スパイの妻 [映画]
映画館にて。11月初旬。
時代は太平洋戦争直前の1940年。
ヒロインの福原聡子(蒼井優)は、神戸で貿易会社を営む
優作(高橋一生)の妻として、幸福な生活を送っていた。
しかし優作は、物資を求めて渡航した満州で
衝撃的な国家機密を目にしてしまった。
たぶん、BC兵器を研究していた731部隊による ”人体実験”。
これについてはいろいろ反論があるみたいだけどここには書かない。
詳しくはwikiでも見てください(おいおい)。
私は731部隊については『悪魔の飽食』(森村誠一)で知ったが、
これについてもいろいろ反論があるようだ。
優作と、彼の甥・竹下文雄(坂東龍汰)は、
その事実を世界に知らしめる準備を秘密裏に進め始める。
優作自身、もともと戦争には否定的で、
世間の戦時色(同調圧力)にあえて反抗するようなところがあり、
神戸憲兵隊の津森泰治(東出昌大)に目をつけられていた。
夫の行動を何も知らない聡子は、津森に呼び出される。
優作が満州から連れ帰ってきた草壁弘子(玄理)という女性が
亡くなったのだという。
知らない女の存在に困惑する聰子だが、優作の思惑を知ることになり、
彼女は愛する夫を信じて生きていくことを決意する。
たとえ “スパイの妻” と罵られようとも・・・
観る前には「いわゆる反戦映画の一つだろう」って思ってたのだが
見終わってみると、意外と反戦メッセージは(もちろん描かれてはいるが)
そんなに強くない印象だ。
憲兵隊長・津森を演じている東出のキャラもあるだろうし、
聰子と津森が幼馴染み、という設定もあるだろう。
それよりは、時代の嵐に翻弄される夫婦の ”絆” を
見せたかったのだろう、と思う。
しかし優作にとっての ”絆” と、聰子にとっての ”絆” が
同じではないところをこの映画は描き出している。
聰子の行動はよくわかる、というか理解しやすいのだが
優作の方が一筋縄ではいかない。
映画のタイトルこそ『スパイの妻』だが、
優作がスパイなのかどうかは映画の中では明確に描かれない。
彼が当時としてはリベラルな思考の持ち主であることは分かるが
「日本の将来を憂う、正義と信念の人」なのか?
「対日開戦の大義名分を求める連合国側のスパイ」なのか?
そのあたりの解釈は観た人に任せるということなのか。
「日本の将来を憂うが故にスパイとなった」という解釈もできるが。
あと、やっぱり疑問に思ったのは、
一般人が軍の機密にそう簡単に近づけるものなのか? ということ。
当時の731部隊のセキュリティってそんなにザルだったのか?
いちおう内通者(草壁弘子)がいた、という設定にはなってるが・・・
そのあたりを考えると、優作がスパイと考えた方がすっきりはするが。
そして、ラスト近くの聰子の描写。
彼女の心象風景なのだろうけど・・・
日本映画はこういうの好きだよねぇ。
私にはよく分からないんだけど(笑)。
この映画は、第77回ヴェネチア国際映画祭で
銀獅子賞(監督賞)を受賞している。
やっぱり私には、映画の ”芸術な価値” というのは
よく分からないもののようです・・・。
蒼井優が熱演しているのはよく分かったけど。