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二ノ国 [アニメーション]

Netflixにて視聴。10月の終わり頃だったかな?。
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二人の男子高校生が、二つの世界の間を行き来する異世界ファンタジー。

高校生のユウとハルは親友同士。
同級生の女の子・コトナは2人とは幼馴染み。

ある日、ユウとハルは交通事故に巻き込まれてしまうが
次の瞬間、2人は異世界・”二ノ国” へと転移していた。

そこで彼らが出合ったのは、コトナと瓜二つの王女・アーシャ。
彼女の父が収めるエスタバニア王国は、
ガバラス率いる反乱勢力「黒旗軍」の脅威にさらされていた。

やがて二人は知る。
彼らにとっての現実世界 ”一ノ国” と、この異世界 ”二ノ国” の間には、
魂を共有している人間が存在すること、
コトナとアーシャもまた魂を共有する存在であること。

現実世界 ”一ノ国” に戻ったユウとハルは
コトナが難病を患い、余命幾ばくもないことを知らされる。

”二ノ国” のアーシャの命を絶つことによって、
現実世界のコトナの命を救うことができる。

2人は再び ”二ノ国” へ転移するが、
ハルはアーシャを討つため、「黒旗軍」に身を投じる。
ユウはハルを止めるために、アーシャのもとに留まる。
親友だった二人は、敵味方に分かれて戦うことに・・・

世界の雰囲気も、登場する人間キャラもジブリ風。
妖精などの ”人外キャラ” が妖怪ウォッチ風なのはご愛敬か。

ファンタジーながら、テーマは ”命の選択” という、かなり重いもの。
どう決着させるのだろう? って思ったが
ラストに至って「なるほど、そうくるか」

いささか「都合良すぎだ」と思う人もいるかも知れない。
好き嫌いが分かれる結末かも知れないが、
この ”着地点” あってこその映画化だったのだろう。
エンタメとしてはこれが正解だと私は思う。

主役の高校生2人のCVは、俳優の山崎賢人と新田真剣佑。
声優としての彼らはけっこう頑張ってる。
ものすごく上手いとは思わないが
伊武雅刀、山寺宏一、宮野真守、坂本真綾、津田健次郎と
脇を固めるそうそうたるベテラン声優陣に混じっても、
さほど違和感を感じさせないくらいには上手いと思う。

ただねえ・・・コトナ/アーシャ役の永野芽郁さん。
女子高生のコトナのほうはともかく、アーシャのお姫様台詞は・・・
はっきり言って ”浮いてる” なぁ。

まあ、彼女が悪いのではなく、彼女にオファーを出した
制作陣がいけないのですけどね。
話題が欲しいからといって、有名俳優/女優を
安易に起用するのはいい加減やめましょうよ。


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NOVA 2019年 秋号 [読書・SF]

NOVA 2019年秋号 (河出文庫)

NOVA 2019年秋号 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/08/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

書き下ろし短篇によるSFアンソロジー。責任編集は大森望。
いままで大森氏の編集によるアンソロジーを何冊か読んできたけど
どうも彼と私では好みのSFがかなり異なるようだ。
(もちろん一致する場合もあるのだけど、それはかなり少ない)

だから、彼の編集するアンソロジーはここのところ
買わないことが多くなってきたのだけど、このシリーズに関しては、
けっこう ”当たり” の作品に出合うことが多いので
なかなかやめられないんだよねぇ。

■理解できて、面白かったもの

「あざらしが丘」高山羽根子
日本初の捕鯨(!)アイドルユニット、〈あざらしが丘〉。
湾岸にステージを設置、そこで彼女らが実際に捕鯨する様子を
”ライブ配信” するという、捕鯨のイメージアップアイドルだ。
しかしある日、彼女らの ”ライブ会場” に
通常の数倍もの巨大な鯨が現れて大暴れ。
その鯨は〈モビィ〉と呼ばれることになったが・・・
こういうぶっ飛んだ話を書く人が芥川賞を取るようになった。
いい時代になったものです(笑)。

「宇宙サメ戦争」田中啓文
人類とサメ類が宇宙の覇権をかけて争う話。
舞台は太古の時代から未来まで、
あるいはお互いが栄えているパラレルワールド間を行き来しながら。
さまざまなSF映画やSFドラマのパロディと
作者お得意のダジャレまみれのカオスな話。

「赤羽二十四時」アマサワトキオ
この世界には、”野生のコンビニ” なる生物が生息していて、
そいつらを捕獲し、生体改造を施したものが
街中のコンビニエンス・ストアになっている、
という衝撃的な(笑)発想にまず驚かされる。
主人公のスリムは日系アメリカ人。日本にやってきて
赤羽にある24時間営業のコンビニで雇われ店長をしている。
ある夜、2人組の強盗が侵入してきて乱暴狼藉、
その ”ストレス” のためにコンビニの ”生体脳” が制御を離れて
暴走を始める・・・というトンデモない話が綴られていく。
周囲へ触手を伸ばして ”立ち上がった” コンビニ赤羽店の姿は、
作中の描写によるとどうやら ”ビオランテ” に似ているらしい。
 ちなみに ”ビオランテ” というのは、
 1989年の東宝映画『ゴジラvsビオランテ』に登場する。
 バラの遺伝子にゴジラの遺伝子を組み込んだという
 バイオテクノロジーから生まれた植物怪獣だ。
 ネットでググれば画像があると思うので、その頭頂部に
 コンビニエンス・ストアの店舗が載っている(!)と思えば・・・
なんともシュールな光景だが、こんな与太話が語れるのもSFの良さ。
「SFは絵だねえ」という野田昌宏氏の名言を思い出す。
作者は長年、コンビニでバイトしていたと解説にあるけど
作中のコンビニ店員の仕事ぶりが異様にリアルなのも笑いを誘う。
このアンソロジーでいちばん楽しんだ作品だ。

■理解はできて、まあまあ面白かったもの

「夢見」谷山浩子
主人公の女の子・小川夢見が見た夢を、
二人の友人に話すところから始まる。
SFというよりは ”記憶” をテーマにした、
ちょっぴりホラーでちょっぴりミステリっぽい話、かな。
シンガーソングライターの谷山浩子さんが文筆家でもあるというのは
どこかで聞いていたような気もするのだが、小説も書いていたとは。

「浜辺の歌」高野史緒
そう遠くないと思われる近未来。高齢者はAIによって介護されている。
その施設では、”飼われている” 猫までがAIだ。
その猫の一体から見た、ある老人の姿が描かれる。
珍しい二人称小説。

■理解できないが、なんとなく面白かったもの(笑)

「敗れたリンカーンの肖像」藤井太洋
合衆国秘密捜査部の捜査員フォーク・ドミトリは
シワの入り方から通し番号まで全く同一の外見を持つ
2枚の5ドル札を発見した。偽札と疑ったフォークは
出処と思われる科学者ジョージ・ハインツ博士を詰問するが
「この札は未来の世界からタイムトラベルしてきた」と言い張る。
博士は自分が作成したタイムマシンをフォークに見せるのだが・・・
後半は、序盤からは想像もつかない壮大な時空を舞台にした物語になる。
いささか風呂敷を広げすぎて、私にはいまひとつ理解できないのが残念。

「いつでも、どこでも、永遠に」草野原々
女子校に通う1年生・羽沢八千夜(はねざわ・やちよ)は
同級生の天道万里乃(てんどう・まりの)を愛していた。
しかしある日、万里乃が上級生・川原灘(かわはら・なだ)と
つき合っていることを知ってしまう。
傷心の八千夜は、自身のバディAI(生徒全員に与えられている)に
万里乃の会話データをインプット、学習させたバディAIを
”仮想マリノ” として学校生活を過ごしていく。
彼女の通う学園は、新たな取り組みとして生徒AI化計画を始める。
学生の人格を模倣するAIをロボットに入れ、
学校生活を送らせようというものだ。
プロジェクトの対象に選ばれた八千夜は、
”仮想マリノ” をインストールしたロボットが与えられたのだが・・・
女子高生同士の ”百合” な話から始まって
後半になると序盤からは想像もできない展開を迎える。
うーん、なんというかな。読んでいて頭に浮かんだ文言は
「言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい自信だ!」
某有名漫画家が描くところの、某有名マンガの台詞(笑)。
宇宙的スケールで展開する壮大なホラ話が語れるのも、SFならでは。
 上の台詞で作品名が分からない人でも、これなら分かるでしょう。
 「屁のつっぱりは、いらんですよ!」

■理解できません。ごめんなさい(;。;)。

「無積の船」麦原遼
大学時代に共に数学を専攻し、今は就職した ”私” とあさひ。
2人が午後のカフェでお茶しながら、”私” の見た夢の内容について
あさひがいろいろ解釈を試みる・・・という話。
数学が実に奥深い学問だというのはよく分かるのだが
如何せん内容がさっぱりアタマに入ってこない。
私(ブログ主)はこれでも、高校時代までは
数学が得意(と思い込んでいて)で、大学では数学を勉強しようかなぁ、
なぁんてトンチキなことを一時は考えていたのだが、
そっち方面に行かなくてホントに良かった、と思った。
(そもそもアタマが悪くて入れなかったかも知れんが)

「戯曲 中空のぶどう」津原泰水
近未来の地方都市郊外。そこに建つマンションの屋上庭園が舞台。
かつて同じ学校に通っていたという同級生3人がここで出会い、
会話するのだが、年齢も異なれば記憶の内容も違う・・・
うーん、残念ながら私の理解の外ですねぇ。


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インド倶楽部の謎 [読書・ミステリ]

インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/09/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

臨床犯罪学者・火村英生(ひむら・ひでお)と
ミステリ作家・有栖川有栖(ありすがわ・ありす)が
活躍するシリーズの一編で、その中でも
タイトルに国名を冠した〈国名シリーズ〉では9作めになる。

間原郷太(まはら・ごうた)は、神戸の異人館街に
”インド亭” と呼ばれる屋敷を構える実業家。
神戸でインド風のナイトクラブ〈ニルヴァーナ〉を経営しており
その羽振りの良さから ”マハラジャ” と呼ばれていた。

間原は月に一度、気心の知れた仲間を自宅に招く ”例会” を開いていた。
そのメンバーは間原と、その妻の洋子、
イベント・プロモーターの加々山(かがやま)郁雄、
ヨガ・インストラクターの井深(いぶか)リン、
私立探偵の坊津理帆子(ぼうつ・りほこ)、
臨床心理士の佐分利英吾(さぶり・えいご)、
インド音楽を得意とする演奏家の弦田真象(つるた・しんぞう)。

 この7人が集う例会には特に名前がなかったのだが
 事件に関わることになった有栖が便宜的に〈インド倶楽部〉と名づけ、
 それがそのままタイトルになっている。

その日〈インド倶楽部〉では、特別なイベントが行われた。
占い師兼便利屋の出戸守(でと・まもる)の仲介で
例会に招かれたのは、インド人のラジーブ。

5000年前、インドの聖者アガスティアは、
椰子の葉にすべての人間の運命を書き記したのだという。

ラジーブは、その ”アガスティアの葉” の中から
該当する個人のものを探しだし、古代タミル語で書かれている内容を
現代語に翻訳できる ”ナーディ・リーダー” なのだという。

今回の趣向は、例会のメンバーのうち3人が
”自分の運命” をアガスティアの葉から読み取ってもらう
リーディング・セッションを開く、というもの。

初対面のメンバーたちの秘密を次々に言い当てるラジーブに驚く面々。

しかしそのイベントの数日後、出戸が殺されて
スーツケースに詰められた状態で発見される。
さらに、例会のメンバーの一人も殺されてしまう。
しかもそれは、ラジーブによって
「あなたはこの日に死ぬ」と予言された日だったのだ・・・

本書の特色は、物語の中心となる例会のメンバーが
みな、〈輪廻転生〉を信じていること。
そして、メンバー7人は全員、”前世” でも
深い結びつきのあった人間たちであった(と信じている)こと。

捜査が進んでも、メンバー間に殺人に至るような動機が見つからない。

オカルトか超自然現象かと思える状況ではあるが
前世を信じている容疑者たちを前にして、火村はあくまでリアリスト。
転生云々は横に置いて、あくまでも理詰めで犯人に迫っていく。

人を殺す動機なんて、本人にしか分からないことも多いだろう。
部外者から見れば「そんなことで」というものもあるだろう。

火村自身、「人を殺したいと思ったことがある」と
過去に発言しているが、その理由は未だ明らかにされていない。
そんな火村が、動機不明な事件に向き合うのも本書の特色か。

終盤で披露される、犯人絞り込みの推理はやっぱり流石。
伏線をきっちり拾って、鮮やかに一人の人物を浮上させていく。

犯人の動機に、納得できるかできないかは判断が分かれるだろう。
しかし本書は、それが通用する ”特殊状況下” のミステリでもあると
考えれば、理解はできるかな。


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新・サクラ大戦 the Animation [アニメーション]

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Netflixにて。加入して最初の頃に観た。10月下旬頃だったかな?。

同名のゲームのアニメ化。ちなみに私はゲームはしてない。
内容は、ゲーム内ストーリーの終結した後の話らしい。

あらすじとかはwikiに任せて、ざっくりとした感想を。

前半は、途中で観るのを止めようかと思った。だってユルいんだもの。
私は女の子がキャッキャいってるアニメってダメみたいです。

でも、終盤になったら観ていてよかったと思いましたよ。
特にラスト3話の盛り上がりが素晴らしい。

圧倒的な敵の要塞の破壊力。そして、
ラスボスの指数関数的なパワーアップ。

 あの要塞は『ふしぎの海のナディア』のレッドノアですな。
 〈バベルの光〉までついてるし(笑)。

それに対して主人公・さくらはMk.IIメカへ乗り換え、
さらには最終決戦用支援マシンの登場、
そして主役ロボットと変形・合体を果たすという
ロボットものの王道展開をたたみかけるように見せる演出。
これは ”燃える” よねぇ。

ただまあ、これらのメカが終盤になっていきなり出てくるのは
いささか唐突に感じる。ちょっとは伏線を張っておいて欲しいなぁ。
(ゲーム内で既に登場していたメカなのかも知れんが)

悪役を演じた声優・赤羽根健二さんの大熱演が光ります。
こんなに振り切った役を演じたのは、
さぞかし気持ちよかったのではないかなぁ。

男性である帝国華劇団の隊長さん働かなさすぎ、とか
神崎指令には前線に出てきて戦って欲しかった、とか
いろいろ思うところはあるけれど、終わってみれば面白いアニメでした。


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日本SF傑作選6 半村良 [読書・SF]

日本SF傑作選6 半村良 わがふるさとは黄泉の国/戦国自衛隊 (ハヤカワ文庫JA)

日本SF傑作選6 半村良 わがふるさとは黄泉の国/戦国自衛隊 (ハヤカワ文庫JA)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

半村良は知らなくても「戦国自衛隊」を知らない人は少なかろう。
1974年に刊行され、”タイムトラベル+仮想戦記” ものの
嚆矢となった作品で、1979年には映画化もされたし、
2005年には「戦国自衛隊1549」としてリメイクもされた。
(ストーリーは福井晴敏によるものだが)

1975年、SF作家としては初の直木賞を受賞するが、
受賞作「雨やどり」はSFではなく一般小説。

私には ”伝奇SF” というジャンルを開拓した人、というイメージ。
「石の血脈」「産霊山秘録」から始まり
「黄金伝説」「英雄伝説」などの伝説シリーズも読んだなあ。

大長編「妖星伝」は第6部まで刊行されたが、
完結編となる第7部がなかなか出なくて、読めたのはかなり後だった。
wikiで見てみたら、開始から完結まで20年かかったらしい。

長編「亜空間要塞」がとても面白かったので、
続編の「亜空間要塞の逆襲」も期待して読み始めたら
全然違う雰囲気の話になっていて、
がっかりしたのもいい思い出だ(笑)。

2002年に肺炎で他界されてる。享年68歳。まだ若かったねぇ・・・

初期の半村良はもっぱら「SFマガジン」に寄稿している
駆け出しのSF作家だったわけで、本書は1963年のデビュー作から
70年代前半までに発表された中短篇を集めたもの。

「収穫」
第2回SFコンテスト入選作で、デビュー作。
いわゆる普通の(笑)SF。この頃はこういうのを書いてたんだね。
ただ、太古の時代から宇宙人が地球に来ていた、って設定は
その後に書かれることになる伝奇SF群の根底ともつながるかな。

「虚空の男」
「誕生」
これらもある意味普通のSF。ちょっと小松左京っぽさが。

「赤い酒場を訪れたまえ」
「わがふるさとは黄泉の国」
「庄ノ内民話考」
このへんから、後の長編伝奇SFの原型みたいな作品になっていく。

「およね平吉時穴道行」
タイトルから分かるように、いわゆるタイムスリップもの。
今回再読してみたら、記憶にあったのと全然違う話だったよ(笑)。
大丈夫か私のアタマ(おいおい)。
それにしても、江戸時代の考証がハンパないのは流石。

「農閑期大作戦」
スラップスティック・コメディ。

「戦国自衛隊」
言わずと知れた有名作。文庫で140ページと
長編にしては短いし短篇にしては長いという中途半端な作品なんだが
そのあたりの事情も本書の「解説」で明らかになってる。
本来はちゃんとした長編になるはずだったらしい。だろうねぇ。
たぶん本人からすれば、過去作を改稿してるヒマがあったら
新作をどんどん書きたかったのだろうなぁ・・・と推察。

「箪笥」
伝奇ホラーというか怪談。

「ボール箱」
ちょっと奇妙な味のSF。作者名を隠して示されたら
誰も半村良の作品とは思わないだろうなあ。

「夢の底から来た男」
基本にはホラーなんだけど、ラストでは
それなりに謎解きがあるというミステリっぽい作品でもある。

これで作家別の「日本SF傑作選」第1期が完結らしいのだけど
個人的には、なんで豊田有恒が入らなかったのか理解に苦しむ。
歴史SFというジャンルを開拓した人でもあるし
平井和正とともに黎明期の日本のSFアニメに関わった人でもあるし。
もし第2期があるのなら、是非入れて欲しいなぁ。

最後にどうでもいい話を。

昔、「半村良」は「イーデス・ハンソン」と同一人物だ、
なぁんて与太話があったことを思い出したよ。

実際のところは、小松左京の発言が出処らしい。
『ペンネーム「半村良」は「イーデス・ハンソン」からとったのだろう』
って言ったのだとか。

wikiに載ってるところの「半村良」の由来では、全然違うのだけどね。

ちなみに若い人は「イーデス・ハンソン」なんて知らないだろうなあ。
知りたかったらGoogle先生に聞いてください。
てっきりもうお亡くなりかと思ってwikiを見たらまだご存命(失礼)。

若い頃は大阪を中心に活躍されていたが、
現在は和歌山県在住。今年(2020年)で81歳らしい。
なんと私の母親より若かったよ(笑)。


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ブラック・ベルベット [読書・ミステリ]

ブラック・ベルベット (双葉文庫)

ブラック・ベルベット (双葉文庫)

  • 作者: 恩田陸
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

外資系製薬会社で ”ウイルスハンター” として働く
神原恵弥(かんばら・めぐみ)を主役とするシリーズの3作目。

ちなみに ”ウイルスハンター” と名乗ってはいるが、
より正確には、自然界に存在する動植物や微生物から、
新薬のもととなる新たな物質を見つけ出すのが仕事だ。

主役の恵弥自身がまずユニーク。
れっきとした「40代の男性」なのだけど
おネエ言葉で話すバイセクシャルという設定。

 LGBTもエンタメの世界ではかなり市民権を得てきたのかな。

中東のT共和国(ぼかしてあるけど明らかにトルコのこと)で開かれる
大がかりな医薬品の見本市に参加する予定の恵弥は、
国立感染症研究所の研究員・多田直樹から依頼を受ける。
アキコ・スタンバーグという女性科学者の捜索だ。
彼女はT共和国に入国後、消息を絶ったのだという。

恵弥には、実はもう一つの目的があった。製薬業界には、
一切の副作用をもたない ”夢の鎮痛薬” が存在するとの噂があった。
実在すればその鎮痛剤は、「麻薬」としても計り知れない価値を持つ。
恵弥は、「D・F」という通称で呼ばれるその鎮痛剤の鍵を握るという
”アンタレス” なる謎の人物との接触を狙っていた。

T共和国に入国した恵弥は、高校時代の同級生で、
現地で日本食レストランを経営する時枝満と再会し、
彼から全身が黒い苔で覆われた死体が見つかったとの噂を聞かされる。

やがて恵弥は、アキコ・スタンバーグの発見に成功する。
しかしアキコは、恵弥がその後を追っている最中に、
路上で刺殺されてしまう・・・

一方、日本では恵弥にアキコ捜索を依頼した多田が
不審な交通事故に巻き込まれ、重傷を負っていた。

アキコはなぜ殺されたのか、多田の事故は仕組まれたものではないのか、
「D・F」は存在するのか、”アンタレス” の正体とは、
そして ”黒い苔” とは何なのか・・・
多くの謎に包まれたまま、恵弥は時枝と共にT共和国内を巡っていく。

ハードボイルドの基本たる ”人捜し” から始まり、
”アンタレス” との接触を求めてT共和国を移動する恵弥たちを
謎のグループが尾行し始める、というサスペンスに移行して
最後はすべての事態の真相が明かされるミステリとして着地する。

それに加えて、奇観景観の豊かなT共和国(トルコ)を
舞台にしたロード・ノベルという趣もある。
私はあまり海外旅行には興味がないのだが、本書を読んでると
世界にはすごい場所があるのだなあ、と改めて思う。

ミステリとしてはきっちりと謎解きがなされるが
恵弥さんはいろいろな思惑を持つ人々によって
いいように振り回される役回り。
いささか気の毒だが、物語の主役とはそういうものなのだろう(笑)。

あと、アタマが固いと言われそうだけど
主役が ”おネエ” キャラというのには
最後まで馴染めませんでしたねぇ・・・


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それまでの明日 [読書・冒険/サスペンス]

それまでの明日 (ハヤカワ文庫JA)

それまでの明日 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 原りょう
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/09/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★

新宿で探偵事務所を構える沢崎を主役とした
ハードボイルドシリーズの長編5作目、
2018年に発表された14年ぶりの新作の文庫化だ。

沢崎のもとを訪れた男は望月皓一(こういち)と名乗る。
有名な金融会社ミレニアム・ファイナンスの新宿支店長だという。

依頼内容は赤坂の老舗料亭〈業平〉(なりひら)の
女将・平岡静子の身辺調査だった。

しかし調査開始早々、平岡静子は数ヶ月前に癌で死亡、
〈業平〉の女将は、静子の妹の嘉納淑子(かのう・よしこ)へと
代替わりしていたことが判明する。

沢崎は報告のために望月のマンションへ電話をかけるが
本人は不在で、電話に出たのは別の男の声だった。

望月本人に直に会うべく、沢崎はミレニアム・ファイナンス新宿支店を
訪れるが、そこで二人組の強盗事件に遭遇してしまう。

店内の客を人質に取った強盗犯は、金庫を開けるよう要求するが
それを開けることができる支店長の望月は
事件発生前に外出したまま、所在が不明だった。

立て籠もりの時間が長引く中、犯人の一人は逃走、もう一人は投降する。
到着した警察によって店内の捜査が行われるが、支店の金庫の中から
本来は存在しないはずの、億単位の現金が発見される。

沢崎は行方不明となった望月、そして平岡静子の過去を追い始めるが
時を同じくして、金庫内の現金が原因かと思われる
暴力団同士の抗争が始まっていた・・・

序盤での強盗事件こそ驚くが、それ以後はむしろ坦々と物語は進行する。
沢崎自身も沈着冷静を絵に書いたような男で、
およそ動転したり我を忘れたりというような場面は皆無といっていい。
予想外の出来事に遭遇しても、
眉毛を少し動かす位の反応しかしてないんじゃないかなぁ。

それが「かっこいい」と思う人もいるだろうし、
それこそが沢崎の魅力だといういう人もいるのだろう。

私の沢崎に対する印象は、50歳そこそこの人間にしては
ちょっと落ち着き過ぎではないのかなぁ・・・というもの。

 10代や20代の若い頃は、50歳の人なんて、”老成” してるもんだと
 思っていたが、いざ自分が50代になり、60代になっても
 全くといっていいくらい悟りは開けてないしねぇ・・・

 家人にも「こんなに落ち着きのない還暦も珍しい」って
 言われてるんだが、そんなのは私だけ・・・?

まあハードボイルドの主役というのはそういうものなのかも知れないし
そもそも本書を読む人には、慌てふためくような沢崎を期待している人は
いないんだろうなぁ・・・とも思ったり。

 「私立探偵・沢崎の日常」ってサブタイトルがついても
 あまり違和感がないんじゃなかろうかって、ふと思った。

終盤になると、当然ながら事件の裏事情があらかた見えてくるが
今までの作品群よりもミステリ要素としての
”謎解き” 要素は少なくなっているように思う。

物語を構成していた、いくつかのストーリーラインは
それなりに面白いのだけど、結局のところ
冒頭での望月から沢崎への依頼内容が
○○○○と○○○だったのはちょっと拍子抜けな感が否めない。

とはいっても、文庫で500ページを超える大部を
退屈することなく読ませるのは流石とは思う。
それには、登場人物たちのキャラが立っていることが大きいだろう。

序盤の強盗犯コンビを手始めに、錦織・田島の刑事コンビから
端役に至るまで、みな ”それらしい” 人物造形がしっかりできてる。

なかでも、沢崎とは旧知の暴力団員・相良の
意外な(失礼!)親孝行ピソードにはじんわりさせられる。

そして、強盗事件をきっかけに沢崎と知り合う
若手起業家の梅津一樹(うめず・かずき)は本書のメインキャラの一人。
沢崎に向かって ”爆弾発言” をしたりとなかなか印象的な青年だ。



さて、巻末での「著者あとがき」でも明かされているが
本書の事件は東日本大震災以前に起こったもの。

作者は震災後の世界を舞台にした次回作に既に着手しているとのこと。
”続編” という言葉が用いられているので、
内容は本書と何らかの形でリンクしているのだろう。


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ボディ・メッセージ [読書・ミステリ]

ボディ・メッセージ 被砥功児の事件簿 第20回鮎川哲也賞受賞作

ボディ・メッセージ 被砥功児の事件簿 第20回鮎川哲也賞受賞作

  • 作者: 安萬 純一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

第20回鮎川哲也賞受賞作。

アメリカ・メイン州にあるディー・デクスター探偵社に依頼が入る。
探偵2名を指定した家に派遣し、そこで一晩過ごすという内容。

社長のディーは社員のスタンリーとケンウッドを現地へ向かわせる。
そこは二階建ての一軒家で、カッシャパグリアという姓の老婦人が
使用人と思われる女性二人と住んでいた。

スタンリーは、使用人の一人が同業の女探偵フランだと気づくが
彼らに対して依頼内容についての詳しい説明は一切ない。
仕方なく2人は酒を飲んで寝てしまうが、
明け方の大きな物音で目を覚ます。

彼らが見たものは、4人の女性の死体。
しかも、みな頭部と片腕を切断されていた。

2人は事件の発生をディーに知らせ、警察とともに現場へ引き返すが
4つの死体は消え、現場の血痕もきれいに拭き取られていた。

警察とは別に捜査を続けるスタンリーとケンウッドは、
カッシャパグリアが何者かに脅迫されていた事実をつかむ。

脅迫状が発送された町に向かった2人は、そこで
カッシャパグリア家とそっくりの間取りの家を発見する。
その家にはケイランという兄弟が住んでいたが、今は行方不明だという。
家の中に潜入した2人は、そこに銃撃の痕跡を発見する・・・

アメリカが舞台なのだけど、探偵役は中盤から登場する日本人。
被砥功児(ピート・コージ)という、どうみても本名じゃないだろ、
って名前なんだけど、探偵としての腕は確か。

とにかく、何が起こっているのか、犯人の目的が何なのかが不明なまま
2人は捜査を続けていくが、終盤で功児によって
”ある事実” が明らかになると、一気に解明されていく。

新人らしい、”大胆な大ネタ” が使われているのだが
裏を返せば ”一発ネタ” でもある。

過去にも○○○○○○が登場したミステリはあるけれど
(私のアヤシい記憶でも2作くらいは思い出せるかな)
それらよりも ”ミステリのネタ” としては上手く使ってると思う。

伏線もちゃんと張ってあって、わかってみれば
「ああ、なるほど」となるのだけど
それを読者に気取らせないようにストーリーをつないでいくのは
さすがに上手いと思う。

ミステリとしてはよくできているのだけど、
何しろメインのトリックにインパクトがありすぎ(笑)で
肝心の犯人の正体が印象に残らなかったよ。
こっちの伏線もちゃんと張ってあったんだけどね。

すでに「ポケットに地球儀」という
ユーモア・ミステリ短篇集を読ませてもらった。
ひょっとするとそっちの路線で行くのかもしれないけど、
長編でのガチな本格ものも読ませてほしいなぁ。


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ポケットに地球儀 探偵作家アマンと謎の密室魔 [読書・ミステリ]

ポケットに地球儀  探偵作家アマンと謎の密室魔

ポケットに地球儀  探偵作家アマンと謎の密室魔

  • 作者: 安萬 純一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/11/01
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

出版社の編集者・鹿堀(しかぼり)は、
一般の読者から身の回りに起こった謎を投稿してもらい、
それを探偵作家アマンに解かせる、という企画を立てる。

アマンと深堀のもとには次々と4つの謎の事件が持ち込まれるが、
解明に乗り出した2人は、なぜか毎回、何者かに拉致されて
”密室”(正確に言えば密閉された建造物)の中に閉じ込められる・・・
という展開の連作短篇集。

サブタイトルの「密室魔」とは、この密室を用意して
アマンと鹿堀に ”挑戦” してくる謎の人物を指すのだが、
建物ひとつ作るのも、けっこうな手間と金がかかってるわけで
いったい密室魔の目的は何なのか?

「パンク少女と三日月の密室」
女子大生・キリナが通学に使っている電車で
毎日一緒になる女性は、謎の行動をくり返していた。
決まって同じ駅で下り、次の電車に乗る。
しかし降りた電車も乗る電車もどちらも各駅停車だ。
彼女の行動の意味は何なのか・・・

「ノイズの母と回転する密室」
5階建てマンションの1階に住む安芸田(あきた)雅美。
ここ1週間の間に、彼女の部屋のベランダに
大量の砂が降ってきたことが2回もあったのだという・・・

「DJルリカと四角い密室」
DJルリカがかつて通っていた中学校が廃校になり、
それを惜しんでクラス会が開かれた。
ルリカも呼ばれて現地へ向かったのだが、到着した時には
集まっていたはずの人たちは誰もいなかった。
しかし会場には菓子や飲み物が残されており、
ついさっきまで人がいた痕跡があった・・・

「メロデス美女とドアのない密室」
雑誌ライターの茜は売れないカメラマンである浩一と同棲している。
最近、茜の持ち物が姿を消してしまう事態が頻発する。
どうやら浩一が金に換えているらしいのだが、
彼が部屋の外へモノを持ち出した形跡がない・・・

「密室魔と空中の密室」
これまでの4つの事件で、鹿堀とアマンは
謎の建造物(それも、毎回新設される)に拉致されているのだが、
その土地の所有者が判明する。
鹿堀とアマンはその人物こそ ”密室魔” だと睨む。
これまでの事件で依頼人として現れた女性陣も総登場して
一連の事件も大詰めを迎える。

ミステリなのだけど、探偵役はアマンでもなく鹿堀でもない。
2人が毎回密室に閉じ込められて、脱出に苦労している間に
なんとなく謎は解かれて事件は解決してしまう(おいおい)。
そしてその真相もけっこう脱力系だったりする。

本書のミステリとしての興味はもう一つあって、
それは閉じ込められた密室から2人がいかにして脱出するかということ。

さらに、主役2人が交わすミステリに関する馬鹿話にも
けっこう枚数が割かれている。
その内容は、人によって好き嫌いが別れるかも知れないが
私はけっこう楽しんで読ませてもらったよ。

典型的な ”バカミス” と割り切れば、これはこれでオモシロい。


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ハルさん [読書・ミステリ]

ハルさん (創元推理文庫)

ハルさん (創元推理文庫)

  • 作者: 藤野 恵美
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/03/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

タイトルの「ハルさん」とは、本書の語り手である
春日部晴彦(かすかべ・はるひこ)の愛称である。

ハルさんは妻の瑠璃子さんと学生結婚、
就職はしたものの後に脱サラ、人形作家として生計を立てることに。
一人娘の風里(ふうり)、愛称「ふうちゃん」をもうけたものの
瑠璃子さんは早世してしまい、父と娘の二人暮らしとなる。

男手ひとつで育てられたふうちゃんも無事に成長して大学を卒業、
本書の冒頭はふうちゃんの結婚式の朝から始まる。

家を出て式場へ向かうハルさんの胸中を、
ふうちゃんと過ごした日々の回想がよぎっていく。
その中で、2人の周囲で起こった5つの事件が語られる。

いわゆるほのぼの系の、日常の謎ミステリの連作短篇集だ。

「第一話 消えた卵焼き事件」
ふうちゃんの幼稚園での同級生・隆くんのお弁当箱から
おかずの卵焼きが消えてしまう。
それを食べた犯人だとの濡れ衣を着せられたふうちゃんは
一念発起、犯人を捕まえると言い出すが・・・

「第二話 夏休みの失踪」
小学4年生になり、夏休みを迎えたふうちゃん。
ところがある日突然、姿を消してしまう。
娘を探しまわるハルさんは、ふうちゃんがいなくなる前に
近所の老人の家から花を持ちだしていたことを知るが・・・

「第三話 涙の理由」
中学2年生になったふうちゃんはハンドボール部に所属、
成績もかなり優秀らしく、高校受験も心配なさそうだ。
しかしふうちゃんが描いて入選したポスターが、
掲示場所からはがされていることが分かる。
”いじめ” を受けているのではないかと心配するハルさんだが・・・

「第四話 サンタが指輪を持ってくる」
高校最後の冬休み、ふうちゃんは花屋さんでアルバイトを始める。
しかし、忘れ物をしていったお客さんを追いかけて転倒、
足を骨折してしまい入院する騒ぎに。その忘れ物は指輪だった。
そのお客さんはクリスマスにプロポーズをするつもりらしい。
ふうちゃんに代わり、お客さんの行方を探すハルさんだが・・・

「第五話 人形の家」
北海道の大学へ進学したふうちゃんは家を出て寮暮らしに。
1年ぶりに里帰りした娘を迎えたハルさんに入った知らせは、
彼の製作した人形を購入してくれた三輪坂夫人からのもの。
家にあった人形がいつの間にか、そっくりの別の人形に
置き換わっていたのだという・・・

人は良いが、いささか頼りないところがあるハルさんに比べ、
ふうちゃんはしっかり者に育っていく。

決して恵まれた家庭環境ではないけれど、
ふうちゃんはグレたりせずにまっすぐ育ってくれて、
もうそれで十分に親孝行なお嬢さんだろう。

本書の探偵役はハルさんでもふうちゃんでもなく、瑠璃子さん。
事件の謎に混迷するハルさんの心の中に、ふっと現れて
ふんわりと真相を解き明かしてくれる、という展開。
べつに幽霊とかのオカルトな雰囲気ではなく、
ハルさんの心の中にはいつも瑠璃子さんはいる、ということなのだろう。

 あえて言うなら、ハルさんが無意識のうちに推理をしていて、
 それが瑠璃子さんの ”語り” として現れてくる、ってことなのだろうが
 そこまで理屈づけるのは野暮というものだね。

ミステリとしてはちょっと薄味かな、とも思う。
「第一話」~「第三話」は父と娘のホームドラマ、って感じだし
「第四話」は聖夜を盛り上げようとする人たちの ”ちょっといい話”、
といったところ。

そんな中、実はいちばん驚かされたのは巻末の「文庫版あとがき」。

作中、ハルさんはある意味理想的な父親として描かれる。
故人となった妻を愛し続け、ひたすら娘の無事な成長を願う。
しかし、このあとがきで明かされるのは作者の育った家庭の話。
そこには、およそハルさんとは真逆の姿の父親が。

この作品を書く上では、いろいろ複雑な思いがあっただろう。

作品中で描かれるハルさんが ”いい人” 過ぎて、
読んでいる最中にいろいろ考えてしまった。

こんなにいい人なら再婚話のひとつやふたつはあっただろうなぁ、とか
でも瑠璃子さんを思って断ってきたのだろうなぁ、とか
ふうちゃんのためにあえて再婚しないことにしたのかなぁ、とか。

ハルさんだって木石ではないのだから
心が動いた人もいたんじゃないかなぁ、とか
女性の方から思いを寄せられたこともあったんじゃないかなぁ、とか。

このあたりは、本編中ではまったく語られていない。
というか、あえて欠落させているのだろう。
父と娘の物語に純化させるのならそれが正解なのだろうけど、
本編ラストで、ふうちゃんを嫁がせたときのハルさんはまだ48歳。

人生100年時代。まだまだ老け込むトシではないし、
孫の顔を見るのだけが楽しみとかではちょっと淋しいよねぇ。

続編は無理かも知れないけど、短篇でも良いから、
本編後のハルさんの ”第二の人生” の物語を読みたいなあと思った。


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