読ませてほしいなぁ。


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