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日本SF傑作選6 半村良 [読書・SF]

日本SF傑作選6 半村良 わがふるさとは黄泉の国/戦国自衛隊 (ハヤカワ文庫JA)

日本SF傑作選6 半村良 わがふるさとは黄泉の国/戦国自衛隊 (ハヤカワ文庫JA)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

半村良は知らなくても「戦国自衛隊」を知らない人は少なかろう。
1974年に刊行され、”タイムトラベル+仮想戦記” ものの
嚆矢となった作品で、1979年には映画化もされたし、
2005年には「戦国自衛隊1549」としてリメイクもされた。
(ストーリーは福井晴敏によるものだが)

1975年、SF作家としては初の直木賞を受賞するが、
受賞作「雨やどり」はSFではなく一般小説。

私には ”伝奇SF” というジャンルを開拓した人、というイメージ。
「石の血脈」「産霊山秘録」から始まり
「黄金伝説」「英雄伝説」などの伝説シリーズも読んだなあ。

大長編「妖星伝」は第6部まで刊行されたが、
完結編となる第7部がなかなか出なくて、読めたのはかなり後だった。
wikiで見てみたら、開始から完結まで20年かかったらしい。

長編「亜空間要塞」がとても面白かったので、
続編の「亜空間要塞の逆襲」も期待して読み始めたら
全然違う雰囲気の話になっていて、
がっかりしたのもいい思い出だ(笑)。

2002年に肺炎で他界されてる。享年68歳。まだ若かったねぇ・・・

初期の半村良はもっぱら「SFマガジン」に寄稿している
駆け出しのSF作家だったわけで、本書は1963年のデビュー作から
70年代前半までに発表された中短篇を集めたもの。

「収穫」
第2回SFコンテスト入選作で、デビュー作。
いわゆる普通の(笑)SF。この頃はこういうのを書いてたんだね。
ただ、太古の時代から宇宙人が地球に来ていた、って設定は
その後に書かれることになる伝奇SF群の根底ともつながるかな。

「虚空の男」
「誕生」
これらもある意味普通のSF。ちょっと小松左京っぽさが。

「赤い酒場を訪れたまえ」
「わがふるさとは黄泉の国」
「庄ノ内民話考」
このへんから、後の長編伝奇SFの原型みたいな作品になっていく。

「およね平吉時穴道行」
タイトルから分かるように、いわゆるタイムスリップもの。
今回再読してみたら、記憶にあったのと全然違う話だったよ(笑)。
大丈夫か私のアタマ(おいおい)。
それにしても、江戸時代の考証がハンパないのは流石。

「農閑期大作戦」
スラップスティック・コメディ。

「戦国自衛隊」
言わずと知れた有名作。文庫で140ページと
長編にしては短いし短篇にしては長いという中途半端な作品なんだが
そのあたりの事情も本書の「解説」で明らかになってる。
本来はちゃんとした長編になるはずだったらしい。だろうねぇ。
たぶん本人からすれば、過去作を改稿してるヒマがあったら
新作をどんどん書きたかったのだろうなぁ・・・と推察。

「箪笥」
伝奇ホラーというか怪談。

「ボール箱」
ちょっと奇妙な味のSF。作者名を隠して示されたら
誰も半村良の作品とは思わないだろうなあ。

「夢の底から来た男」
基本にはホラーなんだけど、ラストでは
それなりに謎解きがあるというミステリっぽい作品でもある。

これで作家別の「日本SF傑作選」第1期が完結らしいのだけど
個人的には、なんで豊田有恒が入らなかったのか理解に苦しむ。
歴史SFというジャンルを開拓した人でもあるし
平井和正とともに黎明期の日本のSFアニメに関わった人でもあるし。
もし第2期があるのなら、是非入れて欲しいなぁ。

最後にどうでもいい話を。

昔、「半村良」は「イーデス・ハンソン」と同一人物だ、
なぁんて与太話があったことを思い出したよ。

実際のところは、小松左京の発言が出処らしい。
『ペンネーム「半村良」は「イーデス・ハンソン」からとったのだろう』
って言ったのだとか。

wikiに載ってるところの「半村良」の由来では、全然違うのだけどね。

ちなみに若い人は「イーデス・ハンソン」なんて知らないだろうなあ。
知りたかったらGoogle先生に聞いてください。
てっきりもうお亡くなりかと思ってwikiを見たらまだご存命(失礼)。

若い頃は大阪を中心に活躍されていたが、
現在は和歌山県在住。今年(2020年)で81歳らしい。
なんと私の母親より若かったよ(笑)。


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