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うさぎ幻化行 [読書・ミステリ]

うさぎ幻化行 (創元推理文庫)

うさぎ幻化行 (創元推理文庫)

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/04/21
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

美月リツ子は、父親の再婚によって最上圭一と義兄妹となった。
圭一はリツ子のことを「うさぎ」という愛称で呼び、
とてもよく可愛がってくれた。
リツ子は大学卒業後、就職を機に家を出て一人暮らしを始めたが
圭一は乗っていた航空機の事故で亡くなってしまう。
その2ヶ月後、圭一の同業者・澤木から連絡が入る。
圭一の遺品として譲り受けた音響機器の中に、
意味不明な音源データがあること、
そしてそのデータフォルダの名が「うさぎ」であること。
リツ子は圭一の足跡を追って、音源の収録場所を巡る旅に出る。


「第一話」~「第九話」と名付けられた章で構成されていて
音源にまつわる謎を解く一話完結形式のミステリ風になってるけど
(もちろん全体を貫く伏線も張ってあるが)
終盤は連続したストーリーを追っていく。

圭一を巡る謎は最終話で明らかになるのだけど、これはかなり驚く。
思い返してみれば、もう冒頭から伏線が
張りまくりだったことも分かって、さらにビックリ。
この真相はまず見抜ける人はいないだろう。

ただ、終盤のリツ子の行動がいまひとつ理解できないように思う。
そのことも相まって、この幕切れも正直言って後味が良くない。
これじゃあリツ子が救われないよなあ・・・
評価が低いのもそれが理由。

西上心太氏の解説によると、本書は、生前の北森鴻が
自ら校正した最後の本にあたるらしい。
かなりの体調不良の下での作業だったので、
終盤の書き込みも不十分だったのだろう、と西上氏は推測している。
私もそれには全面的に同意する。

心ゆくまで加筆された完全版を読みたかったと思うのだけど
それはもう叶わぬことなんだよねぇ・・・


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