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凍れる女神の秘密 本格短編ベスト・セレクション [読書・ミステリ]

凍れる女神の秘密 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

凍れる女神の秘密 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/01/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本格ミステリの短編アンソロジーの2010年度版。
創作・評論あわせて8編収録なんだけど
3編が既読だった。

「三人の女神の問題」(法月綸太郎)
 ミステリ作家・法月綸太郎を探偵役とするシリーズの一編。
 三人組アイドルグループ・トライスターが解散して十年あまり。
 彼女らの所属していた事務所の元社長・折野が殺され、
 ファンクラブの会長・安田が自殺死体で発見される。
 安田は自らのブログで折野の殺害をほのめかしていたが
 綸太郎は、トライスターの中に、
 安田に殺人をそそのかした人物がいると推測する。
 短編集で既読だが、安田と元アイドル三人との
 メールのやりとりから犯人を絞り込んでいく推理は
 やっぱり良く出来ている。

「札幌ジンギスカンの謎」(山田正紀)
 往年の名探偵・進藤正子に助手として雇われた風水火那子。
 自動車で向かったジンギスカン料理店で大雪に閉じ込められ、
 そこのオーナー・名倉が殺される。
 この現代の事件と並行して、進藤の若き日の事件が語られる。
 現代の事件の方はともかく、昔の事件のラストはバカミスみたいだ。

「佳也子の屋根に雪ふりつむ」(大山誠一郎)
 父親の過去を暴かれ、結婚が破談になった笹野佳也子は
 睡眠薬を飲んで自殺を図るが、香坂典子と名乗る女医に救われる。
 しかしその直後に典子が殺される。
 二人は典子の経営する医院の中におり、
 折からの雪で周囲は閉ざされていた。
 足跡は被害者のものしかなく、佳也子に殺人の容疑がかかる。
 密室事件が起こるとどこからともなく現れる "密室蒐集家" を
 探偵役とするシリーズの一編。
 作者の仕込みは、冒頭の数ページからもう始まっている。
 そして、もうパターンは出尽くしたかと思われた "雪上の足跡" に、
 「こういう手があったか!」と思わせる解決が提示される。流石。

「我が家の序列」(黒田研二)
 リストラに遭ったことを家族に打ち明けられない主人公・俊輔は
 自殺しようとした寸前、一匹の犬に助けられる。
 犬は "ボンド" と名付けられ、俊輔の家で飼われることになるが
 ボンドの存在が俊輔を、そしてバラバラだった家族を変えていく・・・
 うーん、とても感動的ないい話。1時間の単発ホームドラマにピッタリ。
 でも、あえていえば日常の謎系なんだろうけど、
 本格ミステリかどうかはちょっと疑問に思うなあ。

「《せうえうか》の秘密」(乾くるみ)
 長い伝統を誇る北乃杜高校。
 そこには戦前から伝わる《逍遥歌》があった。
 しかし、数十年前の《逍遥歌》は、現在のものと
 一部の歌詞が変えられているという。
 清水克文・赤倉志朗・山科桃子・稲川みどりの四人組は
 歌詞変更の経緯を調べ始める・・・
 《逍遥歌》の歌詞が暗号文になっているのは早々と見当がつくが、
 その内容には二重三重に深い意味が込められていて
 解読して終わり、って単純な話ではない。
 思い返してみると、真っ向から暗号を扱ったミステリって
 近年ありそうでなかった。そういう意味では貴重な作品だと思う。

「凍れるルーシー」(梓崎優)
 短編集で既読。
 7カ国語を操るという語学の達人でもある雑誌記者・斉木が、
 世界の至る所を旅しながら事件に遭遇していくシリーズの一編。
 霧深いロシアを舞台に、 "不朽体" (腐敗しない死体)を
 安置している修道院を訪れた斉木。
 その夜、密やかにある "事件" が起こっていた・・・
 事件そのものは解決するけれど、ラストシーンは
 犯人の妄想のようにも、ホラーのようにも読める。

「イタリア国旗の食卓」(谷原秋桜子)
 探偵役の少年・修矢がワトソン役兼ヒロイン・美波とともに
 事件を解決していくシリーズの一編。これも既読だったなあ。
 ちなみに修矢が美波と出会う前の話なのでヒロインの出番はナシ。
 修矢が招かれた食事会で、客の一人が倒れる。
 そば粉を使用した料理を給仕され、
 アナフィラキシーショックを起こしたのだ。
 しかし、その場には他にもそばアレルギーを持つ者がいたのに、
 症状が出たのは一人しかいなかった。
 何者かが、何らかの方法を用いて、
 意図的にそば粉の料理を目的の客に食べさせたのだが・・・
 いわゆる "毒殺もの" のひとつだろう。
 ラストで明かされる "方法" は、非常にシンプル。
 それゆえに成功する可能性はあまり高くないかも知れないが、
 うまくいった場合はかえって発覚しにくいようにも思う。

「泡坂ミステリ考-亜愛一郎シリーズを中心に」(横井司)
 すみません、読んでる途中で寝てしまいましたm(_ _)m。
 評論文って苦手なんです・・・


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