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BORDER 善と悪の境界 [読書・ミステリ]

BORDER 善と悪の境界 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

BORDER 善と悪の境界 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

2009年に発表された短編ミステリから選ばれた "傑作選"。
その後半分。

「随監」(安東能明)
 随監とは "随時監査" の略だそうで、
 要するに抜き打ちで入る監査のこと。
 主人公・柴崎が勤務する綾瀬署に随監が入り、
 管内の交番に出された傷害の被害届が放置されていることが
 発覚し、柴崎はその事情を探り始める。
 第63回日本推理作家協会賞短編部門受賞作とのことだが
 私は好きになれないなあ。
 広松という刑事の行動が受け入れられるかどうかが
 この作品の評価を決めると思うんだけど、私は受容できないなあ。
 確かに世の中、理屈だけじゃあ回らないけどね・・・

「夏の光」(道尾秀介)
 小学4年生の利一たちがかわいがっていた犬が姿を消す。
 仲間の一人・宏樹は、同級生の清孝が殺したと主張するが・・・
 利一を主人公とした連作の一編とのこと。
 "証拠" となる写真が撮られた "状況" なんだが、
 そんなにうまく映るものかなぁ、との疑問も湧く。
 でもまあ、この子らの話をもっと読みたくなった。

「雨が降る頃」(結城充孝)
 4WD車とFR車、2台の自動車が衝突、炎上する。
 駆けつけた交通機動隊のツジは、4WD車が加害車両と判断するが
 女性警官・クロハはそれに異を唱える。
 理路整然と証拠の解釈を組み上げ、意外な真相を引き出してみせる
 クロハがとてもカッコよくて魅力的だなあ・・・って思ってたら、
 彼女を主役とする連作の一編だった。
 クロハはこの後、機動捜査隊に異動になってさらに活躍するらしい。
 このシリーズ、読んでみたくなったよ。

「ドロッピング・ゲーム」(石持浅海)
 資本主義ではあるが、一党独裁の全体主義国家となった、
 パラレルワールドの日本を舞台にした連作の一編。
 連作短編集「この国。」に収められていて、既読だった。
 この国では、小学6年生の卒業時点で進学先を振り分けられ、
 その後の人生が決定してしまう。
 クラスでトップの成績を誇る2人の生徒、啓介と翔一。
 啓介は最優秀のエリート校へ進学が決まったが、
 翔一はそれより一段下の学校へ進むことになる。
 一時は落ち込んだ翔一だったが、次第に明るさを取り戻し、
 啓介とともに卒業式の準備に取りかかっていた。
 しかし準備の最中に校舎の屋上から投身自殺を遂げてしまう。
 この世界だからこそ起こる事件、
 "世界のありよう" が作り出すミステリである。

「波形の声」(長岡弘樹)
 臨時採用の小学校教員・谷村梢は、来週には任期が終わり
 学校を去ることになっていた。
 そんな中、クラス内でいじめに遭っていた生徒・文吾が
 自宅で襲われ、意識不明の重傷を負うという事件が起こる。
 文吾が自宅内で「たにむらせんせい」と話す声を聞いた、
 という近隣住民の証言から、梢は容疑者となってしまう・・・
 タイトルにも関わる、ある "仕掛け" が本作のキモなんだけど
 正直言って「そんなにうまくいくかなあ」と思わないでもない。
 でも、それ以外の部分はミステリとしてとても良く出来ている。

「老友」(曽根圭介)
 過疎の村で診療所を営む老医師・道夫。
 道夫の幼い頃からの友人・源治には、良太という息子がいるのだが、
 箸にも棒にもかからない道楽息子で、
 しょっちゅう問題を起こしては道夫に庇ってもらっていた。
 そんな良太に強盗強姦事件の容疑がかかるが・・・
 意表を突くラストで驚かされる。
 この結末が予想できる人はかなり少ないだろう。
 ただ、後味はあまり(というか、かなり)良くない。

「眼の池」(鳥飼否宇)
 バーで飲んでいた写真家・猫田夏海とその先輩・鳶山久志。
 一緒にいた客が「私の兄は河童にさらわれた」と言いだし、
 かつて出会った怪奇な出来事について語り出す。
 鳶山を探偵役とするシリーズの一編。
 不思議な現象を合理的に解明していくくだりは良く出来ている。
 ちなみに "眼" の正体は私にも分かったよ。
 当てずっぽうだったけど。

「師匠」(永瀬隼介)
 暴力団担当の刑事・津川は、
 配属された新人刑事・大木にうんざりしていた。
 体重120kgにして、すぐに休みたがる問題児だったのだ。
 そんな津川に、別れた妻から連絡が入る。
 息子の隆平の様子がおかしい、と。
 ミステリと言うよりはコメディタッチの人情話かなあ。


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