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ブラック・ベルベット [読書・ミステリ]

ブラック・ベルベット (双葉文庫)

ブラック・ベルベット (双葉文庫)

  • 作者: 恩田陸
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

外資系製薬会社で ”ウイルスハンター” として働く
神原恵弥(かんばら・めぐみ)を主役とするシリーズの3作目。

ちなみに ”ウイルスハンター” と名乗ってはいるが、
より正確には、自然界に存在する動植物や微生物から、
新薬のもととなる新たな物質を見つけ出すのが仕事だ。

主役の恵弥自身がまずユニーク。
れっきとした「40代の男性」なのだけど
おネエ言葉で話すバイセクシャルという設定。

 LGBTもエンタメの世界ではかなり市民権を得てきたのかな。

中東のT共和国(ぼかしてあるけど明らかにトルコのこと)で開かれる
大がかりな医薬品の見本市に参加する予定の恵弥は、
国立感染症研究所の研究員・多田直樹から依頼を受ける。
アキコ・スタンバーグという女性科学者の捜索だ。
彼女はT共和国に入国後、消息を絶ったのだという。

恵弥には、実はもう一つの目的があった。製薬業界には、
一切の副作用をもたない ”夢の鎮痛薬” が存在するとの噂があった。
実在すればその鎮痛剤は、「麻薬」としても計り知れない価値を持つ。
恵弥は、「D・F」という通称で呼ばれるその鎮痛剤の鍵を握るという
”アンタレス” なる謎の人物との接触を狙っていた。

T共和国に入国した恵弥は、高校時代の同級生で、
現地で日本食レストランを経営する時枝満と再会し、
彼から全身が黒い苔で覆われた死体が見つかったとの噂を聞かされる。

やがて恵弥は、アキコ・スタンバーグの発見に成功する。
しかしアキコは、恵弥がその後を追っている最中に、
路上で刺殺されてしまう・・・

一方、日本では恵弥にアキコ捜索を依頼した多田が
不審な交通事故に巻き込まれ、重傷を負っていた。

アキコはなぜ殺されたのか、多田の事故は仕組まれたものではないのか、
「D・F」は存在するのか、”アンタレス” の正体とは、
そして ”黒い苔” とは何なのか・・・
多くの謎に包まれたまま、恵弥は時枝と共にT共和国内を巡っていく。

ハードボイルドの基本たる ”人捜し” から始まり、
”アンタレス” との接触を求めてT共和国を移動する恵弥たちを
謎のグループが尾行し始める、というサスペンスに移行して
最後はすべての事態の真相が明かされるミステリとして着地する。

それに加えて、奇観景観の豊かなT共和国(トルコ)を
舞台にしたロード・ノベルという趣もある。
私はあまり海外旅行には興味がないのだが、本書を読んでると
世界にはすごい場所があるのだなあ、と改めて思う。

ミステリとしてはきっちりと謎解きがなされるが
恵弥さんはいろいろな思惑を持つ人々によって
いいように振り回される役回り。
いささか気の毒だが、物語の主役とはそういうものなのだろう(笑)。

あと、アタマが固いと言われそうだけど
主役が ”おネエ” キャラというのには
最後まで馴染めませんでしたねぇ・・・


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