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最後の嘘 吉祥寺探偵物語 [読書・ミステリ]

最後の嘘-吉祥寺探偵物語 (双葉文庫)

最後の嘘-吉祥寺探偵物語 (双葉文庫)

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2014/07/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公・川庄は、女医の妻と離婚後、一人息子の健人(小学5年生)を
育てながらコンビニで働くフリーター。
その傍ら、非公式に探偵稼業も引き受ける。
吉祥寺の街を舞台にしたシリーズ、第2作。

7月のある日、コンビニでアルバイト中の川庄の前に謎の男たちが現れる。
彼らに ”拉致” されてきた先にいたのは、元参議院議員・榊原浩之。
彼から依頼されたのは、またしても ”人捜し” だった。

榊原には、独身時代に深い仲になった韓国籍の女性・真弓がいた。
しかし、政治家としての将来を考え、彼女とは別れてしまう。

真弓は密かに榊原の娘・亜美を産んだが、癌になって早世してしまう。
最近になって娘の存在を知った榊原は、”伯父” と名乗って
亜美の前に現れ、生活全般の面倒を見ていた。

亜美は名門お嬢様学校として知られる藤枝女子学院高校の2年生。
かなりの美少女で、成績も学年でトップクラス。
母親と暮らしていたマンションで、今は一人暮らしをしている。
しかし5月の中頃にそこから姿を消し、行方不明になってしまっていた。

亜美は榊原と母親の関係に気づいてしまったのではないか?

榊原は半年後に行われる市長選に立候補を予定しており、
亜美の口から過去のスキャンダルが漏れると政治生命に関わる。
その前に彼女を連れ戻すこと、それが依頼内容だった。

謝礼金に惹かれて引き受けた川庄は、悪戦苦闘しながらも
飲み友だちの女子大生・泉の協力を得て首尾良く亜美を発見するが、
彼女を榊原のもとへ連れて行くことはせず、
自分のマンションで保護することを選ぶ。

榊原と話し合いをするかどうか、亜美本人の意思に任せるためだ。

亜美は川庄に対して頑なだったが、彼の息子・健人との
触れあいを通して、少しずつ打ち解けてるようになっていく。

そんなとき川庄は、これも飲み仲間でヤクザの佐久間から
亜美の背後にいる男・時政一樹(ときまさ・かずき)について聞かされる。

時政は大学生ながら、何人もの女を使って薬物の密売をしているらしい。
亜美もまた、時政に利用されている女の一人ではないのか?
そしてそれを巡って、吉祥寺の街を支配する2つの暴力団の対立が
かつてないほど高まっていることを・・・

前巻の時も思ったが、主人公・川庄のキャラがいい。
金も女も大好きだが、それでも自らの心の中には
”これだけは譲れない” という一線をひいて、それを守り通す。

ヒロインとなる亜美は、生意気盛りの年頃だが
川庄が年長者として彼女を見守る視線は揺るがない。
かと言って自分の価値観を押しつけることはなく、
あくまで彼女自身に考え、決断させようとする。
外見は38歳の冴えない親父だが、こういうところは実に格好良いと思う。

しかし後半に入ると意外な事件が勃発し、事態は急展開をする。

ミステリを読みなれた人なら、真相は容易に見当がつくだろうけども
それでも最後まで興味を失わずに読ませるのは
やっぱり川庄と亜美の ”キャラ立ち” が素晴らしいからだろう。

オカマの京子ちゃんだけでなく、女子大生やヤクザまで飲み友だちに持ち、
前作で知り合った2人の警視庁刑事、夏川と工藤も引き続き登場する。
さらに今回も、新たな ”コネ” ができたようで
このシリーズは、巻が進むほどに川庄を中心とした
”人のネットワーク” が充実していくのかも知れない。

シリーズの残り3巻も手元にあるので、ぼちぼち読む予定。


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