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Logic 真相への回廊 [読書・ミステリ]

Logic 真相への回廊~ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Logic 真相への回廊~ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 平装-文库



評価:★★★

2009年に発表された短編ミステリから選ばれた "傑作選"。
今回は、私の好みに合う作品が少なめ。


「休日」(薬丸岳)
 14歳になる息子・隆太の様子が最近おかしい。
 夜遅くまで不良少年と過ごし、小遣いまでもらっているらしい。
 心配になった父親・吉沢は旧友で刑事の夏目に相談するが・・・
 親子の絆を結び直す、ってテーマはドラマとして有りだと思うけど
 ミステリ濃度は希薄。サスペンスも今ひとつの感じ。

「未来の花」(横山秀夫)
 働き盛りの証券マンが自宅で刺殺される。
 容疑者として妻が浮かんでくるが、
 検視補助官の今村は、入院中の鑑識官・倉石に助言を求める。
 倉石が「これが真相」と切り出す根拠がちょっと弱くないかなあ。
 それに "だめ押し" で繰り出す証拠は、
 読者にはちょっと手が届かない処にあると思うし。

「レッド・シグナル」(遠藤武文)
 失業中の主人公・佐久間の眼前で、交通事故が起こった。
 赤信号にもかかわらず交差点にスクーターが突っ込み、
 乗用車と衝突したのだ。しかし、なぜか乗用車の運転手は
 自分が信号無視をしたと言い出す・・・
 何と何がどうなっているのかよく分からないんだけど
 終わってみれば意外なところがつながりあっていて
 それはそれなりに良く出来ているのはわかるんだけど。

「ノビ師」(黒崎視音)
 連続強姦魔が逮捕されるが、証拠となる写真を収めたSDカードが
 犯人の家から何者かに盗まれていた・・・
 心理捜査官・吉村爽子(さわこ)の活躍するシリーズの一編。
 ヒロインは魅力的だけどミステリと言うよりは親子の情愛話かな。

「九のつく歳」(西澤保彦)
 ヒロイン・安河内ミロは、近々マンションから引っ越す予定。
 しかし近所の独居老人が殺害され、そこから意外な事実が明らかに。
 うーん、この手の話は苦手でかつ好きではありません。

「ミスファイア」(伊岡瞬)
 小学校の音楽教師・森島を主人公とするシリーズの一編。
 彼が臨時講師を務める学校の6年生のクラス担任に対し、
 執拗にクレームをつけるモンスターペアレントたち。
 しかしそのモンスターたちの家が次々に放火される。
 容疑は、6年生の担任教師にかかるが・・・
 子供らの描写も達者だし、森島のキャラも好きだ。
 本書では2番目に気に入った作品。

「星風よ、淀みに吹け」(小川一水)
 将来、月面基地に長期間人間が滞在することを念頭に建設された
 完全密閉された訓練施設。この中で5人が8ヶ月を過ごす。
 しかし訓練が終了する直前、メンバーの一人が殺害される。
 設定はSF的ながらSFミステリではなく、でも書いたのはSF作家。
 特異な閉鎖空間の特性を利用したトリックに「その手があったか!」
 作者はプロパーなミステリ作家ではないけど、
 本書中いちばん "ミステリ" を感じた作品。

「生き証人」(末浦弘海)
 海原麗子は、夫・剛造以外の男性と関係し、娘・留美をもうけるが、
 剛造が留美を自分の娘と信じたまま亡くなった8年後、
 剛造の愛人と称する女・恵理子が "隠し子"・詩織をつれて現れ、
 遺産の分割を要求するが・・・
 麗子と恵理子が繰り広げる、相手の真意や思惑を探っての
 あたかもチェスをしているような読み合いが凄まじい。
 いやあ女は恐い。

「この雨が上がる頃」(大門剛明)
 ヒロイン・沙織が帰宅の途中立ち寄ったレンタルビデオ店。
 しかし突然二人組の男が乱入し、店員を人質に立てこもってしまう。
 彼らが要求したのは、ある事件の真犯人に
 "自首" を要求するものだった・・・
 ラストでの意外な展開が鮮やかに決まるサスペンス。
 ストーリーとしては綺麗にまとまってるけど
 今ひとつ私は好きになれないです。ごめんなさい。


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